南雲麗

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南雲麗

カクヨムメインで活動する小説家。アイコンは #canva にて作成。 詳しく:https://note.mu/nagumo/n/n044dca2a87c1?current_menu_id=1360 連絡先:nagumorei1986@gmail.com

マガジン

  • ガノン・ザ・ギガンテス

    強大なるガノン。南方蛮人の生まれでありながら戦神の寵愛を受け、戦士として、指揮官として、そして王として名を馳せた男。本作は一介の戦士から一廉の王に至るまで。彼の往く道を綴った物語。 ※異世界ファンタジー ※不定期更新 ※エピソードは順不同です ※じっくり書き進める予定です。カクヨムで清書版を連載しています。  https://kakuyomu.jp/works/16817330655392121464

  • 抜天戦侠歌

  • 日刊南雲

    毎日投稿される思考の記録。

  • 蛮迦羅〜俺は怪人を屠る修羅となる〜

    蛮迦羅――それは怪人を屠る修羅道の者。 怪人――それは悪意の者によって造られし生体兵器。 蛮迦羅――番長五郎(つがい・ちょうごろう)は、祖父の敵を討つために修羅となった。 近未来SF風味架空変身ヒーロー戦記。

  • バンデラス・デ・サザンクラウド先生

    寄稿品

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蛮人と女戦士 #1

 ヴァレチモア大陸の中央部には、国境をも知れぬ荒野が広がっている。街道はなく、わずかな草と山々、そして荒涼たる風と獰猛たる野獣どもが荒野に彩りを添えていた。  そんな殺風景の中に、二人の人間がいた。一人は砂塵に叩かれつつも、豪壮な装備に身を包んでいた。豪奢な兜の下には、陽光に照らされた栗色の長い髪。壮健なる鎧の胸元には、胸を納めるためのわずかな隆起。有り体に言えば、女であった。 「貴様は、何故に鎧を付けぬのだ」  吹き付ける風を長い薙刀で防御しながら、女が問うた。重く、厳

    • 蒼き槍兵紅き蛮人 #6(終)

      <#1> <#2> <#3> <#4> <#5> 「さあどうする。手がないのであれば、おれが殺してすべてが終わるぞ」  ホジャの声が、ガノンの耳を叩く。ガノンはサザンに視線を飛ばした。もはや、こういった策でしか届くまい。確信めいた、思惑があった。 「まだだ」  ガノンの声を合図に、二人はホジャの前面へと立った。直線上に、ホジャ、サザン、ガノンの順で並ぶ形である。構えを取られてホジャは、それでも笑みを浮かべていた。 「なるほど。二人で掛かって来るか。面白い」 「ぬかせ

      • 蒼き槍兵紅き蛮人 #5

        <#1> <#2> <#3> <#4> 「ええい、旅慣れぬ娘一人を攫うのに、幾つの賊どもを消費しているのだ」  荒野でも一等人気少なき場所。そこに、人知れず天幕が立てられていた。中には男が数人。その内、一番上座に座る男は、頭を抱えていた。 「無策で襲撃した賊が一つ。その賊に死物狂いで襲われ、撤退した賊が一つ。夜襲を掛けて罠に嵌った賊が一つです」 「そういうことを言っているのではない! ……いや、間違ってはない。間違ってはいないが」  上座の男の言葉を、質問と受け取った

        • 蒼き槍兵紅き蛮人 #4

          <#1> <#2> <#3> 「それで、連中を生かしてやった、というわけか」 「そうだ」  再び三人に戻った旅路はしかし、強力な援護を手に入れていた。ガノンが襲撃者より奪った、馬である。一頭でしか無いが、この一頭が大きい。姫君の足として、絶大な効果が期待できるからだ。いかに彼女が徒歩に慣れているとは言っても、疲労ばかりは隠せるものではない。剛健を誇る男二人に比するには、このくらいの足しが必要であった。 「上手くいくか行かないかで言うなら、賭けの部類がデケエな。だが、やら

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        蛮人と女戦士 #1

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        • ガノン・ザ・ギガンテス
          77本
        • 抜天戦侠歌
          1本
        • 日刊南雲
          460本
        • 蛮迦羅〜俺は怪人を屠る修羅となる〜
          2本
        • バンデラス・デ・サザンクラウド先生
          5本

        記事

          蒼き槍兵紅き蛮人 #3

          <#1> <#2>  三人の旅路は、殊の外順調に進んでいた。幸いだったのは、姫君が旅慣れ、歩き慣れしていたことである。 「正直驚いたぜ。お嬢がここまで付いて来れるとはな」 「これでも幼い頃は野山を駆け巡っておりましたし、今も少しずつではありますが、運動は欠かしておりませんので」  二日目の夜。驚きを示すサザンに、姫君は笑う。焚き火に照らされたその顔はなるほど、横槍が入っても致し方なきような美貌であった。そんな彼女の口の端には、干し肉がぶら下がっていた。それを見て、ガノン

          蒼き槍兵紅き蛮人 #3

          蒼き槍兵紅き蛮人 #2

          <#1>  翌朝。荒野を奇妙な一党が歩いていた。 「さて。やるとは決めたが、どうなるこったね」  一人は青髪も鮮やかな朱槍の戦士、サザン。 「やると決めたからには、やるしかなかろう。昨日の敵が今日の同行。それもまた、傭兵の日々だろう」  もう一人は、赤髪の蛮人。戦神の加護もあらたかな男、ガノン。 「わたくしのために、申し訳ありません……」  そして今一人は、荒野に一等不似合いな存在だった。地味な装束に身を包み、砂塵に痛め付けられぬよう頭巾で髪を覆いながらも。その

          蒼き槍兵紅き蛮人 #2

          蒼き槍兵紅き蛮人 #1

           強大なるガノン。戦神の寵愛を受け、戦士として、指揮官として勇名を記した。そして南方蛮人の生まれでありながら、中原の王として時代に名を馳せるまでに至る。  彼の築いた王国は、ほぼ一代のみの国でありながら壮健を誇り、黒河から白江に至るまでのあらゆる民を尽く、その威光によってひれ伏させた。  しかしながら彼の道は、決して平坦なものではなかった。幾多の挫折、敗北。出会いと別れ。そういったものが、彼の人生を彩り、更なる魅力を与えている。  これは、それらの中でも、彼の人生に一等影を落

          蒼き槍兵紅き蛮人 #1

          敗将と蛮人 #3(終)

          <#1> <#2>  それから先は、端的に言って凄惨を極めた。冥界の内、罪人が至るという【罰獄】を思わせるような有様だったと、言い添えておく。 「容赦は要らんぞ、斬り捨てろ」  パラウスの追撃を諦めたガノンが、賊どもを切り払いつつこちらへ向かう。よく見れば、その身体はほのかに輝いていた。その姿に、私は直感する。彼は、なんらかの神――伝え聞く南方蛮族の風習からすれば、戦神であろうか――の【使徒】なのだ。それならば、先に言っていた【闇】に対する戦績にも合点がいく。【闇】は人

          敗将と蛮人 #3(終)

          敗将と蛮人 #2

          <#1>  我々の足は、一路野盗どものねぐらへと向かっていた。報酬の問題など、決めねばならぬことはいくらかあった。しかしそれらも、辺境伯の元へ帰り着かねば話にならない。野盗どもが宝物でも貯め込んでいれば話は変わるかもしれない。ともあれ蛮人は、先送りを了承してくれた。 「蛮人……否、ラーカンツのガノンと言ったか」 「そうだ。文明人の連中は常におれたちを蛮人と一括りにする。おれたちはラーカンツだ。覚えておけ」  口を開いた私に対し、蛮人は傲岸な態度を崩さない。配下が傍らで表

          敗将と蛮人 #2

          敗将と蛮人 #1

           いかに豪壮な軍勢とて、敗れてしまえば皆、暗澹たるものだ。故に将たるものは、勝利に対して手を尽くし、策を尽くさねばならぬ。いかなる軍学書にも書かれている、あまりにも基本的な事項だ。しかしながら、私はそれを怠った。少々調子に乗った野盗どもの征伐であると、高を括ってしまった。その結末が、現状だ。辺境伯から預けられた七百の虎翼軍は散り散りになり、私は配下と二人、ほうほうのていで荒野をさまよい歩いている。逃げるさなかで、馬も失った。とてもではないが、辺境伯には顔向けできない状況だ。

          敗将と蛮人 #1

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #9(エピローグ)

          <#1> <#2> <#3> <#4> <#5> <#6> <#7> <#8>  草原に冬枯れが訪れ、冷たい風が吹き付けるその日。ガノンは氏族の者どもの見送りを受けていた。大祭の折には伸ばしていた髭を剃り落とし、火吹き山の如くうねる赤髪は首の下辺りで切り揃えられていた。これから始まる長い旅を思えば、身支度としては妥当なものである。ラーカンツ戦士の掟に則って上半身は寒風さえも構わずに晒し、下半身には下穿きと靴のみ。いずれも豪壮なものではなく、少々履き潰しても丈夫な程度のものだ

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #9(エピローグ)

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #8

          <#1> <#2> <#3> <#4> <#5> <#6> <#7>  天を衝く男からの落雷が、ほのかに輝く男を襲う。それは常であれば、生命を奪う一撃となり得るはずだった。しかし。 「やはり」  アマリンガは、いとも冷静に受け止めた。彼の一撃は、ほのかな輝きによっていとも容易くかわされてしまった。その速度たるや、これまでのガノンとは比にならなかった。ただでさえ相応に疾かった動きが、さらに鋭さを増していた。これは。ああ、これは。 「それでも!」  アマリンガは間合いを

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #8

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #7

          <#1> <#2> <#3> <#4> <#5> <#6> 「おおおっ!?」 「ガノン!?」 「耐えろ!」  開戦からまだしばしも経たぬ内に痛打が入った事実。それはガラナダ氏族の者どもを大いに動揺させ。 「決まったか!」 「勝ったぞ!」 「鐘を鳴らせ!」 「いや、まだだ!」  ペルーザ氏族の者どもに勝利を確信させた。しかし。だが、しかし! 「ぐうううっ!」  すり鉢の底から、野太い声が響く。獣が唸るが如き、蛮声が聞こえる。ペルーザの者どもは気付く。これは氏族の誇る

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #7

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #6

          <#1> <#2> <#3> <#4> <#5>  翌朝! 聖地は天を圧するほどの大音声に包まれていた! 天幕と群衆に囲まれた草原の只中に、結界めいて誰一人入らぬすり鉢状の穴が存在する。しかしその穴はよくよく見れば人工物だ。さして深くない――成人戦士三人分の背丈くらいか――底には、成人戦士三十人が両手を広げてなお余りあるほどの広さの平地があった。無論、そこに至るまでの道も設置されている。これこそが、幾星霜にも渡ってテ・カガンの氏族が整備を続ける、戦神奉納勝負の場であった。

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #6

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #5

          <#1> <#2> <#3> <#4>  ガノンは、どう返事をすれば良いのかわからなかった。いともあっさりと名を明らかにした大敵に対して、あまりにも失礼。されど、己が名を明かすことが、恐ろしかった。己がガラナダの代表戦士、明日の相手と知れれば、見くびられる恐れがあった。調べられる恐れがあった。しかし。 「ガラナダ氏族のガノン。明日の代表戦士でもある」  最後には彼は己を説き伏せ、名乗りを上げた。そうしなければ、さらに負ける恐れがあった。ついでに言えば、ガノン自身が自分に

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #5

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #4

          <#1> <#2> <#3>  かくして、時は来た。彼らの栽培する数少ない作物の収穫が終わると、十四の氏族は数日を掛けて聖地に集う。その地にて三日三晩、昼は奉納勝負、夜は楽器を打ち鳴らし踊りに浸る大祭が開かれるのだ。 「……ガノン」 「大丈夫だ。おれは打ち勝つ」  聖地へと馳せ参ずる移動の当日、ガノンは姉貴分の訪問を受けていた。陽に良く灼けた身体は湯浴みによって輝ける程に磨かれ、普段は伸ばし放題の赤髪も後ろで一つに括られている。鼻下と顎には常には伸ばさぬ髭が蓄えられ、わ

          ガノン・ジ・オリジン(ピース・ワン) #4