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寺散歩 鳥 苔 ヌートリア お地蔵さん 日曜日

久しぶりによく晴れた暖かい日曜日、近くのお寺に散歩しに行った。

他人様のお墓をテクテク横切り、小さなお池に鯉が泳ぐのを眺め、お地蔵さんが2体並ぶ祠にこんもり茂った苔に見惚れ、お坊さんの読むお経に耳を傾け、ふわっと漂う白檀の香りを嗅いだ。

うちからそんなに離れていない場所に、こんな異世界があるということは今みたいな状況になっていなければ知らなかっただろう。

大きな門をくぐって、どこに行くとも知れない石の階段をトスットスッと降りて行ったら大きな池のある公園に着いた。

池にはたくさんの鴨がいて、その上には鷹か鷲か何か大きな鳥がスイースイーと旋回しながら飛んでいた。
大きな鳥は池の中の一点に集中すると肩の力を抜くように羽根の動きを止めて一気に下降し水面ギリギリで頭を上げ足で何かを掴んでまた空高く飛翔した。

欲しかった獲物じゃなかったのか、大きな鳥の足がパッと開いて

  ピュ
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\ポチャン/

ナニカが水面を割って小さな飛沫が飛んだ。

その後も大きな鳥はスイースイーと旋回、水面にパシャンと足をつけ、また飛翔。スイースイーと旋回...を繰り返す。
休まず続ける姿を見て「タフだなぁ。」とぽかぽか陽気にお散歩中の呑気な人間は思った。


ふわっと生えた緑の苔、小さな花みたいな雑草。木の上の方から生えたツブツブがついた葉っぱ、剥がれかけた樹皮。
どれも家の中にはない物ばかりで刺激的。感受性を大解放して楽しんだ。


再び池の中に目をやると毛の生えた動物が動いている。
ああ、あれが噂のヌートリアか。
ペットショップで見たら、かわいい〜と言ってしまうと思う容姿の大きなグレーのネズミは、
「私ずっとここに住んでるんですよ。」
と言わんばかりに我が物顔で錦鯉の近くを泳いでいた。

「タフだなぁ。」呑気な人間はまたそう思った。


大きな池をのんびりぐるりと一周して、背の高い木々の間をズッシリと上に伸びるゴツゴツの石の階段を登って、またお寺に戻る。

その途中、不思議な空間を見た。
石の階段の脇の少し開けた場所に2体のお地蔵さんが並んでいた。その隣の木の枝が、お地蔵さんの頭上で弧を描くようにきれいに伸びていた。
そしてお地蔵さんの後ろには、朽ちてスカスカになった古い木の上にまたがるように、細くてまだ若い木がスクスクと育っていた。
木陰と差し込む陽の光の演出もあいまってそこの空間がなんだか神秘的に見え、しばらく足を止めて見惚れた。


ほんの1時間ほどのお散歩だったけど、普段では絶対に味わえない神秘的な気持ちと、生き物の姿と生き生きとした緑にたくさん栄養をいただいたような気持ちになって大満足。帰り道少し眠くなった。

良い日曜日だった。

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