見出し画像

観音チャレンジに気づいてもらえることの尊さ

夕方いつものように自転車で娘を幼稚園に迎えに行った帰りにスーパーへ寄り、買い物を済ませてさぁ家に帰ってこれから晩ごはん食べようというタイミングで、娘(当時3歳9ヶ月)との戦いが始まりました。

どうしても自転車に乗りたくない、という娘。

もう今すぐ自転車に乗って帰りたい、という私。

子と一緒に行動していると、自分の思い通りには物事が進まないことが常ですよね。親の立場で、こういう子の要求と何とか折り合いをつけながらいい感じでくぐり抜ける類の行為って、何と呼ぶんでしょう?

(やることたくさんあるのに)「今はどうーーーーーーーーーーーーーーーしてもここから動きたくない」

とか、

(ちょうど牛乳切らしてるのに)「絶対絶対絶対に牛乳を飲みたい牛乳じゃないと嫌だ牛乳牛乳牛乳いつも牛乳飲みたいぎゅーーーーーーーーーーーーにゅーーーーーーー」

とか、

(もう今すぐ家を出発しないと幼稚園間に合わないのに)「今から折り紙で絵本を作ってお話を書いて絵も書きたい今やりたい今やりたい今いまいまいま今いまやりたい」

とか。

こういう事象、決してウチの娘だけではないはず。きっと子育てあるあるですよね。

ちなみに私はこの事象を勝手に「観音チャレンジ」と名付けています。

こちらも親としてやらなくちゃいけないことが目白押しの中で応酬合戦をしているとだんだんイライラしてくるけれど、そのイライラをぐっと抑えて観音様のような穏やかな表情をキープして子の気持ちに向き合って諭してみたり気を紛らわせたりニコニコしながら話を聞いてみたりする、それが観音チャレンジ。

観音様のように穏やかでいられるのか、はたまた自分のイライラが勝って鬼の形相で強行突破してしまうのか、いつも究極の2択です。

自分に余裕があれば観音様にもなるけど、そうじゃないときもたくさんあるし、なんなら表面上は観音様になっているときだって結局内面はイライラと戦っていたりして。

その夕方に起きた「自転車に乗りたくない vs 早く乗ろうよ」の戦いも、私にとってはまさに観音チャレンジ。

その日はたまたまもう晩ごはん作りが終わっていて私の中にも気持ちの余裕があったので、割といい感じに観音様になれている日でした。

私:「早く自転車に乗ろうよー」

娘:「いーーやだよ〜〜 あ、見て!鳥さんが歩いてる」

私:「ね、ヘルメットかぶろう?」

娘:「(母の発言は無視)ねーねー、この石持って帰ってもいい?ポケットに入れておくね!」

こんな調子で、お店の前で駐輪したまま5分10分と続く応酬合戦。

楽しい雰囲気で娘を諭していたけれど気づけばもう15分近くそこにいるし、11月の夕方は寒いし、完全に暗くなってしまったし、もういい加減帰りたいと私の観音度が急降下しギリギリ観音になっていた、そんなタイミングで。

急に通りすがりの女性に話しかけられました。

「すごいですね」と。

「私は子どもにすぐ怒ってたなー、って今、見ながら反省してました。うちの子はもう7歳だけど、これくらい小さかった時に、自分はとてもそんな反応できなかったなって思いました」って。

いえいえいえいえいえいえー、私もギリギリなんです。今日はたまたまちょっと余裕があるからこんな感じですけれど、でも嬉しいですありがとうございます、と返しました。

この女性に話しかけられたこと、2つの意味ですごく嬉しくて、そして勇気づけられました。

1つは、自分ががんばって観音チャレンジしていることを気づいてくれて認めてもらえて、しかもわざわざ声をかけてくれたこと。こんなに嬉しいことなんですね。尊いです。

この日はたまたま余裕があったから観音チャレンジに成功していたけれど、それでもギリギリだったしいつもはイライラ鬼になってしまうこともよくあるから。

子との応酬合戦に忍耐力が必要なことがわかっている上で、「あなたそれできてるね、すごいね」って面と向かって言ってもらえたことにものすごく感謝しました。

もう1つは、その話しかけてくれたアジア系の見た目の女性が、たぶん外国人だったこと。本人に聞いたわけではないから何年日本にいるのかとか、はたまた子どもの頃から住んでいるかもしれないし、どんな背景かは全然わからないのだけれど。日本語のイントネーション的にたぶん日本語母語話者ではありませんでした。

もし日本語が彼女の母語でないとしたら、それでも通りすがりの赤の他人に「すごいですね」って話しかけられる勇気が、すごいことだなぁと実感しました。

私にできるかしらと逆の立場で想像してみると、その難しさを実感します。

数年後に我が子がもう少し大きくなった時に、私がもしデンマークで観音チャレンジをしているデンマーク人親子を見たら、デンマーク語で「すごいですね」って言えるのだろうか、って。

少なくても今の私にはできる気がしない。今の自分には色んな意味で難しさを感じます。

でも、きっとみんな子育て中にもれなく観音チャレンジがんばってる。

だから目の前で観音チャレンジしている人がいたら、日本語でも何語でもいいから「すごいですね!」って言えるような人を目指して歳を重ねていきたいなぁと、ひとつ人生の目標が増えました。

内向的な私は急に他人に話しかけるのはだいぶ勇気がいるので、この春外に出る機会が少しずつ増えたら、まずは観音チャレンジしている人を気にかけることからはじめようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?