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カラカラと鳴るランドセルと呪術廻戦

数年前、中学生の鞄が重たすぎる問題が表面化して、学校に教科書を置いて帰る『置き勉』が許されるようになった。その波がどうやら小学生にも流れてきたらしく、2学期半ばから三男が置き勉をするようになった。

「何にもないやん」

カラカラと鳴るランドセルの中身は給食セットと体温記入表のみ。教科書どころか、筆箱も連絡帳も入っていない。

「宿題は学校でやってきたから!」

得意そうにVサインをする三男に、「そういうことやない」と眉を顰める。

「カラカラすぎるやろ」

「だって置いてきていいんだよ」

「だからって、これだけはないわ」

三男は現在小学3年生。
もともと副教科の教科書は先生が預かってくれるクラスなので、日々持ち帰る荷物はそれほど多くない。

「筆箱は?連絡帳は??」

「大丈夫だ、問題ない」

こっちは不安しかない。

毎日大量の教科書とノートをリュックに詰め込み、部活の着替えと夏なら2ℓ水筒を両手に持って登校する中学生なら分かる。総重量は10kgを超え、肩紐が身体に食い込むほど酷使されるリュックを背負いながら、雨の日も風の日も学校に向かう彼らはまさしく修行僧だった。

でも、小学生に置き勉は必要なのか?

「明日の時間割は?連絡帳ないのにどうすんの?」

「全部置いてあるから大丈夫!」

そうきたか…

私は頭を抱えた。普段から忘れ物の多い三男は、どうやら『置き勉』をすることで『忘れ物』から解放されると思ったようだ。

そして『忘れ物』をしないように『置き勉』をする為に、休み時間に宿題をするというサイクルを思いついたらしい。

「これでボクは忘れ物しないし、早く帰ってこれるね」

「早く帰ってこれる?」

「うん、ランドセルが軽いと速く走れるから」

えっへんと腰に手をあてる姿に、こいつはどれだけポジティブ思考なんだと呆れる。むしろ母は羨ましいよ。

でもね、三男。よーく聞いて欲しい。

通学路を走ってはいけません。


それから何度も持ち帰れと言ったが、「ボク、置いてくる主義なんで」と頑なにスルーされ、3学期に入ってからも金曜日以外はカラカラと音を鳴らしながら帰ってくる。

忘れ物はというと…
えぇ、お察しの通りです。

確かに教科書や宿題は忘れなくなったが、小学生によくある「いつまでに」「これを」がうろ覚えなので、「だいたい明日に」「こんなやつ?」と言われて焦る。当日朝とかほんまやめてくれんかな。

それでも三男は毎日元気だ。

カラカラと鳴るランドセルを背負い、黒色のネックウォーマーをマスクの上まで被せて「狗巻棘」とニヤつきながら学校へ行く。

私は毎朝、「しゃけ。おかか。ツナマヨ」と呟く三男を玄関まで見送る。

「棘くん、行ってらっしゃい」

「ボクね、たまに五条悟にもなるよ」

マジか、三男。もう一度よーく聞いて欲しい。

登校中に五条悟になってはいけません。


あっ、登校中以外でも五条悟は禁止!!!



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