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醸造アミューズメントパークって面白いんじゃないの?という話

ちょっとしたご縁から、緩く醸造酒を語る座談会、というオンラインイベントを不定期で開催している。

やっていることは、日本酒、ビール、ワインで専門性を持っている3人が寄り集まって、それぞれの立場からお互いの醸造酒の知識を交換し合おう、という一種の勉強会。

ただ、緩い。

その時の気分と会話の流れで話の内容はあっちにもこっちにも飛んでいく。単なるおしゃべりと思われているかも知れないが、個人的には毎回、いろいろ新しい知識や視点、そこから生まれるアイデアや考えを得られるのでとても満足している。


ちなみに各回のアーカイブはオンラインサークルのメンバーの方には全編を公開してますので、観たいという方はぜひこの機会にサークルに参加してみてください。


で、先日、この3人が実際に顔を合わせてお酒を飲みながらいろいろ話す機会があった。


まあ、のっけからビールの発酵強度がどうとか、麦芽の量をイジることで生じる変化はどこに由来しているはずだ、とか、それぞれのお酒で使うフィルター設備の違いがどうだとか、よくもまあ半分酔っ払っているくせにそんな話をするね、という濃い話で盛り上がる。こんな内容で盛り上がる連中は間違いなく、変態だと思う

変態三人衆。

いや、二人の変態と一人の常識人。こっちがいい。ちなみに常識人はもちろん、ワインの人だ。


これね、録音するなりその場からストリーミングするなりしたら絶対に楽しかった。録音もストリーミングもしてないけど。


そんな変態連中の会話はその後、「この3人でなんか出来ないかな」というところに。

まあ、3人とも自営業のような側面を持った連中なのでお仕事のタネをどう作っていくのか、についてはそれなりに貪欲。酔ってても。いや、酔ってるから特に。


視座の高いビールの義本さんと日本酒の並里さん。若い人たちの進路選択にお酒業界を入れること、そのための教育、業界の水準向上にといろいろ意見が出てくる。

さすがだなぁ、と感心しつつ拝聴する。しかしそこは自分の意見を言わなきゃいけない病に侵されたドイツ在住者。何も言わずにはいられない、と思い付きででっち上げたのが

醸造アミューズメントパークって面白いんじゃない?

というもの。


すでに日本酒もビールもたらふく飲み、しかもこの時点でさらにワインを飲んでいる。まともな意見なんかになるわけない、と自分でも思うがそこはそれ。

何となく事前のお二人のお話に絡めた感じにすればどうにかなるはず

で、言ってみた。


同じ場所で、同じ装置を使いまわして、日本酒とビールとワインを造れてしかもそこで醸造体験できる場所を作ればいいんじゃね?と。


説明しよう。

このアイデアの胆は、今のところ独立してしか存在していない醸造酒の製造拠点を一か所にまとめてしまうことにある。

しかも、どの醸造酒もなんだかんだ似たような器材を使っているから、それも可能な限りまとめてしまって使いまわせば固定費も安くなる。

しかもしかも、それぞれの醸造シーズンに合わせて機材のやりくりを調整していけば装置や設備の稼働率も上がっちゃう。

しかもしかもしかも、希望者は入場料を払ってもらってその日の業務のお手伝いをしてもらえば、経営の足しになりつつ職業体験まで出来ちゃって、将来的にやりたいことの選択肢にお酒業界をいれやすくなってしまう。

結果として、お酒の業界が盛り上がる、かもしれない。というなんともスペシャルなアイデアなのだ!

名付けて、異業酒交流!!
目指すところは全年齢版キッザニア


突発的に思いついて、なんとなくこの時の話題に沿ってそうな感じにこじつけたにしてはとてもいい出来のアイデアなのではないだろうか?正直、自分的には2020年最優秀アイデア賞を上げてもいいくらいだと思っている。

なんならこれを高架下でやれば別のアイデアともくっついてさらによくなるかもしれない。


どうだろうか、このアイデア。


これをお読みくださっている方の中には、「は?ふざけているの??」と思われる方も相当数いらっしゃると思う。

いないわけがない。


ので、ここからはもう少しまじめにこのアイデアを検証してみたい。正直なところ、酔った頭でひねり出したとはちょっと自分でも信じられないくらいにはいいアイデアなのではないかと思っているからだ。

しかしアイデア出しにとって環境は偉大だ。酔った頭であっても三人寄れば文殊の知恵、というのが成り立っちゃうのだから。それが変態であっても


このアイデアを検証するうえで重要なのが、季節と設備。この二つだ。

醸造酒という奴は季節性がある。お酒によっては年に一度しか仕込むことができない。ワインなどはこの典型だ。

しかしこの一方で、年間で何度も仕込むことができる醸造酒も存在している。ビールだ。


専業でやってしまえばビールの醸造家は年間通して何度もビールを仕込む。しかし、視点を変えれば年間を通してビールを仕込む必然性はない。年間を通してビールを仕込むのはそうやって生産量を確保する必要があるからだ。

一方で、ワインは秋に仕込むしかない。材料の保存がきかないワインでは原料となるブドウを翌年の夏まで保管して夏に仕込む、というような芸当は基本的にできない。


日本酒はどうだろうか。

日本酒は冬に仕込むもの、というイメージが強い。しかしこれはイメージにしか過ぎない、らしい。並里さんによれば。

発酵温度を低く保つために冬の寒さが有利に働くから冬に仕込む、というのが正解だという。


ここで考えに入れるのが「設備」だ。

ビールは実はちょっと違うかもしれないのだが、ワインも日本酒も同じスチールタンクで仕込むことができる。しかもワインもどっちかといえばタンクを冷やしたい。なんなら凍るくらいまで冷やせる能力があると実にありがたい。

なら、冷やせる機能を持ったタンクを設置して、秋にワインを造り、それが終わってから日本酒を仕込んだらどうだろう?日本酒も仕込み終わったら空いた時間はその装置でビールを造ったら?

ろ過装置はビールでもワインでも日本酒でもほぼ同じ装置を流用できる。なら、1台大型のものを用意して、それぞれで使いまわしたら?

麦芽や粕との分離をワイン用のプレス機を流用してみたら?

酵母はお互いのものをいろいろ使いあってみたら?


「できる」のではないだろうか?

しかも、関係者は全員が畑は違っていても醸造に関わるスペシャリスト。人のやりくりもできるし、なにより新しい知識の交流が生まれる可能性もある。季節によって人材を遊ばせるリスクがない。

しかもしかも、収入源となるお酒は3種類あり、売り出せるシーズンもそれぞれ違う。トータルで収益を上げればいいので1種類のお酒に必要以上に拘る必要はない。量も大きくする必然性がなくなる。ワインに関していえば畑を大きくする必要がないので、管理コストが下げられる。

しかもしかもしかも、年間を通してなにかしらのお酒を造っているので、「醸造」に触れてみたい人がいつ来てもなにかしらの醸造作業にアサインされることができてしまう。

仮にまだお酒が飲めない年齢の人には直接液体に触れない、機材をいじる作業や販売する作業、パッキングする作業を、力作業が難しい人にはそれに合わせた作業を担当してもらえばいい。来た時によってやっていること、造っているお酒が違うからやれることはいつも違う。

なによりそうして場の「雰囲気」に触れることが将来的な選択肢の拡大につながる、、、だろう。


組織として「造ったお酒を売ることで採算を確保する」前提で動いていれば、こうした体験希望者が来ようが来まいが経営上は関係ない。来たら、お手伝いしてもらえばいいのだ。入場料をいただいて

お金を払ってまでそんなところに来る人は、基本的にまじめに働くだろうし、なによりも仕事を楽しんでくれるはずだ。こんなにいいことがあるだろうか。

いや、ない。


ちなみにこのアイデアを話したときに義本さんから座学ができる場所も併設したらいい、と言われた。個人的には反対だ。

教育は教育機関に任せればいい。

日本にも徐々にそういった教育機関が出来てきている。それなのに、いいお酒を造らなければならない立場の我々がわざわざ時間を空け、手を空けて自分の専門でもないそうした業務に関わる必要はない。

仮にやるなら常設ではなく、セミナー形式でイベントのようにしたらいい。外部から講師を招いて、場所を貸す。自分たちはほとんど関わらない。


我々の思想や技術、姿勢を知りたければ現場に来て、そこで勝手に学べばいい。一度でダメなら学べるまで何度でも来ればいい

門は常に開かれているのだから。


ちなみに教育機関の併設には反対だが、麹屋さんの併設には大賛成だ。

どっちみち日本酒では麹は必要になるものだ。なら、日本酒蔵に併設した麹室、ではなく、独立させればいい。そして醸造の季節ルーチンのように日本酒を造る季節だけは日本酒用の麹に集中して業務を行い、それ以外の時は別の麹を造っていろいろやっていればいい。その方が絶対に楽しい。


ちなみに独立採算がいいのでは、という意見もあった。

全員酔っているくせに妙に細かく、具体的。やっぱり変態だ


収益はお酒と合わせて全部で帳尻を合わせる。それでいいと思っている。まぁ、とはいってもこの時のとっさ思いつきだが。

独立採算性なんていったら装置は使いまわせなくなるし、人材や造っているものの融通もしにくくなる。管理も面倒だし、そんなに大規模にやる必要もない。


イメージとしてお父さんが日本酒造って、お母さんが麹をつくって、長男がビール造って、長女がワイン。全員が家にある同じ場所、同じ道具、同じ財布でやりくりし、一家そろって家計を回す。誰かが動けないときは別の誰かが代わってあげる。

お父さんは今月日本酒造らなかったからご飯抜き、と鬼のようなことを言うのではなく、お父さんは今月はビールを手伝ってくれたからビール一杯追加ね、と言ってあげた方が幸せだ。


スケジュールもなにもそれぞれが顔を合わせて話しあって調整すればどうにでもなる。そんな規模がいい。


ひょんなことから爆誕したアイデアについて書いてきた。どうだろうか?

やる気がある人、いるだろうか。

なんならこれを読んでいるそこのあなたがクラウドファンディングを立ち上げて、このアイデアの実現に邁進してくれても私はかまわない。アイデア料をよこせなんて言わないし、ワイン部門で働かせて、なんて、、、いや、これはちょっと言いたい。

ただ大事なのは、楽しく未来をつくること。誰かの未来が楽しくなるのであれば、必ずしも私がその場にいる必要はない。

一緒にやってもいいし、単独でやってくれても構わない。もとはこの時の3人の変態が食っていくための、明るい将来を描くためのものだったが、そこはそれだ。

お金はまた何かしらのアイデアを考えて稼ぐ。きっとなんとかなる。


だから、このアイデアは世の中にぶん投げることにした。やってみたい人、ぜひ手を挙げてみてほしい。私はいつでも協力する。


ありがとうございます。皆様からの暖かい応援に支えられています。いただいたサポートは、醸造関係の参考書籍代に充てさせていただきます。