太る?太らない? ワインのカロリー | ワインあるある
この記事は「ワインを飲むのは好きだけどその大好きなワインを飲んで太ることは避けたい」という切実な思いをお持ちの方や、ダイエット中でもワインを飲むためにそのカロリーについて詳しく知りたい、そんな思いをお持ちの方の疑問に答えるものです。
ワインを飲むと太るのか?
このような疑問をお持ちの方は多いようです。実際にインターネットで調べてみると実に多くの記事がでてきます。関心がある方はすでに一通り目を通された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
これらの記事の多くではアルコールはエンプティカロリーであるため太らない。むしろアルコールの摂取と同時に獲ってしまいがちなおつまみや食事からくるカロリーが太る原因である、とされているようです。実に勉強になります。
このような内容の記事はすでに巷に溢れていますので、今回はもう少しワインのカロリーという点に焦点を当て、より深く触れていきたいと思います。
ワインの平均カロリーはどのくらい?
試しにGoogleで「ワイン カロリー」というキーワードで調べてみると、親切にも100gあたり82.9 キロカロリー (以下、kcal)である、という回答を返してくれます。
これ以外にも平均して100gあたり約75 kcalとしているケースが多いようです。
この辺りは出典によってある程度のブレが見られますが、全体的に100gあたりで約70~85 kcalの間くらい、と思っておけば大きく外れることはなさそうです。
ちなみに他の一般的に飲まれている酒類のカロリーは以下のようになっています。
ワインのカロリーはどこからくるのか?
意外に多いとも意外に少ないとも言えそうなワインの含有カロリーですが、このカロリーはそもそもどこから来ているのでしょうか?
ワインに含まれるカロリーはその多くが以下の2点から来ています。
- アルコール
- 残糖
上記の各種酒類の含有カロリー量をみても明らかですが、基本的にお酒の含むカロリーの過多はそのお酒が含むアルコール度数に依存します。アルコールは高カロリーで、1gあたりおよそ7 kcalのエネルギー量をもっています。この数字は実は砂糖類の含むカロリーと比較しても非常に多いものです。
ですので、同じワインであってもアルコール度数が高いものほど含まれるカロリーの量は多いということになります。
ワインに含まれるアルコール量の計算方法
ワインのラベルに記載されているアルコールの量は通常、度数、つまりパーセンテージで表記されています。このため、実際にワインに含まれるアルコールの量を知るためには簡単な計算をしてこのパーセンテージの値をグラムの値に換算する必要があります。
ただこのような計算をすることは面倒くさい、という方も多いと思いますので、先に簡単な目安となる数字を記載しておきます。
とりあえずはこの数字を覚えておいていただければなんとなくのアルコールの量は予想できると思います。
具体的なアルコールの量の計算方法
それでは具体的なアルコール量の計算方法を見ていきます。
ちなみにこのアルコール度数の換算はワインに限らず、すべてのお酒で同様の手順を使って行うことができます。
アルコールの量を計算する際に気をつけなければいけないことは、アルコールの比重は水よりも軽い、という点です。
小学校の算数などでよく出てくる食塩水の濃度から食塩の量を求めるような問題では、全体量に濃度 (度数: %で記載) をかけ合わせることで算出することができます。ですので、仮に1リットルの食塩水の濃度が5%だったとすると、そこに含まれる食塩の量は
となります。
お酒の場合も基本的にはこれと同様の考え方でいいですが、上記の比重の問題でもうひと手間が必要となります。具体的にはアルコールの比重は0.789 g/cm3 ですので、この数字をさらに掛ける必要があります。
となります。
これはボトル1本に含まれる全アルコール量になりますので、仮にこのワインをグラス1杯およそ100 ml 飲んだ場合には、
です。
この数字は純アルコール量ですので、カロリーとしてはアルコールのカロリー量 (7 kcal/g) の数字を使ってさらに計算をする必要があります。
つまり、アルコール度数12%のワインを100 ml飲んだ場合には、含まれるアルコール量だけですでにおよそ66 kcalのエネルギーを摂取していることになります。そして、実際にはここにさらに残糖度に応じた糖類由来のカロリー量が加わることになります。
ちなみにここで計算されるアルコール量が代謝されない場合にアルコールによる二日酔いという結果に繋がります。この点に関しては「二日酔いを避けるために。アルコールの分解を知ろう!」という記事にまとめています。
残糖によるエネルギー量
糖類の持つエネルギー量については上記のとおりです。
ワインに含まれる糖質は基本的に単糖類に属します。逆に糖アルコールやオリゴ糖などはほぼ含まれていません。このため、残糖が仮に10 g/l という表記のワインに出会ったらそのワインにおける糖質由来のエネルギー量は、
と単純に計算してしまっておおよそ問題ありません。
これはボトルやグラスに換算すると、
となります。
上記の数字と併せて考えてみると、仮にアルコール度数12%で残糖が10 g/l のワインがあったとしたらグラス1杯100 ml に含まれるエネルギー量はおおよそ70 kcal ということになります。実際にはここにさらにアルコールや残糖以外からもたらされるエネルギーが加わりますので、本当の意味でのグラス1杯のカロリー量は70 kcal強になります。
とても甘いデザートワインのカロリーは
ここで1つの例としてドイツが誇るデザートワインであるTBA、トロッケンベーレンアウスレーゼというワインを例にとってそのカロリー量を考えてみたいと思います。
TBAと一口に言ってもその種類はいろいろありますのでアルコール度数も残糖量も様々ですが、今回はドイツを代表するワインメーカーの一人であるマークス・モリトアー (Markus Molitor) のWehlener Sonnenuhr, Riesling Trockenbeerenauslese*** 2013というワインを例にします。
このワインのアルコール度数は8.5%、残糖は340 g/lです。
ちなみに価格は375 ml のハーフボトルで2257ユーロ、750 mlのフルボトルでは4510ユーロという非常に高価なものでした。
この数字がまずは100 mlに含まれる純アルコール量からもたらされるカロリー量になります。アルコール度数が8.5%と低めですので、アルコール由来のエネルギー量はそれほど多くないことがわかります。
続いて、残糖由来のエネルギー量を計算します。
このTBAは残糖量が340 g/l とTBAの中でもなかなかないほど残糖の多いものでした。このため残糖由来のカロリーも多く、100 mlで136 kcalにも及びます。
この結果とアルコール由来のエネルギー量を足したものが実際のグラスに含まれるカロリーの量となるわけですが、その数字は
と180 kcalを超えます。平均的な成人男性の1日あたりの必要カロリー数が約2000 kcalといわれていますので、このTBAを100 ml飲むだけで10分の1程度を摂取できてしまう計算となります。
ワインは飲むと太るのか?
ここまでワインに含まれるカロリー量を計算してきました。
グラス1杯で200 kcal弱もするものを口にしていれば当然太る、と思いそうなものですが、実際には少し事情が違います。ワインに含まれるカロリーの供給源であるアルコールもしくは残糖 (砂糖) はいずれもエンプティカロリーの供給源として知られるものです。このため、厳密な意味ではワインだけを口にしている分にはそれが原因で太る、ということはまずありません。
しかし実際には、現実的な生活に照らし合わせれば、太ります。
この点を理解するためにはまずはエンプティカロリーというものをきちんと理解する必要があります。
エンプティカロリーとはなにか
エンプティカロリーという単語を聞くと思わず、
という語意からカロリーを持たないもの、と思ってしまいがちです。しかし実際にはエンプティカロリーとは「栄養素を含まない、もしくは極めて微量にしか含まない、中身が空っぽでカロリーだけを持つもの」のことです。カロリーが無いもの、ではありません。
吸収されないから太らない、は本当か?
一般的にされている話として、このエンプティカロリーというものはカロリーはあっても栄養素がないため体内に吸収されるものがなく、かつ優先的に代謝に使用されるため摂取しても太らない、というものが多く見受けられます。
この理論の展開自体がどこまで正しいかは医学に明るい方に譲らせていただきますが、仮に正しかったとしてもそれをもって太らない、という理屈にすることは現実的にはかなりの無理があります。
その理由としては、アルコールの分解速度にあります。
アルコールの分解は1時間あたり4~6 g
「二日酔いを避けるために。アルコールの分解を知ろう!」という記事で書いたことですが、アルコールの時間あたりの代謝量は体重との関連性が強く、体重が40 kgの人で1時間あたり約4g、体重が60kgの人なら1時間あたりの分解量は約6g程度です。
体内に摂取されたアルコールの代謝にはこれらの数値に基づいた時間が必要になりますので、仮に上記の例に出したようなアルコール度数12%のワインを100 ml飲んだ場合には1.5~2時間程度はこのグラスから摂取されたアルコールの代謝が優先されることになります。つまり、この間の時間に摂取された他のエネルギーは代謝によって使わることはなくその多くが吸収に回されます。
(これは極めて単純化した場合のことです。実際には体内ではもっと複雑な経路での代謝がなされますのでこの限りではありません)
現実問題として、アルコールなどのエンプティカロリーを摂取していることによってそれ以外のカロリーの吸収を促進することになります。
今回のまとめ | お酒を飲んだら太る、と思うべき
お酒だけを飲んで後はなにも食べなければ太らない、という話もあるようですが、実際にはアルコールの分解時間全体に渡ってなにも口にしなければ、ということがこの前提になります。
摂取アルコール量によってはこのようなことは現実的に不可能なことも多くありますし、お酒の席ではやはりおつまみやお料理を口にしてしまうものです。ワインなどはお料理とのペアリングがその醍醐味の1つでもあるのですからなおさらです。
さらにアルコールは肝臓で分解される際に分解過程において中性脂肪の合成を促すとされていますので、内臓脂肪を増加させる可能性も高くなります。
つまり現実的に考えて、ワインに限らずお酒を飲んだら基本的には太るもの、と思うべきです。
この記事にご興味をお持ちいただけたようであれば、ぜひ主要サイト「Nagi's Wineworld」の記事もご覧ください。
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