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アール・ド・ヴィーヴル06/「わたし」の美術館その①

土曜日の朝のまどろみ。ベッドの中でぼんやりと頭にうかんでくるものを「味わう」のは、とても楽しい時間。

週末、あわただしい東京での仕事が終わって、三菱一号館美術館でやっている「フィリップス・コレクション展」を繁雄が見たいということになり、丸の内で待ち合わせした。はかったわけではなかったけれど、丸の内の街はクリスマスのイルミネーションで、すっかり魔法がかかった夢の世界に変身していた。

三菱一号館美術館はレンガひとつひとつを焼き直しして再建したすばらしい雰囲気の建物で、とても気持ちがよくなる。それまでの喧騒にふりまわされた「心」が落ち着くのです。

その日はレイトデイだったので、6時ぎりぎり到着の僕らも、ラッキーなことに9時までたっぷり時間をかけて自分のペースで歩けた。

(以下、ベッドでの会話)

繁雄(以下S)ー きのうのフィリップスを思い出してたんだけど。何がよかった?

渚(以下N)ー やっぱりゴッホの「アルルの公園の入り口」。あと、もう一枚の絵もよかった。ゴッホの絵にはほかの画家にはない、「特別な力」みたいなのがあるよね。今年いっしょに行ったチューリッヒのクンストハウスにあるゴッホもすごかったけど。アルルの絵は、前にアルルに行った時の公園と同じところだったから、すぐにあそこだってわかったし。

N- ゴーギャンが来るのを公園の入り口で待っている、帽子をかぶったゴッホを描いている絵だけど、植物とか異様なくらいの生命力を持っていて。(と言って、iPhoneの中にストックしてある、アルルに行った時の写真を探し出す)

S- あっ、アルルのフォトフェスに行ったときの写真。懐かしいね。G/Pgalleryの横田大輔が出展したんで見に行ったんだよね。あの頃はバカンスシーズンだったから、アビニョンや、いろんな街でフェスティバルをやる時期で。

S- スティーブン・ショアにも会ったんだよね。楽しかったなあ。

N- ビストロの写真もあるよ。光がとてもキレイで、夕方から夜にかけて毎日ビストロの外のテーブルでゴハン食べたねー。そうそう、カフェの前に楽団が来て演奏してたのも面白かったし。

S- ゴッホの絵みたいなことは、写真じゃできない。逆に言えば、ゴッホは絵画の真髄を実践してるね。

N- ダーリンは、どの絵が好きだったの?

S- 僕は、クールベの「地中海」。あとは、モネが描いた崖の絵。どれも素晴らしかったな。ダンカン・フィリップスの審美眼というか、絵を見たときに彼が何を感じたかが、そのまま伝わってくるような作品だった。

クールベの絵は、クールベが寄せては返す海を見て「世界」は絵に描けるか、と問いながら描いているのがよくわかる絵で、ダンカンがそれに、うたれたんだろうなと思った。

モネの絵「ヴァル=サン=ニコラ、ディエップ近傍(朝)」も同じで、モネの絵を見てダンカンは愕然としたと思う。

N- わたしもモネの絵、好きだった。チューリッヒのクンストハウスに展示してあるモネも素敵だけどね。

S‐ 描かれているのは、ほとんど抽象的な絵なのに、すごくエモーショナルな気持ちを湧きおこす。その回路は謎だし、理由がわからないし、しかし、響きがあり、感動がやってくる。絵を見る醍醐味だね。ほかには、どんなのがよかった?

N- カンディンスキーが描いた無脊椎動物がカラフルに並んだ「連続」。かわいくて、きれいなんだけど、絵としてすごい。不思議なきもちよさ。クレーの「養樹園」も。わたし、子どものころからクレーが大好きなんだよね。今年、ベルンのクレーセンターに連れて行ってくれたでしょ?天使の絵、感動したなぁ。

S- ダンカンは、鉄鋼業で成功した家の息子として生まれたし、美術批評家でもあった。自分の家をベースにしてコレクションを開始するんだけど、結婚した画家の奥さんにアドバイスをもらって、印象派以降のモダニズム絵画に目覚めていく。だから、フィリップスのコレクションを見ていると、人間の「眼」の成長が、旅行記を読んでいるみたいに楽しめるね。

N- いっしょに家の写真も展示してあったけど、ほんと、美術館の中で暮らしてるみたいだった。夫婦でアートコレクションするって、とっても素敵だよね。

S- 欧米のアートフェアなんか、必ず夫婦で来て、買うのが基本だからね。日本みたいに、奥さんに内緒でこっそりストックしておくみたいなことはないな。笑


N- マチスとか、デュフィの絵とか、室内の様子を描いたインテリアの絵もあって、面白かったよね。

S- ダンカン・フィリップスは80歳手前で死ぬんだけど、奥さんが美術館を引き継いだし、その後フィリップファミリーの美術館になったんだ。私と公がうまく調和した理想形の一つだね。

N- 三菱一号館美術館もお屋敷風だから、コレクションと建物が合ってたよね。

S- 今回は展示してなかったんだけど、アメリカの黒人画家ヤコブ・ローレンスの名作「移民シリーズ」もフィリップスは持っていて、機会があれば、見たいな。ダンカンはブルジョワだったけど、コレクションの社会的役割もすごくわかっていたんだと思う。

N- アメリカに行った時に見てみたいね。

S- あーっ、おなか空いてきたなー。

N- そろそろ起きて朝ごはんにしなくっちゃね。でも、まだ寝てたいなー。

BOOKMARK…

フィリップス・コレクション展 https://mimt.jp/pc/

クンストハウス・チューリッヒ http://www.kunsthaus.ch/en/

ベルンのクレーセンター https://www.zpk.org/de/startseite-245.html

 


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サンキュー(繁雄)
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編集者でクリエイティブディレクターの後藤繁雄と渚。 夫婦2人の「旅と暮らし」をつづります。 夫65歳、妻41歳。 https://www.youtube.com/channel/UCxnUXuFX0if8uN1II_pLihg/featured
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