TARGETにみる大手小売の次の手 【サンフランシスコ旅 2019 #01】
お久しぶりになってしまったnoteです。
前回のサンフランシスコ・シアトル旅行記も結局〆れてない有様ではあるのですが、まずは記憶が薄れぬ前に書くべきだと思ったので、こちらを先に。
2019年3月21日から、Appleの発表会取材に先立ってサンフランシスコに数日滞在していました。
サンフランシスコは昨年10月に行った以来、約半年振り。短い滞在でしたが、うち1日を視察・勉強デーと設定し、現地在住の
・ニューリテール分野のウォッチャーとして右に出るものはいないRieさん(@rie_rev)
・サンフランシスコでデザイナーとして働くハイジちゃん(@haiji505)
と一緒に、大手からDTCスタートアップまで、サンフランシスコで今見るべきリテール店舗をひたすら見てきました。
そこで見えてきたモノ・コトについて書いてみたいと思います。
私には”ハート”が見えていなかったらしい
(何なんだこの構図)
リテール大手の巻き返し
まずは繁華街、Mission Stにあるリテール大手の「TARGET」へ。
こちらは郊外出店の多いTARGETの中でも、都市型の店舗らしく、他店と比べると小規模とのことだったのですが、日本で想像する都市型店舗の規模とはかけ離れた広さ。コーポレートカラーの赤とコーポレートフォントで統一されたサインが大胆に配された店内は、意外と(!?)お洒落。
TARGETには、スタートアップアクセラレーターの「Techstars」との協業などで、スタートアップのインキュベーション(ビジネスの構築)やアクセラレーション(ビジネスの成長支援)を行う組織を持つことで、起業家をサポートしている一面もあります。
DTCスタートアップの製品が店頭で手に入る
(直接的ではないものの)前述の背景もあってか、スタートアップが手がける新興ブランドのプロダクトと売り場との距離感の近さが印象的でした。
先日、DIGIDAYにこんな記事が出ていましたが、
これまで”DTCブランド”と呼ばれていたような、オンライン販売から始まったスタートアップによる商品たちが、大手メーカーによるCPG(Consumer Packeged Goods=消費財)と一緒に並んでいるんです。
わかりやすかったのは、トイレタリーやサニタリー用品の売り場。一番目につきやすい太い通路サイドのラック。適正価格とNYらしいスタイリッシュなヴィジュアルイメージやブランディング、そしてサブスクリプションをかけ合わせ、大手の独壇場だったひげそり業界に風穴をあけた「HARRY'S」と、HARRY'Sが手がける女性向けブランドの「flamingo」がフィーチャーされていました。
こちらにも。HARRY'Sとframingoが展開しているシェービングフォームや脱毛ワックスシートなどといったシリーズ商品とともに陳列されていました。
前出のDIGIDAYの記事によると
髭剃りブランド、ハリーズの場合、ターゲットでの販売開始前に、いくつか協定を結んだ。自社商品――シェービングジェル/ソープ、さまざま剃刀――をパーソナルケア製品売場に散在させるのではなく、消費者の目に付きやすいよう、ハリーズコーナーにまとめて陳列することを求めたのである。
ということのよう。
また、パッケージやブランディングのスタイリッシュさで、最近日本でも話題になっているサブスクリプションの生理用品「CORA」も。
上写真2,3段目にある円形のパッケージのタンポンや、下写真のデリケートパッドは生理用品やコンドームのスタートアップ「L.」のプロダクト。
基本的にネットでしか手に取れなかった製品を店頭で手にとって購入できることは、ユーザーである私たちにとっても嬉しい。ブランド側にとっても、ビジネス発展において、大きなベネフィットがあることは想像に容易い。
こちらはナチュラルフレンドリーなオーラルケア製品を展開する「hello」。オーラルケア関連で言えば、歯ブラシサブスクリプションの「Quip」も売ってました。
こちらはデオドラントの「NATIVE」。ウェブサイトの口コミ評価がめちゃくちゃ高いんですが、それを反映するように、どの香りも残り1,2個しか残っておらず、人気の高さがうかがえました。ちなみにNATIVEは2017年、P&Gに買収されています。
HONEST COMPANY強し
女優のジェシカ・アルバが立ち上げたナチュラル&エコなベビー、ホームケア、ビューティ関連商品を幅広く展開している「HONEST COMPANY」。プロダクトレンジも幅広く、売り場のあちらこちらでブランド名を目にしました。おむつ内歯でははあのパンパースと同じくらいの幅を取っていましたね。
Rieさんが後日購入してみたという、HONEST COMPANYが手がけるビューティブランド「HONEST BEAUTY」。マスカラが$17.99なので、日本のドラッグストアコスメより少し高価、デパコスより少し安価、COSME KITCHENの独壇場にあるオーガニックコスメの価格帯が丁度競合にあたるくらいでしょうか。洒落ている。
日本ではまだ”特別なもの”扱いを受けているDTCを中心としたネット発の新興ブランドたちが、サンフランシスコでは日常生活に浸透しているから意味があるのだろうとは思いつつ、対極にあった大手小売のリアル店舗にまで進出していたのは新鮮でした。
身の回りにおいて、様々な分野でデジタルとそうでないものの境界線がますます曖昧になっていっているからこそ、これも必然的な流れなのだろうなとも。
PB商品
そして、もう一つ面白かったのがPB商品。「Made By Design」はTARGETのプライベートブランドなのですが、どれもが洗練されていて、なおかつ安お手頃価格。
実際組み立ててみないと、どの程度のものかはわかりませんが、こんな洒落た生活家具がスーパーでサクッ買えちゃうんであれば、わざわざ郊外のIKEAに行かなくても良さそう。
※一方で、IKEAはNYで初めての都市型店舗「Ikea Planning Studio」をオープンというニュースもありましたね。
マットレス売り場には「Casper」等が並んでいるのかなと思いきや、もはやその影はなく、PBで埋め尽くされていたのも印象的でした。
スマートプロダクトのショールーム「OPEN HOUSE」
そして、このTARGETの下階にあるのがスマートプロダクトのショールーム「OPEN HOUSE」。オープンしたのは2015年の夏だというから、もう4年弱経っていることになりますね。
店内には、チェストやベッドといった家具の形をした什器が並んぶベッドルームを模したスペースもあったのですが、いまいち機能していない様子(笑)。
その隣のスペースには所狭しとスマートプロダクトが並び、実際に触って試すことができます。
設置してあるスマホの古さだったり、最新とは言えないモデルのプロダクトが置いてあったりと、今ではそこまで力を入れているわけではないのかなー……という印象。
個人的に気になった、ダイエットをサポートしてくれるデバイス&アプリ「OSD」。
最新のスマートプロダクトをチェックするという意味では、プロダクトの新陳代謝が起きやすい仕組みが構築されている「b8ta」のほうが面白いかと思われます(こちらは最近Googleに浸食されすぎちゃってる感じがあるけれど……)。
余談:ロボットが飲み物を作ってくれる「CAFE X」
このTARGETが入居している「METREON」というショッピング&アミューズメントモールに「CAFE X」が出店していたので、ついでに行って来ました。
ロボットが飲み物を作ってくれるというコーヒースタンドなのです。
オーダーはこの端末から。
クレジットカードで決済するので、その名前がそばのサイネージに表示されるので、オーダーのステータスが把握できるようになっている。「PICK UP NOW」欄の名前の横にある番号をロボットがいるマシーンに設置されたスクリーンで入力すると、飲み物が受け取れる、という仕組み。
以前とは受取の仕組みが変わってたり、ロボットのアクションが増えていたりしたらしい(Rieさん談)。当たり前なのだけれど、こういったスピード感もサンフランシスコらしい。
素材にこだわっているのに(そばにオペレーションとメンテ担当の女性スタッフが1名配置されていて、オーガニックのミルクの在庫を運んでいるのを見かけた)、人件費が削減できるからか、飲み物自体は他のお店より手頃な価格、そして普通に美味しかったです。
買ってきたもの
今回TARGETで見てきたスタートアップ関連のプロダクトは一通り購入してきました。並べてみてわかるのですが、どれもパッケージデザインがシンプル&お洒落(生理用品はあまりにも量が多かったのでRieさんと分けあったため、外箱なし)。部屋にそのまま置いておきたくなりますね。
- flamingoのrazor
- flamingoのfoaming shave gel
- Helloのwhitening tooth paste
- NATIVEのDeodorant Stick
- CORAのTampon
- L. のdelicate pad
- L. のsanitary pad(夜用)
TARGETでさんざん盛り上がったあとは「Nordstrom」「blooming dales」「Macy's」といった大手百貨店やモール、「RENT THE RUNWAY」「CUYANA」「MM. LaFleur」といったスタートアップやD2Cブランドのリアルストアを覗きに。
続きます。
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