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45歳、もう一度恋をしてみました⑤

「おっ、顔色いいじゃん。髪色明るくした?心境の変化ってやつ?
もしかしてまた、新しくセックスする人でも見つかった?」

加藤くんは口を開くないなや、私を茶化すように軽口を叩いた。
ちょっと周りに聞こえるでしょ?しーっと人差し指を口に当てる。
いいじゃん、別に聞こえたって、何飲む?にビールと答える。
ありがとう、と加藤くんからグラスを受け取り
ゴクリと一口飲むと、強い炭酸の刺激に顔をしかめた。

「セックスはまだしてないけれど、気になる人ができたかな」

「〇〇さんはもういいの?」

〇〇さんとはあの彼の事。

「もういいって言うか、向こうが提示した日程が合わなくて
また振り出しに戻ったって感じ。
それに、あの人今の時期は釣りで頭がいっぱいよ。
あとさ、レッスンを引き受ける条件て言うの?に
同じ間違いを繰り返さない自信はありますか?って」

「それって、恋愛対象に見るなよ
ここでのことは誰にも言うなよってことだろ?つまり、、」

二人で顔を見合わせて言った。

『都合の良い女ってこと?』

「なぎさんはそれでいいの?やっちゃうとまた好きになるんじゃない?」

「必ずそういう展開になるとは限らないけれど
迫られたら断る自信がない。だから延期になって正直ほっとしているの」

そう言って、ビールを一気に流し込んだ。
おかわり?と聞く加藤くんに、うん、と頷き
新しいグラスを受け取りまた一気に半分くらいを飲み干した。

「気になる人って誰?」

「最近、ドラムを習い始めたんだけど、そこの先生なんだ」

「またぁ?何だよ、そのドラム繋がりって。
ドラムやってれば、みんな好きになる訳?なぎさんの性癖なの?」

「それは偶然よ、たぶん。仕事以外で男性に出会うってあんまり無いし
だから、何か新鮮に感じてね」

「つまり、お手軽だったってこと?」

「お手軽って、失礼な。。まだ何にもしてないし。。。
この先、どうやって関係を発展させたらいいと思う?」

「先生、大好きって抱き付いちゃえば?」

「教室で?」

「いいじゃん、どこだって」

「そうかな。。。」

加藤くんのあまり為にならないアドバイスに満更でもない私がいた。

あの彼、7年振りに恋をしたあの彼。
久しぶりの恋愛に、恋の始め方をすっかり忘れてしまっていた。
アプローチ自体間違っていた気がする。
そして、フラれるという大失敗、大失恋。
でも、今なら上手く出来そうな気もする。

あれっ?ちょっと、待って、待って!!
私は彼が好きではなかったの?
私が好きなのは、、、先生なの?
これじゃ、本当に本末転倒だ。。。

「一応、参考にしてみるね」

そう言って、三杯目のビールに口を付けた。





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