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本末が転倒

街に繰り出すと、何かが配られているのを目にすることがある。めっちゃある。

ティッシュに始まり、やたら小さいボトル(きっとこの為に作られているので、結果的に凄く製作費がかさんでいると思われる)に詰められた試供品のシャンプーやらリンスやら。

当然だけど、急いでいたり、商品を無償で頂くメリットと荷物が増えるデメリットを天秤にかけたときに後者が勝ったりした場合にはなるべく丁重に、それでいてはっきりと断る。


要らないものは要らないと言える強さが必要だって
高校の家庭科の授業で教わった。


数十年後、隣に誰も居ない日々を過ごしているかもしれない。
僕は極度の寂しがり屋であるので、そんな折に自分を訪ねてきたセールスマンの言葉を鵜呑みにしてしまう恐れが非常に高い。非常にだ。

そんな未来に備えて、今のうちから呼びかけを断る経験を積んでおかなければならない。
そういった意味では、受け取ることも断ることも
大事なのかもしれない。

話が未来に逸れてしまったが、何かを受け取る機会は屋外だけではない。

それは例えばデパート。

白を基調とした店が連なる。
どこに目をやっていいのか分からない僕。

「あ、何か良さげだな。」
的な安易な覚悟で足を踏み入れる。

満面の笑みで迎えられてしまい、一旦店内を見渡す。
そういう時ってのは、往々にして身の丈に合わないリッチな店だ。
だからといって何もせずに店を出るのは何となく憚られる。


そんな時におすすめなのがお試しコーナー的なのを探すこと!
「それとなく商品を吟味している感」を演出するのにうってつけだよ!(完全主観なので責任は取れません。悪しからず。)


ハンドクリームの試供品を見つけて安堵する。
ちょうど少し荒れているし、一石二鳥だ。
「ハンドクリームにおける多過ぎず少な過ぎずってのはどれくらいの量なんだろう」とか何とか考えながら手にクリームを馴染ませる。

僕の調整ミスなんだろうか。
やたらべたつく。
そりゃもう看過できないくらいに。

それとなく吟味している感を出して、「今日は決められないので、後日また改めて来ます。」みたいな風を装ってスマートに店を後にするつもりだったのに、結果的に普通に手を洗いに店を出た。

その店から最寄りのトイレより少し足を伸ばしたところにあるトイレを選んで駆け込んだ。

あわよくば手荒れに効けばいいなぁとか思っていたのに、つけた直後に自ら洗い流すことになるとは。

いつもより入念に掌の皺を洗いながら
「こうして僕の手は荒れて行くのだろうか」
と思った。

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