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「権力を握る人の法則」の著者の続編が刺激的だったので、改めて印象に残った点を記載しておく

少し前にnoteで取り上げた「権力を握る人の法則」の著者の別の作品も読み、引き続き面白かったので感想を以下記載しておきたい。

リーダーシップ論で述べられているリーダー像というのは「リーダーたる者かくあるべし」という理想像、つまり絵空事が述べられており、実際にリーダーが取る行動というのはその理想像とは真逆でかけ離れているケースが多い。

そして重要なのはそれで現実世界は回ってきたし、これからも回っていくだろうということである。例えば以下の通りである。

  • 謙虚なリーダーというのは滅多にいない。だいたいナルシスト型のリーダーが多いし、またナルシスト型は自分に自信を持っているので、周りからも頼りにされやすい。周りの人間も頼りにしたいと思っている。

  • 自分らしさを押し出す「オーセンティック・リーダーシップ」は大流行したが、ありのままの自分をさらけだすリーダーはほとんどいない。むしろ自分の感情には負けず、素の自分とは違う自分を演じなければいけない。むしろ多くの経営者のの成功の裏には常に計算や演出がある。

  • 真実を語るリーダーというのも滅多にいない。現実には嘘をつくリーダーは信じられないほと多い。なぜなら嘘をついたところで滅多に罰せられないからである。特にソフトウェア業界で言えば、アップル創業者であるスティーブ・ジョブスの「現実歪曲空間」を始め、嘘をついてセールスを行う者が非常に多い(注:もっとも、これは実際には嘘ではなくソフトウェアを売るための「交渉術」である面も否めない、というのが本書を実際に読んだ感想ではある)。リーダーは自信を持って嘘をつく。「自分を演出し人を眩惑する能力は人間関係においてきわめて重要であり、巧みに嘘をつく能力は仕事で成功する上で欠かせない」からだ。また我々自信、ときに嘘を聞きたがるときがある。

  • 上司を含め、周囲の人間は信頼すべきというのが一般的社会人としての良識であるが、信頼を獲得しているリーダーは少ない。
    むしろ信頼されずともリーダーとして十分やっていける。また、人は常々信頼できない人間を見分けられないものだ。
    よく知られた話であるが、若き日のビル・ゲイツは天才ゲイリー・キルドールが開発したOSをほぼそっくりコピーした上でIBMに転売した。
    信頼しすぎると損をするし、むしろ裏切る側からすれば裏切る方が得である場合もある。

  • リーダーは「社員第一」ではなく「我が身第一」であることが多い。大量の従業員のリストラをやった後に自分が辞任する際、数億ドルに及ぶ退職金をちゃっかりもらって辞めたりする。

余談であるが、最後の「我が身第一」については前職で頻繁に目にしていたのでとても実感がわいた。

例えば多額の損失が出るような投資案件が発生して役員の責任問題にまで発展しそうな場面では、投資を行なった当時の担当役員は「この損失は投資後の管理を怠っていたことによるものだ」の一点張りで、現在の担当役員は「これは投資の当初計画に無理があったのではないか」の一点張りだった。

別の例では、海外子会社の現地法人社長(日本企業から出向しているサラリーマンであり、駐在員である)を務めていた方が、社内でコスト削減策を打ち出し、営業経費等をどんどん削っていったが、会社のPLを最も圧迫している要因の一つである自分の住居(超高級タワマン)だけはその削減対象からちゃっかり外し、現地社員から白い目で見られていた。

最後に言えるのは、「自分の身は自分で守れ、他人は自己利益に基づき行動するので、あなたも自己利益に基づいて行動すべき」という点である。

アメリカも日本も、そしてどこの国の組織も、人が集まればそれだけポリティクスやら派閥が生まれる。

組織は元をたどれば個々の自己利益を追求する個人の集団なので、協力し合わなければいけない一方、自分だけ助かろうとする人もいれば、片や聖人君主のような立派な方も実際に存在する。この本がしきりに伝えてくるような「誰も信用するな」という心は自分の人間性が貧相になるので持ちたくはないが、少なくとも「自分の身は自分で守れ」という言葉は心に念じてまた明日から仕事に行こうと思った(あ、明日は日曜で休日だ)。


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