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「権力を握る人の法則」を読めば美辞麗句が並ぶリーダーシップ論よりも現実的な仕事術を多く学べる

巷のリーダーシップ本というのは、偉くなった人が偉くなった後に書いた自伝であり、世間から「こう見られたい」というバイアスをもとに過去を振り返っているため、偉くなる仮定で実際にどのようなことを行ってきたのか、について生々しい記述はなされていない(もしくは歪曲されている)。

もしくは、既に偉くなってしまったのでマズローの欲求5段階説でいうところの自己実現欲求を満たした途端、「やっぱり会社は公器である以上、世のため人のためにあるべし」という自己超越欲求でいう心が芽生え、現在の持論を過去の自分の行動に投影しながら自伝を描いてしまうため、どうしても実際に過去行ってきたこととの歪みが生じてしまう。

本著作はそんな問題意識から書かれた著作であり、実際にいわゆる偉い人たちが過去、どのような行動をとっていたのかを膨大なインタビューやデータをもとにその結論が類型化されている。「貞観政要」の感想文でも少し述べたが、個人的には理想的なリーダーシップ論を述べている説教本よりも、こうした生々しいリアリティのある本のほうが好きである。起業家の方やスタートアップの方々、個人事業主の方にはほとんど役に立たないと思うが、その方々の顧客であろう大企業サラリーマンもしくは政治家・官僚の方々がどのような戦いを日々繰り広げているか、理解が深まる一冊だと思う。ちなみに描かれている事例はいずれも米国の事例であり、日本の大企業の事例とだいたい変わらないんだなということがよくわかる

以下、印象に残った点を箇条書きしていきたい。

1.評価されたければ自分の上司を満足させなければならない

  • 上司がご満悦であれば、仕事の不出来はさほど問題ではないということである。逆に上司を不快にさせたら、いくら実績があっても首は危うい。

  • もしもあなたが上をめざすなら、仕事さえできればいいのだという考えは捨てたほうがいい。

  • 仕事ぶりは昇進につながらないどころか、邪魔になることさえある。

  • 実績が成功を約束しないのは、CEOなどの高い地位だけではないし、またアメリカだけの現象でもない。

  • 自分の行動や発言、そして仕事の成果は、上司をいい気分にさせているか、確認すべき。

  • いい気分というのは、あなたに満足するという意味ではなく、上司自身が自分に満足しているか、という意味である。

  • さらに昇進する確実な方法は、端的にいって上司をご機嫌にしておくことなのだから。自分に自信のない人に限らず、ちょっとばかりうぬぼれて気分がよくなりたいのは人情である。

  • 上司との関係に気を配りなさい、すくなくとも仕事の成果と同程度には気をつけなさい。

  • まずはあなたの存在に気付かせること、そして有利な基準で評価されるように働きかけること。

  • 人間は、他の条件が同じであれば慣れ親しんでいるものを好む。

  • よく知っているものに対して嫌悪感が薄れるのは、不確実性が低下するからだと考えられる。

  • 目立つだけでなく覚えてもらえば、高感度が高まるのである。記憶に残ることイコール選ばれることだと言ってよい。

  • ・あなたが競争に勝てるかどうかは、仕事の能力だけでなく、上司の後押しを得られるかどうかに大きく左右される。

  • 好かれる人ほど出世するといった考えは、この際きっぱりと捨てるべきでる。

2.必要な7つの資質

  1. 決意:必ずやり遂げるという決意。そして努力・勤勉・根気が重要。

  2. エネルギー:一休みしてからやろう、なんて言っている人は結局何もできない。大事なのは、「準備期間に労力をつぎこむこと」。個人の業績の差は結局のところ、知識とスキルの習得に直接費やした時間数でおおむね説明がつく。

  3. 集中:チームに割り当てられた仕事のうち最も効果の高い5~10%に集中することで、予算や人員を効率よく配分し、時間を有効活用できる。

  4. 自己省察:重要な会議の後や心に残る話を聞いたときは、必ず手帳に書き留める。重要な決定事項や会議の他、誰に会ってどんな話をしたのは、それについて自分はどう考えたかを書き留めておく。内省や省察なしに学習や成長はありえない。

  5. 自信:あなたが信頼に足る人物かどうかを見極めようとする際、相手が注目するのは、外に現れる行動や態度である。権力や影響力を持っている人は自信たっぷりに振る舞うので、逆に自信ありげな言動を見ると「この人にはきっと力があるのだろう」と考えやすい。したがって自信のある態度を示し、それに見合う知識を備えていれば影響力を獲得することができる。自分に自信がなくしっかりとした自己主張ができないと、給与だけでなく何事でも不利になりやすい。

  6. 共感力

  7. 闘争心:例えば元ニューヨーク市長のジュリアーニは無慈悲寸前といえるほどタフだった。ときに荒々しく挑戦的な態度をとる。

3.頼み事は意外とうまくいく

  • キャリアをスタートさせるときは、やりたいことを臆せず要求する意思と、自分をその他大勢から際立たせる演出力がモノを言う。あなたは群れの中で目立つ必要がある。出る杭は打たれるなんて言っていてはだめなのだ。

  • 人は、できるだけ他人に頼まずに済まそうとする。だが大方の人は、頼まれた相手がOKする確率を過小評価している。

  • 頼み事はうまくいく理由の一つは、助言や助力を求められる相手にとっては、それができると評価され称賛されたことにほかならないからである。

  • 助けを求めることは、本質的に相手を褒めることである。

  • 他人があなたをどう思うかなどあまり気にせず、ほしいもの、必要なものはとりあえず頼んでみよう。それが、階段をのぼる第一歩になる。

4.自信を誇示する・責任感を示す・腐らない

  • 怒っている人は地位が高く、落胆している人は地位が低いと見られやすい。失望より怒りを表す人間のほうが、権力の座にふさわしいと見なされる傾向がある。

  • まだそれほど偉大ではないのに、そんなに謙遜することはない。

  • 多くの人が十分に力強い印象を与えられないのは、不安や動揺を抱えたまま話し始めるからだと考えられる。

  • 弁解や責任転嫁をしない人は、誇り高く毅然とした印象を周囲に与えることができる。

  • たいていの人は、つまらなそうな仕事や地味な仕事にはやる気を起こさないし、興味を持たない。そういう仕事を率先して引き受け、人並み以上にうまくやってのければ、あなたにビッグチャンスが回ってきたときにケチを付ける人はたぶんいないだろう。それに対して重要そうでない仕事も、意外と将来の役に立つものである。

5.人脈は大切に

  • のちのちのための関係作りは、単に相手に礼儀正しく接し、相手の言葉を傾聴するだけで事足りることも少なくない。

  • 誕生パーティに出席する、葬式に列席する、ランチを共にする、病気の見まいに行くといったちょっとしたことが相手の心に通じる。



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