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【マッチプレビュー】2023 J3 第14節 AC長野パルセイロvs鹿児島ユナイテッドFC

2023 J3 第13節 振り返り

試合結果

YS横浜3-2愛媛
鹿児島0-1八戸
富山0-0鳥取
沼津0-0岐阜
福島0-1FC大阪
讃岐1-0岩手
北九州1-1奈良
相模原1-1宮崎
長野1-2琉球
今治0-2松本

 2023 J3 第13節の各会場結果は上記の通り。ホームチーム勝利が2試合、アウェイチーム勝利が4試合、ドロー決着が4試合となった。ミッドウィークに天皇杯2回戦を戦ったクラブもあり、それぞれで疲労度などが異なっていた節だったと言えるだろう。第13節全体の印象としては、かなり落ち着いたスコアの試合が多かったということだ。YS横浜vs愛媛は劇的な得点の奪い合いになったが、その他の会場ではあまりスコアが動かず。ロースコア決着が多く、今季J3の混戦ぶりを象徴しているとも見えた。
 今節も前節終了時点で首位に立っていたクラブが勝利を収めることはできなかった。前節終了時点でトップハーフにいたクラブの中で、第13節を勝利で終えたのは松本・八戸のみ。その他の上位クラブは勝点3を積み上げることができなかった。
 前節終了時点で首位の富山は、ホームで鳥取と対戦し0-0のスコアレスドロー決着に終わった。順位表では16位と大きく下回る鳥取との対戦だったが、順位表の位置ほどの差はない試合内容だったと感じる。後半に入って登山が鳥取ゴールに迫る回数も増えたが、内容としてはほぼ五分。勝点1を分け合う結果になった。
 前節終了時点で2位の鹿児島は、ホームで八戸と対戦し0-1で敗れた。前半はトランジション局面で八戸が鹿児島を上回り、ショートカウンターから何度か鹿児島ゴールに迫った。前半のうちに八戸がリードを奪ったが、後半は鹿児島ペース。何度も決定的なシュートチャンスを迎えたが八戸GK谷口がスーパーセーブを連発。ゴールをこじ開けるには至らず、2試合連続での無得点試合になった。

順位表

 第13節を終えて昇格圏内につけたのは富山鹿児島。第12節終了時点と全く同じ2クラブが昇格圏内に残ることになった。2節連続で同じクラブが首位の状態となるのは、第3節終了&第4節終了時点の松本以来今季2度目。昇格圏内の2クラブがどちらも変わらなかったのは、今季初の出来事となった。
 首位に立った富山は、今季4度目の首位位置をおさえたことになる。首位に立った回数が4回というのは今季J3で単独トップ。岩手・松本・長野が2回で後を追うが、その3クラブと勝点の積み方を比較しても安定していると言えるのではないだろうか。総得点は松本に次ぐリーグ2位の多さ、総失点はリーグ4位タイの少なさを記録。攻守におけるバランスが取れていると言えるだろう。
 2位を守った鹿児島は、第11節終了時点まで積み上げた4連勝で、優勝争いを牽引する位置につけたと言える。4連勝中は岩手・北九州・琉球・松本に勝利し、順位表の位置や昨季のカテゴリーにとらわれずに勝点3を積み上げていた印象だ。ただ、直近2試合は奈良・八戸を相手に特徴の攻撃力が不発に終わっている。J3屈指の攻撃陣の奮起に期待したいところだろう。

2023 J3 第14節 プレビュー

宮崎vs今治
岩手vs富山
松本vs讃岐
愛媛vs奈良
鳥取vs北九州
八戸vs福島
長野vs鹿児島
沼津vsYS横浜
FC大阪vs琉球
岐阜vs相模原

 2023 J3 第14節 各会場の対戦カードは上記の通り。
 首位に立つ富山は、アウェイで岩手と対戦する。富山は、今季ホームでの堅守が特徴であり、現在ホームゲームでは5試合連続で無失点のまま試合を終えている。一方、アウェイゲームでは第5節FC大阪戦を除いたすべての試合で失点を喫している。ホームと比較すると勝点の積み上げが鈍くなっているアウェイゲームで、昨季J2組を相手に勝利できるかに注目したい。また、岩手は現在12位につけているが、勝点差は7で順位ほど離れていない印象を受ける。岩手は、1年でのJ2返り咲きに向けて是が非でもホームで勝点3を積み上げたいはずだ。
 2位の鹿児島は、アウェイで長野と対戦する。昨季、目前で昇格を逃した強さを持つ既存戦力の残存に加え、各カテゴリーから実力者を数々獲得した。序盤こそ怪我人の影響もあり波に乗り切れない時間が続いたが、若手を含む新戦力のフィットもあり特長のアタッキングフットボールを復調させた。対戦相手の長野と勝点差は2。試合結果によっては、順位が逆転する重要な"6ポインター"として位置付けられる一戦になる。公式戦4連敗と不調に陥る長野に対して、自慢の攻撃陣で3試合ぶりの得点を奪いたいところだ。

天皇杯での劇薬を手に…

 それでは、我らがAC長野パルセイロの第14節を深掘りしていく。前項でも触れたが、長野は現在天皇杯を含む公式戦で4連敗を喫している。信州ダービーでの勝利を最後に沼津・FC大阪・琉球に敗れ、ミッドウィークの天皇杯では神戸(J1)に敗れた。リーグ戦での3連敗はいずれも1点差の僅差であり、内容としても徐々に復調の可能性が見える。
 一方で、連敗の流れから抜け出せていないことも厳然たる事実である。良い試合をしただけでは認められないのがプロの世界。J3優勝&J2昇格を目標に掲げたシーズンとしては、これ以上の連敗は避けなくてはならない。
 長野の第14節の対戦相手は「鹿児島ユナイテッドFC」。前項でも軽く触れたが、シーズン開幕前から今季優勝候補筆頭と考えられているクラブである。攻撃陣のタレントはもちろんのこと、組織として攻守ともに緻密に設計されているチームであり、大嶽監督体制2年目として仕上がりを見せている。ただ、鹿児島も4連勝の後、2戦連続未勝利であり、勢いとしてはどちらも今一つの状態と言えるかもしれない。しかし、両クラブともに今季のJ3優勝を目指す以上は、ここからエンジンに再点火しなくてはならない状況だ。

マッチプレビュー

通算対戦成績

--2016--
鹿児島0-0長野
長野1-0鹿児島
--2017--
長野2-1鹿児島
鹿児島2-1長野
--2018--
鹿児島2-2長野
長野1-1鹿児島
--2019--
※長野(J3),鹿児島(J2)
--2020--
長野0-1鹿児島
鹿児島0-3長野
--2021--
長野1-2鹿児島
鹿児島0-2長野
--2022--
長野2-1鹿児島
鹿児島4-1長野

 長野と鹿児島のJ通算対戦成績は上記の通り。長野は鹿児島に対して、5勝3分4敗を記録している。長野が1勝上回っているが、ほぼ互角と捉えられる対戦成績だろう。
 鹿児島がJ2昇格を達成し、2020シーズンのJ3降格以降は全試合で決着がついている対戦カードである。ホームやアウェイといった地の利に関係なく、撃ち合いを制した方が勝利するというわかりやすい構図になる印象が強い。
 長野のホームゲームで対戦成績を整理すると、通算3勝1分2敗。5勝3分4敗から考えると、長野から見てホームゲームの方が若干勝率が高いことがわかる。ただ、どう切り取っても互角という表現が"適切"だと思えるほどに対戦成績は拮抗したものになっている。

昨季対戦振り返り

2022 J3 第7節

2022 J3 第27節

今季の順位推移

 上図は今季の両クラブの順位推移を表したグラフ。開幕直後の混戦状態の後はお互いに右から上がりに調子を上げてきていた。最も両クラブの順位差が広がったのは第7節終了時だが、その後6試合で鹿児島の追い上げと長野の失速があり差が縮まった。両クラブともに直近の試合結果は良いものとは言えないが、他クラブの結果も幸運に作用し上位グループにつけている。

勝点獲得表

 第一に長野の勝点獲得の流れで注目したいポイントは、やはり直近3試合の停滞。昨季はシーズン終盤の信州ダービーあたりまで連敗はなかったが、今季は第13節終了時点で3連敗を喫してしまっている。昇格圏内との勝点差に大きな開きはないが、勢いという面では他上位クラブと比較して劣る部分になるかもしれない。そのため、今後の優勝争いで優位に立つためにも、一度勝点獲得ラインを上向きにしていく必要がある。
 次に鹿児島の勝点獲得の流れで注目したいポイントは、4連勝で一気に上位に進出した点。もともと地力の備わったチームであることはわかっていたが、波に乗ると相手がどこであろうと複数得点を奪う怖さがある。序盤の停滞も気になるが、今季これまで連敗をしていないことは1つの大きなポイント。勝ち癖があるように負け癖も潜在的にどのチームでも可能性があり、メンタルへ与える影響は大きい。連敗せずに、上位争いのライバルである長野を突き放したいところだ。

その他データ

長野 | 鹿児島
---1試合あたり勝点---
1.54 | 1.69
---1試合あたり得点数---
1.62 | 1.46
---1試合あたり失点数---
1.23 | 1.00
---1試合あたりシュート数---
11.54 | 15.54
---1試合あたり被シュート数---
14.85 | 12.46
---1試合あたりゴール期待値(xG)---
1.27 | 1.40
---1試合あたりボール支配率---
44.23 | 54.00
---1試合あたりパス成功数---
252.85 | 346.46

 両クラブの細かなデータは上記の通り。これらの比較からお互いのスタイルの噛み合わせを推測していく。

1.じわじわと攻め込む鹿児島
 
鹿児島は長野と比較して1試合あたりのシュート数が多く、1試合あたりの被シュート数が少ない。また、ボール支配率も基本的に相手を上回る数値を記録しており、1試合あたりのパス成功数では長野を大きく上回る。この要因として考えられるのは、既存戦力と新戦力が融合し戦術が浸透し始めたということ。特に、GKからのビルドアップ貢献は4連勝開始から大きな変化が見られる。それは、第7節からゴールマウスを守る松山に変わってから、よりDFラインにつける短いパスが増加している傾向にあるという点だ。後方から配置を整えながらビルドアップを行い、攻撃陣のタレントを良い形で発揮させることが狙いだろう。
2.長野のプレッシングライン設定
 
長野の今季のスタイルとしてボール保持型かボール非保持型かを定めることは難しい。5バックのWBを中央に絞らせて後方3-2ビルドアップを試行する試合は基本的にボール保持を軸にしている。一方で、相手の保持に対して5-1-3-1ブロックで睨みを効かせ、スピーディーなカウンターで仕留めるスタイルも特徴的である。印象が強いのは後者のスタイルだろう。そして、今季シュタルフ監督が掲げる「賢守」こそ、後者のスタイルの軸になっている。攻撃時に可能な限りエネルギーを蓄積しておくというものだが、相手の保持に対して構える高さが低くなり、瞬間的なエネルギー放出で相手ゴールまで迫れない場面が連敗中は目立っている。ボール保持型の鹿児島に対して、プレッシングラインの高さは連敗脱出の鍵になるかもしれない。

予想スタメン

 ホーム長野の基本システムは5-1-3-1。GKはキム。3バックは右から大野・秋山・佐古。WBは右に船橋、左に原田。アンカーは宮阪。IHは藤森・森川。トップ下は三田。1トップは山本を予想した。長野が狙いたいのは、鹿児島のネガティブトランジション時のSB裏スペース。後方3-2可変型でリスク管理をしつつ、IHに攻撃時WGとして破壊力のあるメンバーを起用する可能性が高いと推測する。
 アウェイ鹿児島の基本システムは4-2-3-1。GKは松山。4バックは右から星・広瀬・岡本・薩川。ダブルボランチは木村・中原。2列目は右から五領・端戸・米澤。1トップに藤本を予想した。かなり攻めの予想にしたが、薩川・星・米澤はクラブ公式SNS上で練習合流する姿を見せている。鹿児島対策が進み、2試合連続で勝利から遠ざかっているため、個人のクオリティという側面で要所の選手を入れ替える可能性は高いと思われる。

まとめ

 鹿児島は怪我人の合流や戦術の浸透、新戦力の融合などが重なることで、4連勝という破竹の勢いで上位に食い込んできた。しかし、直近2試合は勝利から遠ざかり、無得点試合が続いている。組織としての攻撃の設計などは大嶽監督体制2年目ということもあり、申し分のないクオリティに思われる。若干の停滞を見せる状態を打破するのは、やはり局面局面での個人のクオリティになるはずだ。仮に、星・薩川・米澤の復帰ができれば、スタメン競争の熾烈さも向上し、今後のシーズン中盤戦に向けて好材料と言えるだろう。順位は5位だが、長野との勝点差はわずか2。優勝争いのライバルから直接勝点を奪える格好の一戦を十分に活かしたい。
 長野は信州ダービーでの勝利以降、公式戦では4連敗を喫する非常に厳しい状態。沼津戦・FC大阪戦・琉球戦と徐々に改善も見られ、Grow Everydayの志は体現している。あとは勝利するだけだが、相手も勝利を目指す以上、単純なようで最も難しい点になる。最も難しいあと一歩を埋めるポイントこそ、天皇杯神戸戦に散りばめられていたのではないだろうか。ピッチ上で身をもって感じた選手、長野から映像を通して感じた選手。感じ方はそれぞれだが、選手・チーム・クラブ・サポーターが一体となって苦しい時期を乗り越えていかなくてはならない。今こそOne Teamで上位から勝点3を掴もう。

獅子よ、千尋の谷を駆け上がれ。