見出し画像

2022 J3 第7節 AC長野パルセイロvs鹿児島ユナイテッドFC マッチレビュー

 4月29日(金・祝)のGW初日にUスタで行われた2022 J3 第7節 AC長野パルセイロvs鹿児島ユナイテッドFCの一戦を振り返っていきましょう。GWの3連戦の緒戦として今季負けなしの鹿児島ユナイテッドFCとの対戦となりましたが、悪天候の中素晴らしい戦いをして勝利を収めてくれたと思います。今季初の逆転勝利、今季初のリーグ戦連勝となったこの一戦を振り返って、GW中の残り2試合を勝利で乗り切れるように頭の中もアップデートしていきましょう!

①試合結果

逆転勝利!

 この試合は、2-1でホームチームの勝利となりました。かなり強い雨が降り続く中、試合が行われたので選手にとっては非常に難しいコンディションだったかと思います。前半を0-1のビハインドで終えましたが、雨にも負けず、風にも負けず「長野の誇り」「PRIDE OF NAGANO」を体現して見事逆転勝利を収めてくれました。
 前半から主導権はずっとパルセイロが握っていましたが、一度の決定機を決め切られてビハインドを背負ってしまいました。後半に入っても数回大きなピンチを迎えることがありましたが、GK大内がビックセーブで防ぎ切りビハインドを1点に抑えると、勢いに乗って森川が2得点を奪いました。2得点を奪った森川に注目が集まりがちですが、得点の直前に訪れた大きなピンチを無失点で乗り切った大内の貢献が決め手になったかと思います。

②基本システム

4-1-2-3vs4-2-3-1

 鹿児島ユナイテッドFCは予想通りの4-2-3-1(4-2-1-3)のシステムで試合に入り、パルセイロは登録ポジションとは異なる4-1-2-3(4-3-3)を採用して試合に入りました。パルセイロに関しては、登録ポジションと異なることにも注目ですが、両SBの配置が利き足と逆サイドになっていることにも注目です。WGはカットインさせたい時に右利きをLWGに、左利きをRWGにといった配置はよく見ますが、両SBの配置を利き足と反転させることは非常に珍しく感じました。単純に考えると外回りの迂回経路の設計が難しくなったように感じますが、この辺りのSBの起用法が与えた影響も確認していけたらと思います。

③前半

【攻撃】

 第4節福島ユナイテッドFC戦ほど顕著ではありませんが、ボール保持の時に水谷が1列上がり杉井が広がりすぎない擬似3バックになっていたかと思います。
 右サイドでは三田が大外のサイドレーンに張り、杉井が喜岡の脇でやや中央よりに立ち位置を取ります。杉井が右サイドに立つ左利きということもあり、喜岡からすると利き足に出すことが相手から遠い足に出すことになるので、普段よりボールを動かすタイミングが早くなっていたように感じます。ここのパス交換に対して坪川や佐藤が関わることで失わずにボールを動かすことができていました。
 一方、左サイドでは森川が大外のサイドレーンに立つと水谷が1つ内側のレーンに流れて中盤の1枚として立ち位置を取ります。こうすることで、水谷についていたDFも合わせて中央に入り込むことになり、森川-池ヶ谷のパスコースが浮かび上がってきます。そして、このパスコースを見せつつも相手の守備の矢印を見て、その矢印の逆をとることに長けた池ヶ谷のようなCBがいることは非常に貴重なことだと思いましたし、左サイドでの共存関係において必須な選手であると感じます。
 左右と問わず鹿児島ユナイテッドFCの4バックは、中央よりに立ち位置をとることは前節の分析からわかっていたため、4バックの脇のスペースをいかに有効に生かしていくかが得点奪取に向けての第一条件だったかと思います。前半は両SBが利き足と逆サイドに立つことで、相手のブロックの外側から逆サイドの4バックの脇に差し込むことが有効な攻撃の手段になっていたかと思います。

フィニッシュワークへの第一歩

 欲を言えば、内容からすればリードして終えてもおかしくない前半の完成度だったかと思います。相手がやらせてくれないスポーツなので全てがうまくいくことはないですが、アタッキングサードのもう1工夫がパルセイロをさらなるステージに連れていく鍵ではないかと思います。

【守備】

ビルドアップに対する構え方

 鹿児島ユナイテッドFCがボール保持をしたときは基本的にCB-ボランチ間のパスコースを切り、相手の前進ルートを外側に設定させます。予め前進ルートを制限することでIHやWGがSBに対して素早く圧力をかけることができる、シュタルフパルセイロお得意の守備ブロックの一つと言えます。
 初めて見せたのは開幕節のギラヴァンツ北九州戦でしたが、今節のファーストラインの設定は開幕節より高めに設定されていたかと思います。ネガティブトランジションで相手の4バックが閉じている状態で鹿児島ユナイテッドFCがビルドアップに入ろうとした時は、CFがボランチを確実に消してWGが外切りでDFに蹴らせる守備をしていました。鹿児島ユナイテッドFCが悪天候によりある程度ビルドアップを無理しないような姿勢であったことも重なってか、相手にとってやりたいことであるビルドアップからの熱い攻撃はやらせませんでした。
 唯一の失点となったシーンではFWのファーストライン、MFのセカンドラインのところで、展開されてはいけない守備が手薄な方向に2回も振られてしまったことが失点の原因であると考えます。MFラインのところでは佐藤が逆サイドへの展開を切れていたにも関わらず、股を抜けるというアンラッキーもあり展開されてしまいました。しかし、あの流れからでもフィニッシュワークを流れるように早く、正確に仕留められる鹿児島ユナイテッドFCの攻撃は見習うべきところではないでしょうか。

④後半

【攻撃】

 後半も攻撃の狙い目は相手4バックの脇のスペースであったかと思います。後半最初の交代枠として三田→デューク、東→藤森を起用したことがその第一目標をさらに狙いやすくしました。前半の終盤にもあった配置ですが、右利きを右サイドに左利きを左サイドに配置することで半自動的に相手の守備ブロックから遠い位置にボールを置くことができ、ロストすることが少なくなり、WGとしては仕掛けやすくなりました。
 この仕掛けやすいという心理的優位性も攻撃の活性化に繋がったと考えます。同点弾につながるスローインを獲得した三田の縦突破は前半から再三仕掛けられた心理的効果もあったのではないでしょうか。普段なら後方の上がりを待つような場面でも自信を持って仕掛けられたことで相手の嫌がる厚みのある攻撃を体現できていました。

逆転弾の場面

 逆転弾を奪った場面でも相手の4バックの特性をついての見事な得点でした。相手のWGがこちらのWGに対応していますが、そのカバーに入るSBの選手は中に絞り切っているため、縦に突破した後のカバーが少し遅れます。その遅れを見事に突くかのような鋭いデュークの突破から深い位置に侵入しクロス→ファーサイドの森川ヘッドというように得点を奪うことができました。やはり、1vs1で勝負させてしまえば9割相手を抜き去ることのできるデュークは脅威ですし、そのデュークのスペースをいかに整備するかも求められていくことかと思います。
 攻撃に関しては、1試合通して相手の4バックの構造の穴を突き続ける狙いが功を奏した印象を受けました。おそらくですが、パルセイロの強みと構造の穴がうまく噛み合って試合を有利に運べた部分もあるかと思うので、後半戦の鹿児島ユナイテッドFC戦はさらに難しい試合になることが想定されます。

【守備】

 悪天候による足元の不安定さを計算して、前半よりも後半の方が相手DFラインにかける圧力を強化したかと感じました。攻撃を深い位置まで攻め切るところまで完結できているため、鹿児島ユナイテッドFCとしてもポジティブトランジションの配置を整えるのに時間が必要でした。この時間を与えないために、配置が整っていない鹿児島ユナイテッドFCに対して早い段階から圧力をかけることで武器であるはずのビルドアップを奪いました。守備で相手の武器を奪い、攻撃で自分達の武器を使って攻め切るという理想的な試合運びができていたかと思います。
 ただ、後半に訪れた2つの被決定機の起点であるカウンター守備の場面では、攻撃している間に後方からリスクマネジメントをしていく必要があると言えるでしょう。攻撃をやり切ることが大前提だとしても、相手がいるスポーツなので相手に奪われた場合、相手の得点の可能性を極限まで低くさせる必要があります。

4-4-2に変更

 森川→秋山の交代によって4-1-2-3から4-4-2に変更しました。相手CBの自由は4-1-2-3に比べると奪えなくなりますが、鹿児島ユナイテッドFCとしても早く高い位置にボールを預けて攻め込んで来るようになったため、守備重点のシステム変更をする必要があったのでしょう。前からの圧力を弱めることはなく、山本-デュークの制限から機動力のあるSHの佐藤と藤森が球際で勝負するという守備網を固めます。鹿児島ユナイテッドFCがこれを嫌ってロングボールに逃げたとしても、中盤に秋山を配置したことで高さでも対抗できるようになり徹底して守備の安定を狙います。
 相手に決定的な場面を作らせない狙いでしたが、鹿児島ユナイテッドFCの精度も流石であり何度かゴール前に運ばれる場面も出てきました。ただ、守備から攻撃に移るカウンターもデューク&山本で完結できる攻撃の鋭さも備えられていたため、さらに得失点差が開いてもおかしくない試合だったかと思います。

⑤個人的MOM

 今節のMOMは2選手で悩みましたが、私が選ぶ今節のMOMは大内一生です。悩んだ選択肢のもう1選手はもちろん同点弾+逆転弾を決めた森川ですが、彼が得点を決める直前に大内がピンチを防いだ場面は勝利に大きく貢献した素晴らしいプレーだったと思います。その後もロメロフランク選手との1vs1をストップしたりとゴールに鍵をかける活躍でした。
 前回のホームゲームではいわきFCに対して4失点を喫するなど本人にとっても苦いパルセイロデビュー戦だったかと思いますが、その記憶を見事に払拭するシュートストップでチームを勝利に導いてくれました。試合終了間際のデュークへのパスがゴールに繋がれば攻守において文句なしの活躍でしたが、攻撃面での活躍も次節以降注目していってください!

まとめ

 ここまでGWの3連戦緒戦にあたる鹿児島ユナイテッドFCとの一戦を振り返ってきました。振り返っている最中も本当に勝利にふさわしい試合だったと感じています。チームとしての戦術的な狙いももちろんですが、大雨の中闘志を切らさずに逆転まで持っていったチームの底力をシーズン序盤で見られたことは今後にとっても大きな好材料になってくるのではないでしょうか。
 今季は7試合を終えて4試合で先制点を献上していますが、敗北になったのはわずかに1試合となっています。同点に追いつく力や逆転する力が今季のチームの強さの1つかと思いますが、見ている側としては前半からリードを奪ってある程度余裕を持った状態で応援したいものです(笑)。
 次節は3連戦の2試合目のアスルクラロ沼津戦になります。アウェイゲームなので、ホームゲームとはまた違った難しい戦いを強いられることになると思いますが、最後の笛が鳴るまで決して諦めず勝利を目指すチームを応援したいと思います!

 それでは、松本山雅FCvsアスルクラロ沼津のマッチレビューでお会いしましょう!

関連記事


よろしければサポートお願いします! アウェイ遠征費やスタグル購入費に使わせていただきます🦁