【映像制作のコツ】企画③ アイデアがなかなか浮かばない人へ~30分で企画が次々と生まれる方法~
映像作品を作る工程の中で、「企画」は最重要と言えます。
企画は、無から有を生む瞬間。アイデアとひらめき勝負。それは一握りの才能あふれる人にしかできない。そんな風に思っていませんか。
アイデアは、やり方一つで誰にでも次々と生み出すことができます。
そんな「アイデアと企画のひねり出し方」のコツをご紹介します。
良い企画を生み出す3つのステップ
学生たちに「企画を書く」という課題を出して、5回にわたってグループで考えてもらっています。
最初は、企画なんて書いたことない、考えたこともない、できるわけない、と思っていた学生たちが、5回の授業を終えると、決まって「誰にでもできるということが分かった」と感想を書いてきます。
そのやり方と、考え方のコツを3ステップで紹介します。
ステップ➀ グループでブレスト&落書き
ステップ② 企画の種を拾って組み合わせる
ステップ③ ニーズに合わせて仕上げる
それでは順に説明します。
ステップ➀ グループでブレスト&落書き
アイデアや企画を考える上で大切なのは、複数の人数でやることです。
どんなアイデアマンでも、一人でポンポンとアイデアが湧き上がってくるものではありません。
ところが、2人、3人、5人・・・と人数が増えれば増えるほど、出てくるアイデアの数は、3倍、10倍、50倍・・・と、幾何級数的に増えていきます。
それも、メンバーの全員がアイデアマンである必要はありません。
普通の感覚を持った平凡な人たちで良いのです。
では、平凡な人たちを数人集めて、どうすればアイデアが湧き、企画が生まれるのか、実践的に紹介します。
ブレストは質より量、結論を求めない
最初のアイデア出しを、ブレインストーミング【略してブレスト】と言います。
言葉の意味は「ブレイン=脳」を「ストーム=嵐」のようにかき回す、ということです。
やり方を説明しましょう。
数人揃ったら、まずファシリテーターを決めます。
そして企画のテーマを決めます。
ファシリテーターは、メンバーにテーマに関することを「何でもいいから」どんどん聞いていきます。
メンバーは「何でもいいから」思いついたことを言葉にしていきます。
このステップでは、質より量、内容よりスピードです。
何でもいいから、とは、裏返して言うと「結論やまとまった意見を求めない」ということです。
学生にアイデアを出せ、というと、よくある現象が、うーん、とうなって数分間、固まってしまうことです。
それはアイデア=結論あるいは良い意見、だと思っているからです。
このように、いきなり結論や良い意見を出そうと考え始めるのは、実は最も企画を立てる上で遠回りをしているのです。
ブレストでは、とにかく思いついたことをどんどん発します。
ブレストのルール
何でもありのブレストにも、ルールがあります。
それは
➀思いついたことを恥ずかしがらずに言う
②ほかの人の意見を絶対に否定しない
③悪のりOK、笑いもOK、寄り道OK。
です。
こんなことを言ったら馬鹿にされるかな、と思ってはいけません。
こんなことは言うまでもないことだ、と思ってはいけません。
とにかく思いついたら言う。
これが鉄則です。
そして、「思いつき」を言葉にしやすくするために、「否定しない」ことが大切です。
「それって平凡だよね」「そんなことは当たり前じゃない」
そんな風に言われたら、発言する気をなくしてしまいますよね。
「何でもいいから」ではなくなってしまいます。
むしろ、「それ面白いじゃん。さらにこんなこともできるんじゃない」などと、悪乗りして話を膨らませていきましょう。
また、言いやすい雰囲気を作るために、冗談と笑いは重要です。
しかめ面が並ぶ中で、良い企画は生まれません。
もし初めて集まるメンバーだったら、本題に入る前に、アイスブレイクのための雑談も必要です。
企画のための落書きは「落とさず書く」こと
ブレストを始める時にもう一つ重要で欠かせないことは、「書きとること」です。
ブレストを始める前に、全紙の模造紙など大きな紙か、白板を用意します。
そしてファシリテーターと同時に書記を決めておきます。
私は授業では、8人のメンバーに対し、ファシリテーター1人と書記を2人決めるようにしています。
書記が2人必要なのは、1人だと書くのが間に合わないからです。
書記は、メンバーの発言を漏れなく書きとっていきます。
複数のメンバーが「何でもいいから」どんどん発言するのを、漏れなく書きとるわけですから、1人で追いつくはずがありません。
もし追いついていたら、それはブレストがうまくいっていない証拠です。
30分ほどのブレストで、B全の模造紙2枚が文字でいっぱいになるくらいを目指しましょう。
きれいに書く必要はありません。
落書きのようで構いません。
ただし、この場合の「落書き」は「落とさずに書く」という意味です。
書き方は自由ですが、よく使われるのは「マインドマップ」と呼ばれるやり方です。
真ん中にテーマを書き、そこから連想される言葉をどんどん書きとって、関連性の高いモノ同士を線で結んでいきます。
真ん中のテーマから出発して、言葉が線でつながれて放射状に伸びていくイメージです。
ファシリテーターの質問のコツ
このブレスト&落書きで、キーになるのはファシリテーターの「聞く力」です。
初めてブレストに挑戦する学生たちにとって、一番ネックになるのはこのファシリテーターの「聞く力」不足です。
良いことを聞こうとか、意見を引き出そう、などと考え過ぎると、聞くスピードが落ちてしまいます。
他のメンバー同様、ファシリテーターの質問も、質より量なのです。
そこで、質問カードを作っておいて、迷ったら機械的にその中から選んで聞く、というやり方も効果的です。
質問カードの例
・○○って聞いてパッと思いつくことは?
・○○って好き?嫌い?
・なぜ好き?なぜ嫌い?
・どこが好き?どこが嫌い?
・どうやったら好きになる?
・それはなぜ?
・どうやって?
・誰がやったらいいと思う?どうやったらいいと思う?
・他には?もっとある?
質問の基本は、「好きか嫌いか」です。
メンバーが数人寄れば、一つのモノに対して、好きな人、嫌いな人、どちらでもない人、が出てきます。
それがブレストのスタート地点で良いと思います。
そこから、なぜ好きか、どうやったら好きになるか、と聞いていきます。
好きか嫌いか、は、コンテンツを見たり商品を消費したりする時の基本的な動機です。
より多くの好きと嫌い、そしてその理由を出し合うことで、世の中の「ニーズ」が浮かび上がってきます。
ステップ② 企画の種を拾って組み合わせる
ブレスト&落書きで、模造紙いっぱいに文字で埋め尽くされたところで、次のステップに入ります。
言葉の渦の中から、企画の種を拾うのです。
この時のコツは、「幾つかの言葉を組み合わせる」ということです。
新しい企画の秘訣は「組み合わせ」
企画に求められる重要な要素の一つが「新しさ」や「オリジナリティ」です。
ところが、これまで世の中に全くなかった、誰も思いつかないような「新しいアイデア」など、そんなに見つかるものでありません。
また、実は、そこまで斬新なアイデアというのは、実際にやってみると世の中から受け入れられにくい、つまり使えない企画であることが多いものです。
「新しい」けど「受け入れられる」という企画こそが、ヒットにつながります。
そうした企画の多くは、実は「平凡なアイデア」と「平凡なアイデア」を組み合わせて作られているのです。
そこでブレスト&落書きで作った模造紙を見つめ直してみましょう。
そこには、様々な人々のニーズや考えがバラバラに詰まっているはずです。
そしてその多くは、「平凡」なワードであるはずです。
というのも、「あまり考えずに思いつくまま」に出していたからです。
それでいいんです。
その平凡ワードと、少し離れたところに書かれている別の平凡ワードを組み合わせてみましょう。2つ、3つ、4つ、組み合わせてみましょう。
不思議と平凡な頭では思いつかなかった、意外な企画ができてきませんか?
リトル・チャロも平凡な企画の組み合わせ
私がかつて開発した「リトル・チャロ」の企画も、因数分解してみると、そうした平凡な企画の組み合わせでできています。
リトル・チャロは次のような性質を持っています。
➀英語教材
②アニメ
③犬が主人公
④ニューヨークが舞台
どれ一つとっても、一つだけでは「掃いて捨てるほど」「どこにでもある」「ありふれた」企画です。
英語教材にしてもアニメにしても、星の数ほどあります。
犬が主人公の映画だって、ニューヨークが舞台のドラマだって、ありふれた設定です。
ところが、「子犬がニューヨークで冒険するアニメを使った英語教材」となると、恐らくこれまで世の中になかった「新しい」企画になるわけです。
思いつくままに書き殴った模造紙の中には、組み合わせれば光る企画の種が無数にあるはずです。
色々な組み合わせのパターンを考えてみると、その中から「それって新しいかも」と思える企画のアイデアが飛び出してくると思います。
ステップ③ ニーズに合わせて仕上げる
こうして組み合わせの力で、新しい企画の種を幾つか作り、その中から「本物の企画」になりそうなものを選び、育てていきます。
この時に大切なのは、消費者目線、映像コンテンツで言えば「視聴者目線」です。
つまり見る人のニーズをきっちりと捉え、それに合わせて仕上げていくことです。
「良い企画の条件」の記事でも書きましたが、ニーズに合致していない企画は絶対に成功しません。
ターゲットになる人の「見たい映像」を作るという目線が必要です。
この段階になると、ステップ➀のブレストの段階と異なり、笑いやスピードは不要です。
むしろしっかりと調べて、考える必要があります。
この企画で生み出されるモノは、誰に向けたものなのか。
本当にこの企画は魅力的なのか。
特にターゲット層が、自分の属性と異なる場合は、調査や取材が必要です。
各種データを取り寄せることはもちろん、できればターゲット層にあたる人たちに、意見や気持ちを聞いてみることが必要です。
そして
➀企画のねらい(何を目指す企画なのか)
②企画の背景(なぜ今この企画が求められるのか)
③ターゲット(誰に向けた企画なのか)
④構成要素 (具体的にどのような内容なのか)
といったことを一つ一つ積み上げていって、企画書に仕立てていきます。
企画書の書き方については、別の記事で詳しく書きたいと思います。
まとめ
企画を立てるのは難しい、と思っている人の大半は、いきなり完成形の企画を思いつこうとする傾向にあります。
そんなことができる人などいませんし、そんな風に思いついた企画は、ほとんど使い物になりません。
この記事で紹介したように、➀まず複数のメンバーで思いつきを出し合い、②それらを組み合わせて新しいものを生み出し、③それをニーズに即して実現可能な形に整えていく、というステップが最も早く「良い企画」を生み出す道だと思います。
特に、➀の「思いつきをどんどん出す」「それを書きとる」というステップが、「何の意味があるの」と感じる人がいるのですが、意味はあります。
そして、意外と「こんな思いつきはあまり意味がなくて使えないけど・・・」くらいの感覚で出てきた言葉が、重要なキーワードに育つこともしばしばあります。
1人で悶々と悩むのではなく、まずはチームを組みましょう。
そして良い企画立案に向けて、笑いながら無駄話と落書きを始めてみてください。
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