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109:雨とストロベリームーン・イブ

・関東も梅雨入りをしたということで、朝からバケツをひっくり返したかの如く滝のような雨が降っていた。

・営業という仕事をしている自分はその日1日中外回りで、会社に戻った頃には17時を回ろうかというところだった。
・そこからPC作業を始めたので、退勤がかなり遅くなった。

***

・普段社会に対して唾を吐き、なにくそと思いながら仕事に取り掛かっているものの、意志が弱いので会社員としての業務はある程度は遂行している。
・家に帰るまでは「会社員」という仮面を被っているので、被っている間はやるべき奴隷業をこなす。

・無形商材を扱っている性質上、顧客と話すだけでは残念ながら仕事は完結しない。
・例えば資料や企画書・見積書などを作り顧客に展開したり、受注した業務は顧客からの要望をそこそこ噛み砕いた上で社内へ連携したりなどをしている。
・また法人間取引の矢面に立つ立場であるので、メール・電話などのコミュニケーションにも気を遣う。基本その日に来た連絡は、遅くともその日のうちには返す。

・存外真面目に取り掛かっている。
・今は飽きたが、少し前までは「営業とはかくあるべき」のようなものを勉強・研究し、実践していたくらいだ。

***

・雨だったので在宅勤務をしている人も多く、社内にはそこまで多くの人は出社していなかった。
・21時を回る頃には自分含め3人しか残っておらず、22時を過ぎたら2人だけになった。

・自分の勤め先は中小企業のクセに謎にグローバルなので、ベトナム人の先輩と2人で23時30分くらいまで過ごした。
・余談だが彼女は日本語が堪能すぎるので、なぜこんなちっぽけな企業で働いているのかわからない。世に出れば引く手数多だと思う。

・退勤時、チューリップの色・形をした可愛らしい傘を取り出した先輩と「雨止んでると良いね」といった会話をしながら、オフィスビルの扉を開けた。
・雨は止んでいたようで、良かった〜と思いながら「おつかれさまです」とそれぞれの帰路に着くための言葉を発した。

・すると突然先輩が「あ、月」と言いながら立ち止まったのでその視線の先を追ってみると、綺麗なお月さまが煌々と輝いていた。
・ストロベリームーンの前日ということで、満月に近い大きなお月さまだった。

・夕暮れまであんなにザーザーと雨が降っていたのに、帰る頃には雲が全て消えていた。

***

・少し明るい気分になりながら「良い週末を」と、今度こそ各々の帰路へ着いた。

・華のような金曜日であった。

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