日本酒処・長野県佐久市でのインバウンドビジネスコミュニケーションセミナー

こんにちは。弊社のお仕事には多言語コンサルティングがあります。
日本語以外の言葉を、企業や自治体でのサービス業務に生かす方法を提示するいわばコンサルティング業務であり啓発セミナーを実施しています。
ここ2年ほど、長野県佐久市という町でインバウンドビジネスコミュニケーションについての講演を重ねました。

長野県は冬はスキー、夏は軽井沢といった避暑地・別荘地として国内外に知られています。軽井沢は新幹線が止まりますし、原宿のような目抜き通りに多くの個性的な商店・食事処が並ぶショッピングストリートもあります。それに比べると佐久市というのは、正直観光地ではありません。しかし、ここには比類稀なる日本の文化があり、今後アフターコロナで、外国人観光客による日本へのツーリズムが復活したときには確実に人を寄せる魅力が詰まっています。

日本酒の宝庫

酒蔵ホテル20210323

日本酒といえば、新潟、灘、など名産地は数々ありますが、長野のお酒をすすめられたことは正直あまりありませんでした。しかし現地で、フレッシュな生のしかも大変な種類の酒を試飲したのですが、その香、のど越し、後味などに非常に驚きました。佐久市では、浅間山系の「超軟水」をもとに作られるお米でつくっています。蓼科系などのミネラル系のがっしりしたのど越しとはまったく別の「お米臭くない」「つんとしない」フレッシュさです。ワインでもないし、焼酎でもない、日本酒なんだけど、なんだろうこれは!?という味なのです。今まで飲んできたお酒の概念を打ち破るほどフレッシュな作り立ての「SAKE」が作られている町、佐久市。という人口およそ10万人の土地に13(!!)もの「酒蔵」があり、150年を超えるような歴史があったり、ほとんどは海外に輸出されて日本では飲めない商品があったり、東京など大都市には出荷されないものもあって、その「限定感」もかなりそそられました。SAKE、日本酒は日本で考えられているよりも世界的にはブームです。コロナ禍に入る前、外国人観光客のお目当ての一つが「酒を飲むこと」「和食をたのしむこと」でありました。おりしもオーガニックフードブームの中で、防腐剤というケミカルな物質が入っていない、純粋オーガニックな日本酒が、世界で大変人気なことを考えれば、潜在的な顧客はまだまだ未曾有にあるということです。
また、国際空港で売られている日本酒は残念ながらこうした地酒のフレッシュなものはなく、たいていはマスプロダクション、つまり大量生産されて出荷されているものであり、流通の「量」やマーケティングの手腕でしられることになったお酒が多く並びます。もちろんそれは間違いではないのですが、個性あふれる、しかもフレッシュなお酒の風味は、暖房が隅々にきいている免税売り場ではなかなか保てないのも実情。こうした地酒のすばらしさを伝えているアンバサダーは各地におり、たとえば、弊社のレイチェル・チャンなどは日本酒協会から認定された酒侍として活動しており、こうした努力が実を結ぶ日がくること、人々に多くのお酒の個性と風味のすばらしさ、防腐剤のないオーガニックな良さが伝わることを期待します。


外国人観光客が泊まれる酒蔵ホテル

日除け幕

実は全国でも珍しい酒蔵ホテルがこの佐久市で産まれました。

佐久市生まれでお酒をこよなく愛するお嬢様が、地元酒蔵さんとコラボして作った「酒蔵体験ホテル」です。このコロナ禍でもお客様の出足は上々。特に女性に人気がでています。シンプル&モダンな宿は、清潔で衛生的。余分な装飾はありませんが、焼杉手法の外壁や、日よけ幕、引き戸の入り口、和室にお布団など、ホテルというよりは旅館とペンションの間くらいの感じ。
長野版の澤の屋旅館でしょうか。サービスは特にありませんが、地元佐久でとれたお米を使った日本酒サーバー(このイタリアのワインサーバーを日本酒でつかっているのはこのホテルだけらしい)があり、夜になるとぼんやり窓の向こうに見える酒蔵をロビーで一杯やりながら眺めるのはちょっと特別な気分です。当然酒蔵体験もあり、昔は女人禁制だった酒蔵に、今は男女を問わず見せてもらえるという趣向です。

百聞は一見に如かずともいいますが、その工程がどのくらい大変なのか、そしてどのくらい愛情こめて酒が造られているのかを見ると、いやはや、頭が下がります。しかも日本のお酒はワインとちがって防腐剤が入っていません。そのため、日本のお酒、もっと知りたい知ってもらいたいという気持ちになるのは当然です。

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外国人観光客をお迎えするための酒蔵ホテルが無事ラウンチされ、商店やレストランなどが協力しあっている最中でおきたコロナ禍。それでも熱心に佐久の人々は勉強を重ねています。写真は酒蔵ホテルでの勉強会の様子。講師は弊社のIBCコンサルタントです。彼女自身は外国籍であり、日本に移住し就労している在留外国人経験者としての豊富な経験と知識があります。こうした外国人から私たちは、外からどう思われているのか学ぶ必要があります。その謙虚な姿勢はおもてなしの基本になります。

2年目を迎えたインバウンドコミュニケーションセミナーは、外国人観光客を一度も迎え入れたことがない商店でも必ず役にたつ内容。今の課題をみつめることは、ダイバーシティの未来への目的意識をはっきりさせます。

インバウンドビジネスはインバウンドツーリズムと直結しています。おりしもインバウンドツーリズムはイギリスなどワクチン接種の進む国をきっかけに再燃する準備が始まる予感です。さらに現時点(2021年4月)でアフターコロナにおける渡航希望先の調査によれば、アジア圏の人々の間で堂々1位はここ日本なのです。そして、欧米豪圏希望渡航の第2位は堂々日本なのです!(ちなみに1位はアメリカ。実はアメリカは世界有数の観光地)コロナが収束したのち、観光客はかならず日本にもどってきます。しかも、以前より、高額客、長期滞在客が増えるという調査結果も出ております。

当然ながらインバウンドビジネスコミュニケーションは日本の未来にとって大事なことであり、避けては通れないのです。


何故インバウンドビジネスが大事なのか

海外からの外国人観光客がレストランで食事をする、宿泊をする、商店で買い物をする・・・・こうしたことが実はどのくらいの影響を与えているかはあまりしられてないかもしれません。

数兆円規模のこのインバウンドビジネスは、企業経営を潤すだけではとどまらず、自治体にも栄養をあたえます。

具体的には8人の海外観光客が訪れますと、1人の居住者が増えたのと同じ程度の経済規模が生まれるのです。
少子高齢化社会を迎えた日本はそうそう子供が増える社会に戻ることはありません。そんな人口が減り続ける日本社会を支える切り札となるのは、外国人観光客相手のインバウンドビジネスです。インバウンドビジネスはある意味「輸出」です。日本にいながらにして、日本の食・文化・自然などを輸出する事業です。

海外観光客を日本全土でまんべんなく受け入れ、オーバーツーリズムを起こした京都や鎌倉などの観光客をもっと里山ツーリズムやアドベンチャーツーリズム、はたまたコンシャスツーリズム、サステナブルツーリズム、レジェネブルツーリズム、さらにはレスポンシブルツーリズムなどに呼びこみ、もっと日本の隠れた魅力をアピールする可能性が増えることは間違いありません。(最近のツーリズムについてはまた別の機会に書きます)

そうした観光の根幹は日本のおもてなしコミュニケーションです。
このコミュニケーションのノウハウは、世界のどこにも負けない日本の強みであったはずです。それを多言語に変換するだけで、さらに観光産業は世界のトップクラスにブラッシュアップする可能性を秘めています。それは施設の規模や、街の知名度に関わらず、一個人から、いますぐ始められるインバウンド対策です。本気で取り組めば必ずその町の人々はリピーターを増やし、地域通しの絆を深め、あたらしい街づくりに貢献する外国人を受け入れて発展していくことでしょう。

ただ、気になる調査結果もありました。外国人観光客が日本に期待しているのは、「清潔で衛生的・コロナ対策がちゃんとされているだろう」ということです。日本では勿論マスク着用率も高いのですが、入店時に消毒を求めたり、検温したり、アクリル板で隣の客との仕切りを作るという対策は講じている店舗と、そうでないところが散在しています。これは街や自治体で取り組んで、徹底的にどの店も対策を講じているようにしていかないと、一店舗でも不衛生であれば、その町の印象・日本での思い出の印象が崩れる危うさを秘めています。基本的な清潔さでは床や壁、トイレの衛生度で、課題のある店を数多く見受けるのが日本の現実です。観光客が来た時に、まずそうした清潔と衛生面での受け入れ態勢の整備をすすめ、既存の観光地、すでに外国人観光客が訪れてきた街以外の、地方への旅行、つまり「外国人による国内旅行」の発展につなげていってほしいものです。

そういえば、日本酒を作る工程で「米を磨く」という工程がありました。
この磨く、という言葉を日本語では「言葉を磨く」とも言いますね。
おもてなしの基本は磨き上げられた言葉です。笑顔だけでは人を満足させられないし、いざ有事のときにはお客様をお守りするとはできません。
互いの安全安心をしっかり守りながら、日本独特の文化や自然を楽しめる環境を、共につくっていけるようにしたいものです。


追記:やっぱりラジオが気になる

佐久市の岩村田というところには、「温泉」を用水のためにためている貯水池(仙禄湖)があるそうです。浅間の水が冷たすぎて農作物によくないからと昔の賢人が作られたそう。

その貯水池にはラジオのアンテナが引かれていて、地元住民の情報インフラを支えています。(ラジオのアンテナの接地線は水中だと性能があがる性質をいかしている)湖畔には空に高くそびえるアンテナがあるそうです。
この神々しい姿!
今度おとずれたら、一度見に行きたいと思います。

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