晴れの日も雨の日も#297 14番目の月
タイトルは言わずとしれたユーミンの名曲。初めて聞いたのは中学の時だ。
「つぎの夜から欠ける満月より14番目の月が一番すき」なんて、変なことを言うなあと当時は思っていた。一番キレイな満月が一番ええやん、と人の心の機微を知らない15歳の紅顔の少年は思っていたのだ。
満ち足りきってしまうと、それを失くすのがこわくなる。それはそうかもしれないが、なくさないように、無くならないように一生懸命頑張ったらええやん、とも思っていたような気もする。
が、その少年も人並みに年をとってきた。いろんなものを求めては手に入れたり、入れられなかったり。あるいは手にしたはずのものをなくしてしまったりという思いをたくさん経てきた今は、少し受け止めが変わっている。
満ち足りる前、満ち足りればどんなにステキだろうと夢見ている時が一番いい、というのは、ふむふむそうかもなあ、と思う。
これが1番目の月ではそうはいかない。やせっぽちの三日月では、いつ満月になれるのか、本当に満月になれるのか甚だ心許ない。そもそもガリガリ過ぎて全く満ち足りない。
10番目ぐらいになると、お、もうすぐ満月になれるかもと言う気がしてくる。
14番目になればもうほとんど満足できるレベルだ。でも終わりではない。まだもう一段いい状態が待っている。
なるほどなあ。
だいたい、月の満ち欠けならどれが14番目でどれが15番目かというのははっきりしているが、ひとのいとなみはそんな単純ではない。極端に言うと14番目だと思っていたものが実は既に15番目で、そこから先は細るだけ、なんてこともあってもおかしくない。反対に、まだ13番目ぐらいでも15番目だと思ってめっちゃ満足することも可能だろう。
余韻とか後味が大事だなあということを#151「岡本太郎と後味」で書いた。ゲップが出るほど食べすぎずに腹八分目がいいとも言う。行ききってしまわずに、一つ手前で止める。それが次に繋がったり、リピーターを生んだりするのだろう。
こうした話と14番目の月は通底する気がする。向こうのカベに「でん」しないと気が済まないタチの私としては、大いに反省すべきところだ。
「戦略の本質」という本を読んだ。池波正太郎や向田邦子の本を愛読している私にしては珍しい硬派の本だ。野中郁次郎先生を中心に、古今東西の戦史をひもとき、逆転について考察を深め、そこから「戦略」というものに迫ろうとしている名著だ。
中に、朝鮮戦争や第4次中東戦争の例が出され、攻め込みすぎると、兵站が伸び切って弱点になったり、優勢だったはずがかえって劣勢に陥る危険がある、という視点が示される。この、調子に乗ってやりすぎると好ましくない事態を招きかねないというのは、誠に慧眼だと思う。ほどほどとかバランスってやはり大事なんだなあと、いわば当たり前のことを改めて確認させて頂いた。
些事に神々は宿る、とか、四角い部屋を丸く掃くな、というのは好きな言葉なのだが、凡事徹底もほどほどにして、14番めの月で良しとする姿勢も大事だなあとよく思う。
今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之
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