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晴れの日も雨の日も#279 【創作SS】幸せの資格

「幸せになる資格ってあるのかしら」
トモちゃんが言った。
「幸せになるのに資格なんかないさ。
 誰でも幸せになれるよ。なっていいんだよ」
そうボクは答えたのだが、隣に座るトモちゃんは前を向いたまま答えない。ボクの言ったことなんか聞いていないかのようだ。ひょっとして自分のこと不幸せだって思ってるのかな?

トモちゃんはいわゆるいい大学を出て、いわゆる一流企業に就職。ルックスだってイケてるし、優しくておもしろい。会話もとっても上手で、全部持ってるのに。

「なんでそんなこと思うの?」
「ううん、なんとなく」

トモちゃんはなんとなく沈んだ表情のままだ。ひょっとして原因はボク?

「ボクのことでなんか不満を感じてる?」
勇気を出してそう聞いてみた。

「そうじゃないの。あなたにはとっても大事にしてもらっていると思ってるし感謝してるわ。ただ、私はそれに応えるだけのものをあなたに返してないんじゃないかなってふと思っちゃって。
そうやって『もらう』ばかりって幸せになる資格が無いんじゃないかしらって気がしたの」
「なんだ、そんなことか。ボクはトモちゃんがいるだけで、十分たくさんのものをトモちゃんからもらっているよ。
ボクは今すでにとっても幸せなんだよ」
「そう。だったらいいんだけど」

「トモちゃんは今どうなの?」
「私も幸せよ。でもこの先のことが気になるの。私には幸せになる資格があるのかしらって」
「トモちゃんは、ひょっとして、幸せってことを、たとえば勉強をして試験に合格するとか、頑張って練習を続けて試合に勝つとかってことと同じように考えてないかい?」
「どういうこと?」
「幸せはこの先にたどりつくゴールであって、それまでいろんなことに耐えたり我慢したり、苦労の末につかみとるものだとトモちゃんは思ってるのかな?むしろ大事なことは、いま幸せかどうかってことじゃないかってボクは思うんだ。
いまの幸せを毎日ずっと積み重ねていくこと。その過程そのものが幸せであって、今を犠牲にした先にあるものじゃないような気がするんだ。それは、今が良ければそれでいいという刹那主義的な感じとは少し違うんだけどね」
「そうね。確かにそうだわ。今が幸せだから、その幸せをなくしたくないって思ってしまってたみたい」

「じゃあもう一度聞くよ。幸せの資格ってなんだと思う?」
「そんなものないわ。幸せはその時その場で感じていくものなんだわ。幸せはいつも自分の心が決めるのよ。あなたが言うように、私がいろんなものを持っていたとしても、そうしたものをたくさん持つことが幸せの資格ってわけじゃないのよね。私が今どう感じているか、それだけなんだわ」

「そうだね。で、今、どうだい」
「わたし、あなたと一緒にいられてとってもしあわせ❤」

良かったねお二人さん。

街のあちこちでアジサイが見頃に。

今日も最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました♬ 長井 克之

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(続く

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