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ヴィエンチャンで飲んだフラットホワイト

いつでもコーヒーは、エンジンをかけてくれる。そして一緒にいる人との会話を生んでくれて、リラックスもさせてくれる。

もともと日本ではブラックコーヒーをいつも飲んでいたのだけど、ラオスは年中暑いので、なんだかカフェインにめっきり弱くなってしまった(水分補給が足りないだけかもしれないけど)。だから、ラテ系にするとマイルドになって飲みやすくて好きだった。

ある日の午後、首都ヴィエンチャンのカフェで日本人の友人とお茶をすることになった。まだ空は明るいけど午後の遅めの時間で、やはり太陽がじりじりと照る暑い日だったので、しっかり豆の風味がする濃いブラックコーヒーよりは、マイルドなものが飲みたい気分だった。
そんな時いつもなら迷わずカフェラテにするのだけど、メニューの上で視線をずらしていくと、見慣れない文字の並びがあった。

"Flat White"

フラットホワイト…?日本では見たことないなあ。
ホワイトってつくからミルクが入ってそうだしとりあえず飲んでみよう、とそれがなんなのか調べもせずに注文してみた。

そして店員さんが運んできてくれたのは、透明なカップに注がれたラテのようなもの。表面はラテアートで飾られている。
飲んでみると、まず柔らかいスチームミルクが口の中を優しく満たす。かと思ったら次の瞬間には、濃いめの力強いコーヒーがやってきた。それらは混じりあって、苦いのに優しい、ふしぎな感覚だった。
ちょっと気が強めな、ラテの妹分のようだ、と思った。

そしてすぐにフラットホワイトをgoogleで調べてみると、Wikipediaの説明が出てきた。

フラットホワイト(英: Flat white)はオーストラリアやニュージーランドで人気なエスプレッソベースのコーヒーである。

エスプレッソにきめ細やかに泡立てたスチームミルクを注ぎ、エスプレッソと牛乳がよく混ざり合った飲みやすいコーヒーである。カフェ・ラッテやカプチーノと比べるとフォームの量が少なく、エスプレッソ版のカフェ・オ・レとも言える。表面がクレマで覆われており一口目からエスプレッソが感じられるのが特徴である。(Wikipedia)

そうか、エスプレッソがベースだから、コーヒー部分がほろ苦いんだ。
その苦さをちゃんとミルクが包んでくれて、芳醇なんだけど優しい口当たりになっていた。

エスプレッソだけだったら、暑さでやられている身体にはちょっとパンチが強いけど、それをマイルドなミルクが包み込んでくれていることで、強さと優しさを兼ね備えたような、スッと懐に入ってくる魅力があった。

そしてオーストラリアやニュージーランドが発祥というのも意外だった。
コーヒーといえば、サードウェーブコーヒーなどのコーヒーのブームを常に生み出しているアメリカとか、エスプレッソのイタリアというイメージが強く、そこにはるか赤道の南、豪州の名前が出てきたのは新鮮だった。

そんな感じで、ヴィエンチャンでのカフェタイムのお供の選択肢に、フラットホワイトが加わった。(ヴィエンチャンの多くのカフェではフラットホワイトを扱っていた)

今思うと、フラットホワイトを飲む時は、心がおだやかな時だった。

1年のうちほとんどの期間35℃を超えるラオスでは、カフェに入ると喉がからからだから、アイスコーヒーとかアイスカフェラテを頼むことがほとんどだった。そもそもヴィエンチャンから離れた自分の街にはフラットホワイトはなく、普段仕事に集中したい時に飲むのは、カフェラテが多かった。

そんな中でフラットホワイトを選ぶ時は、本当にただ、リラックスがしたい時。一人でヴィエンチャンの街中を散歩していて、ちょっと休んで本を読もうかなって思った時とか。友達とただちょっとおしゃべりがしたくてカフェに入った時とか。
エスプレッソの苦味とミルクの優しさが絶妙な混じりあいで、いつもちょうどよい刺激と気持ちを前向きにしてくれる力があった。
フラットホワイトを飲み終わってカフェから出るころには、いつもメコン川に浮かぶ夕日が綺麗だった。

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先日、テレビでオーストラリアについて特集していて、オーストラリアのカフェ文化について触れていた。そこで「ラテやカプチーノよりクリーミーなフラットホワイトが人気」と言っていて、久しぶりにフラットホワイトという言葉を聞いた。
ああ、オーストラリアにはほんとうにフラットホワイトがあるんだ。
そこに映っていたメルボルンの街は賑やかで様々な文化が混じり合った、美しい街だった。
フラットホワイトも、かつてイギリス系植民地時代のなごりで紅茶文化だったところを、イタリア系移民がコーヒー文化を持ち込んだところから始まったそう。
いつか行ってみたいな、と思った。

それでもやっぱり、私にとってのフラットホワイトは、ブーゲンビリアのピンクが眩しい季節に、バイクやトゥクトゥクが行き交うセタティラート通りを眺めながらヴィエンチャンで飲んだ、あのフラットホワイトなんだと思う。

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ヴィエンチャンの「Coco&co」で飲んだフラットホワイト。お隣のLe Trio Coffeeの豆を使っていて美味しい。ちなみに見出しの画像のフラットホワイトは、同じセタティラート通りにある「TIT Kafe」のもの。

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これはさらに小さいカップで飲む"ピッコロラテ"(飲みかけでごめんなさい)。これもオーストラリア発祥のもの。ミルクが少ないのでよりエスプレッソの濃い味わいが楽しめる。ヴィエンチャンの「Naked Espresso」にて。奥にあるパトゥーサイをかたどった番号札が、ラオスらしくて可愛い。

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