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京都の青

先日京都に行ってきました。

兵庫の北部にいる友人のとこへ行く道すがら、立ち寄りました。
ここのところコロナ禍でも毎年京都に行っている。
行くほどまた来たいなぁという気持ちが増していく。

京都というと、関東勢は中学校の修学旅行先の定番である。
そして私は高校の修学旅行も京都だった。
高2の終わり、修学旅行で京都に行く半年前に、同じ部活の友人2人と夜行バスで京都に行った。2008年の夏。

あの時はほんとうに定番の場所、清水寺、地主神社、龍安寺、伏見稲荷神社などを巡った。暑くて汗をかきながらまわったけれど、今の夏ほど暑かったのかは思い出せない。
修学旅行でしっかり予習をしてから「班」で行くのもいいけれど、自分たちで好きなように好きな場所を巡り、そこの歴史や建物の美を感じ取る。そういうのもいいなぁ。なんて思ったような気がする。

そしてひとつ、思い出深い喫茶がある。
その時に行った喫茶「ソワレ」。
当時はSNSとかもなくて、ガイドブックに載っていたのだろう。老舗の喫茶。だけどなんだか薄暗くて入っていいのかな、ドキドキしながら入った記憶がある。そこに広がるのは青い世界。音楽はなくて、海の中のような、青が広がっていた。
そこの名物ゼリーポンチは、宝石のようにきらきらした何色もの四角いゼリーが入っている。なんだか忘れられない、異世界に飛んで行ったような時間だった。

時は流れ、2020年から偶然毎年京都に行くようになった。
夫は大学時代を京都で過ごしており、一緒に京都へ行くと、さまざまな思い出をつぶやくように話してくれる。
パートナーが人生のいっときを過ごした場所って、なんだか私も勝手に思い入れが入ってしまうのかもしれない。

そして今年の夏も、ふと思い立つように、友人のところへ行く前に1日京都へ行こう!と思った。

この1日はほんとうに好きなように過ごそう、と思っていた。

夜行バスでAM6:00に京都駅に到着し、そこからバス1日券を購入して行きたいところを巡った。

今回の拠点は百万遍。京都大学のすぐ裏手のあたりのエリアで、落ち着いていて過ごしやすかった。

地元の喫茶で朝のコーヒー1杯とホットドッグをいただき、行動を開始。

まず行きたかったのは、「一澤信三郎帆布」。
ラオス人の友人が先日日本に来た時に立ち寄ったそうで、このシンプルだけどきめ細やかなものづくりが良いと、おすすめしてくれた。
鞄はシンプルだけど帆布が丈夫なので、何十年も使えそうなお品だった。
そして帆布の多様なカラー展開もワクワクさせてくれた。
悩んだのだけど初期からの商品だという「道具入れ」のトートの青ねず色を購入。ブルーグレーが綺麗で、夫とも兼用できたらいいなと思った。

そして次なる目的は「恵文社 一乗寺店」。
様々な分野ごとにセレクトされた本が並んでいる。文学、自然、民藝、手仕事など・・・。生活に取り入れてみたい雑貨も並べてあった。
こんなお店が近所にあったらいいな、と思うお店だった。
本との偶然の出会いを誘ってくれるような場所。こんな本屋さんこそが、本屋さんが存在してくれる大きな意味なんだろうなと思った。
ギャラリースペースで偶然出会ったのは画材店月光荘の8Bえんぴつ。
月光荘は東京・銀座のお店だけど、ここで出会えてよかったと思った。服のかたち、私の頭の中をいっしょに線にしてくれるえんぴつと出会って購入した。

8月の京都はとにかく暑い。
つい張り切って歩き回っていると、午後には熱中症ぎみでぐったりしていた。
今こそ行きたかったあのお店に行こう、と思って向かったのは、前述した喫茶「ソワレ」だった。
いまやSNSなどでも頻繁に取り上げられていて人気店。
3組ほど並んでいた。けれど15分ほどで入れた。

15年前にみた、あの青の世界。
よく見ると壁にかかっているのは、東郷青児さんの妖艶で美しい女性の絵たち。
私の席の壁にかかっていたのは、まさに店名の「ソワレ(=素敵な夜)」にふさわしい、「夜会の女」というブラックドレスをまとった美しい貴婦人の絵だった。
その絵の前の席は、東郷青児さんと創業者の方がよく談笑されていた席だそう。
そこから見る店内は美しかった。
そして同じく15年にいただいたゼリーポンチは、輝く宝石のようなゼリーに胸が躍り、暑さにソーダが沁みわたり、とてもおいしかった。

当時の日記に「京都は夢の国だ」と書いてあった。
いまの私にとっても、伝統と現代の文化が融合し、美しい染織文化が生まれた地であるこの京都は、いつでも胸が躍る場所だ。

今年の夏は、毎日とてもいい天気で、京都の美しい建物とぱりっと澄み渡った青い空がとても印象的だった。
ソワレの空間に広がる神秘的で妖艶な青と、自然がうみだすどこまでも明るい青。京都の青は、私の心の奥まで水彩絵の具のように染み込んでいった。


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