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雪あられ

東京で、朝から雪が降り続く今日。
幸いにも外での打ち合わせもなく、急を要する仕事もない。
こんな日は、「ちょっと特別な」家事をしようと思い立つ。洗濯や料理でなく、ふだんは手の届かない家のこと。
初めは食器棚の皿の整理をしようと試みたが、キッチンに立つと底冷えの寒さで、すぐに断念した。しかし何か、ふだんとは違うことをしたい。

そうだ、「あられ」を揚げようと決めた。
10日ほど前に鏡開きをしてカビを取り、何日か天日干しにした餅があった。
名古屋帰省があったり、日中出かけることが多く(出かける前に油を使いたくない)、揚げる機会を逃していた。

砕いて小さな塊にした餅は、いい具合にカラカラに乾いている。
ほどよく熱した油に投入したら、ぱあっと広がり、膨らんでいった。
時折、ぷすっ、と弾けながら。

外はしんしんと雪が降っている。

揚げたてを口に放り込むと、サクサクして軽い歯ざわり。とても香ばしい。
あまりに美味しくて「やばいやばい」と呟きつつ、伸ばす手を自重して、少しだけ塩を振った。

さらりとした塩は、富良野の雪を思い出させる。
キッチンの脇の、小さなガラス窓をのぞく。
塊で降る東京の雪は、ぷっくりしていて、このあられみたいだな、と思う。

「雪あられ」と名付けよう。
ひとりひらめき、微笑んだ。
食べ過ぎないようにしなければ。

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