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オリジナル脚本だからこそ

日本のテレビドラマは、小説や漫画原作による「脚色」が圧倒的に多い。
わたしはオリジナルこそが脚本家の真髄であり「脚本」だと思っている。

かつて原作のあるサスペンスドラマを多く書いていたわたしは、まったくゼロから自分の力でストーリーを構築する「オリジナル」を書きたかった。だからこそ、脚本家の力量が問われるオリジナルの難しさを、「書く側」からも実感している。とくに日本では、オリジナルを書いてもプロデューサーや監督に何度も直され、決定稿になるまでに「脚本家のオリジナリティ」が失われることも少なくない。良くも悪くも。

だから日本のドラマを観ると、「型にはめられた窮屈な脚本」「展開が読めてしまう脚本」が多く、裏の事情が透けてみえてしまう。
そのためか最近は、日本の連ドラをほとんど観なくなってしまった。
海外ドラマ、とくに北欧のサスペンスドラマに魅せられてデンマーク語を習い始めたことは、HPにも書いた。

韓国ドラマも、韓流ブームの火付け役になった「冬のソナタ」以降、かなりのドラマを観てきたと自負している。日本と同じように、韓国にも「こうしなければ」という「定型」や「決められた設定」など、窮屈な縛りはあるんだろうな、と思いながら、楽しく観ているのは、韓国ドラマの主流は「オリジナル」だからだ。最近は原作のあるドラマも出てきてはいるが、恋愛ものやコメディだけでなく、重厚なサスペンスも「オリジナル」で作り上げる。しかも、1話60分強(CMなし)で16話もあり、見ごたえも十分だ。

なかでもわたしは最近、韓国ケーブル局tvNのドラマに魅了されている。

始まりは、『シグナル』(2016年)だった。
現在と過去を「古い無線機」がつなぐサスペンスで、事件を解決するために奔走するだけでなく、それぞれの時代に生きる刑事たちの思いも交錯する。
こんなに素晴らしいドラマを、韓国の、しかもケーブル局が作っていることに愕然とした。日本ではCS衛星放送で初放送され、終わるのが残念だったほど。構成や展開だけでなく、セリフも胸をうたれた。
http://www.youtube.com/embed/P18suCETYXI?rel=0&autoplay=1

そして今、昨夜から録りためていた1話から8話まで一気に観てしまい、唸っているのが『秘密の森』だ(衛星放送で現在8話まで。NETFLIXでは全話配信中なので、続きはこちらで観ようと思っている。とにかく早く観たい)。
不正が蔓延る検察庁が舞台。感情を失くした冷徹な検察官と、人情味あふれる女性刑事が、巨悪に立ち向かう。

『秘密の森』のスゴいところは、新人の脚本家が書いているということだ。
日本の現場なら「心の声は書くな」「わかりづらいから説明するシーンを入れろ」などいろいろ言われそうな脚本だが、だからこそ「力」があって面白い。何よりディティールが細かく描かれていて、検察内部と所轄警察の動向をリアリティをもって「オリジナル」で書いている。その力量がとてつもない。
主演はチョ・スンウ(映画「マラソン」NHKでも放送された時代劇『馬医』)と、ぺ・ドゥナ(是枝監督『空気人形』)。この二人の演技もとてもいい。

こうしたサスペンスだけでなく、ほかにも良作は多い。
恋愛ドラマ『トッケビ』(韓国では『鬼』のことを『トッケビ」というらしい)も、設定などの発想が秀逸で素晴らしかった。

日本ももっと「オリジナル」を。
新人にももっとチャンスを与えてほしいと、強く願う。

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