見出し画像

【料理エッセイ】近所にくら寿司ができたので、昼からすしざんまいをキメてきた

 近所にくら寿司ができた。

 ちょうど、最近、くら寿司についての動画を見たところだったので、どんなもんなのだろうと気になった。

 なんでも、いま、くら寿司がアメリカで大成功しているらしい。株価は底値の10倍になり、現在、全米に47店舗を展開。グローバルな寿司チェーン店になりつつある。

 なんでも、コロナ禍で外食産業が大打撃を受け、大手のチェーン店から放出された凄腕経営者を大量に囲い込んだことが功を奏したらしい。また、鮮度を守るカバーの特許技術など、日本より厳しいナマモノに対する衛生基準をクリアするための技術を持っていたことも強みとなり、物価高に負けず、高い利益率を実現するに至ったという。

 もともと、くら寿司は好きだったけれど、電車に乗って食べにいくほどではなかったので、何年も行っていなかった。でも、世界を席巻しようとしているのであれば、久々に食べてみたいなぁと心は躍った。

 そんな矢先、近所でくら寿司オープンの知らせが入ったのである。早速、オープン初日に行ってきた。

 12:00開店で、12:00に店内へ入ったのだけど、受付の番号札を取ろうとしたら、ディスプレイに約1時間待ちと書いてあったので、けっこうビビった。

 いやいや、嘘でしょー。

 戸惑っていたら、店員さんがやってきて、カウンター席は空いていると教えてくれた。なんでも、案内に手間取っていて、待ち時間の見積りが多く出ているとのことだった。

 実際、5分も経たずに順番が回ってきた。ホッと胸をなでおろしつつ、案内されるまま、店内を歩いていった。新築の匂いがした。床も、壁も、なにもかも。さすがにすべてがピカピカに輝いていた。

 カウンターに座った。見上げたところに注文用のタッチパネルがあった。最初、びっくらポンで遊ぶか確認された。寿司を5皿食べると抽選ゲームが始まり、当たると景品がもらえるやつだ。

 驚くべきは、1皿につき10円追加で払うと当選確率が増やせるとあったこと。

利益率を上げるための工夫であり、なんとなく、アメリカらしさを感じてワクワクした。

 他にも、びっくらポンの景品が必ずもらえるお寿司セットなども売っていた。6巻で900円(地域によるみたい)。通常、1皿2巻で150円(これまた地域によるみたい)なので、2倍の値段設定。これこそ、わたしが期待していたビジネス戦略であり、見たいものが見れたという満足度でいっぱいになった。客としては財布が痛いけれど……笑

 とはいえ、寿司を食べねば始まらない。ひとまず、マグロとかアボカドサーモンとか、食べたいものを一通り注文してみた。それからビールとあら汁も。

 まず、ビールがピューっと素早く、特別レーンで流れてきた。

 でも、お寿司は全然来なかった。混んでいるのか、タッチパネルにはご注文の品が届くまで約10分かかると書いてあった。

 ふむふむ。なんだか、ここにも課金要素がありそうだなぁと興味が湧いた。いずれ、ディズニーランドのファストパスみたいに、注文の品を優先的に届けてもらうための課金サービスが始まるはず。くら寿司、まだまだ伸びる可能性にあふれていやがる!

 ただ、いまはそんな機能ないわけなので、このままでは約10分もビールを持て余すことになりそうだった。というわけで、結局、流れているお寿司を取るしかなかった。

 なんだか、してやられた気分だった。別に回転寿司なんだし、流れているお皿を取ればいいのだけれど、そうとわかっていたら、さっきあんなに注文してはいなかったのに……。

 案の定、やがて、注文したお寿司が続々届き、狭いカウンターはすしざんまいと化してしまった。

 なお、どれもちゃんと美味しかった。子どもの頃、くら寿司にはよくいったけれど、こんなに美味しかった記憶はない。普通、逆だよね。ノスタルジーマジックが効いて、あの頃は美味しかったのに……ってなりがちだけど、明らかにいまの方が美味しかった。

 お刺身の盛り合わせも頼んだけれど、見るからにネタがよかった。

 単純な話、値上げしたからなんだと思う。かつて、デフレだったとは言え、1皿100円の提供にこだわり、その後も115円の低価格帯を維持し続けていたくら寿司だけど、昨年、いよいよ都心部の低価格帯を150円に変更した。

 もちろん、往年のファンから残念がる声も聞こえたが、これだけなにもかもが値上げしている世の中で、安さをキープするにはなにかを犠牲にしなくてはいけない。苦渋の決断だったのだろう。

 そのことをくら寿司はアメリカで成功し、どこよりも理解しているはずだ。例えば、テキサスでは1皿3.2ドル(2024年3日24日時点で約480円)で提供し、これが安いと評判になっている。もはや、2000年代日本の感覚を捨てなくてはいけないと痛感せずにはいられないはず。

 久々のくら寿司は客単価を上げる工夫に満ち満ちていた。やっぱり、びっくらポンを回したいから、わたしも10皿食べてしまった。本当は7皿ぐらいでお腹はいっぱいだったけれど、せっかくだしとシャリ少なめで注文していた。

 加えて、ラーメンも評判だったよなぁと手を出してしまったせいで、やっちまったなぁって感じになった。でも、まあ、ビールを飲んでいるし、〆には最高だったんだけど。 

 結果、合計は3,790円。 

 今回はあえて値段を気にせず、普通にくら寿司を楽しんでみたのだが、体感、かつてと比べて1.5倍ぐらいの支払額になっている気がした。

 あるいは久々のくら寿司で、わたしがテンションを上げ過ぎたのか笑

 ちなみにびっくらポンは当たらなかった。しょぼくれていたら、帰り際、店員さんがオープン初日なのでアンケートにお答え頂けたら、びっくらポンの景品を差し上げますと言ってくれた。無論、答えるに決まっていた。

 そして、パンダのよくわからないグッズを頂いた。

 かわいい。でも、これはいったいなにに使うものなのだろう? しかし、こういうアイテムひとつで客単価を上げられると考えたら、尊敬の念が湧いてくる。

 ちいかわグッズだったり、浜田のチャーハンだったり、くら寿司はコラボにも余念がない。そうやって利益率を上げていくことで、ネタの原価率を下げない経営が可能になるのかもしれない。

 できれば、加えて、それが従業員に還元されるといいけどなぁと外部の人間としては期待してしまう。

 2022年、いわゆるスシローの「寿司ペロ事件」を筆頭に、はま寿司の営業秘密がかっぱ寿司に流出する事件が起きたり、くら寿司のブラック企業っぷりが週刊誌に報じられたり、回転寿司チェーンにとっては実に不穏な一年だった。

 なるほど、外食チェーンの普遍的な課題として、人件費をいかに抑えるかという問題は避けられない。しかし、一方で働き方改革が求められる昨今。労働者を使い捨てる選択はそもそも存在しない。

 一応、くら寿司はIT技術の導入によって、人手を減らす工夫に余念がないと標榜している。それでも、人がやらなきゃいけない仕事は残り続けるだろう。労働環境を向上し、ぜひとも汚名を払拭すべく努めてもらいたい。さもなくば、我々はくら寿司での食事を素直に喜ぶことができなくなってしまうから。

 回転寿司のアトラクション性はなんだかんだで唯一無二。他に替えが効かない以上、本気で、ワールドワイドに天下を取れるコンテンツになり得るとわたしは思う。

 そんな中、くら寿司は頭ひとつ抜けた印象がある。そんないまだからこそ、くら寿司が改めて面白い。




マシュマロやっています。
匿名のメッセージを大募集!
質問、感想、お悩み、
最近あった幸せなこと、
社会に対する憤り、エトセトラ。
ぜひぜひ気楽にお寄せください!!


ブルースカイ始めました。
いまはひたすら孤独で退屈なので、やっている方いたら、ぜひぜひこちらでもつながりましょう!

この記事が参加している募集

#最近の学び

181,541件

#おいしいお店

17,591件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?