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【時事考察】生成AIを巧みに使ったYouTube動画を通して、創作活動にAIを取り入れる可能性について考えてみる
OpenAIがchat gptを公開した2022年11月をきっかけに生成AIはあっという間に普及し、文章、画像、動画、音楽と様々なジャンルで活用が模索されてきた。事務的な書類作成はこれで十分だけど、プログラムを書かせるとエラーが起きたときの修正が大変だったり、著作権侵害を巡る問題があったり、賛否両論、巻き起こっている。
時期尚早の声がある一方で、あまりに大きな技術革新なので、世界中の企業が出遅れないために生成AI技術の開発・研究に力を入れている。もはや止められない動きとなっている。日本もデジタル大臣となった平将明衆議院議員が東大松尾研の意見を聞き入れ、早くからAI企業に門戸を広げてきた。Google出身が日本でSakana AI社を設立したのはその一例で、国内発のユニコーン企業がこれからいくつも生まれるかもしれないという期待感が高まっている。
さて、そんな生成AIだけど、実際扱ってみると使い道がけっこう難しい。一応、noteにもAIアシスタント機能があるけど、ぶっちゃけ、わたしは使いこなせていない。
というのも、AIアシスタントを用いるとHOW TO系の記事だったり、既存の事実をまとめる系の記事だったり、正味の話、わざわざ読まなくてもいいような文章しか作り出せないのである。ただ、これはAIアシスタントが悪いのではなく、ひとえにわたしが目的が創作であり、常に、新しい情報を生み出そうとしていることから生じているミスマッチなんだと思う。
改めて、生成AIの仕組みをおさらいすると、以下の通りになる。これは過去記事『【時事考察】Chat GPTは賄賂に弱いらしい! だとしたら、「やる気」の正体が判明するかも?』を書くときにまとめたもの。
①Chat GPTはネット上の言説を材料に自動学習している。
②質問に対して、答えになる可能性の高い言葉を確率に基づいてアウトプットしている。
③そのため、ネット上のどこかで誰かが交わしたやりとりがChat GPTの反応を構成している。つまり、ベタになりがちということ。
従って、どうしたって見たことがあるようなものしか作り出せないのである。当然、AI画像はパクりと指摘されやすく、当然のように批判が集まってしまう。逆に言えば、過去の判例をもとにした仕事では役に立ちやすく、弁護士や医者など、高度な知識を必要とする職業ほど重宝するのではないかと言われているのはそのためだろう。
じゃあ、創作にAIは向いていないのか?
一見するとそういう単純な結論が導き出せそうだけど、どうやらそうでもないらしいぞという発見が最近あった。と言うのも、YouTubeでたまたま流れてきた動画が生成AIを巧みに使っていて、こういう方法なら可能性があるぞと気づかされたのだ。
今回、その中でも特に際立っている3つのチャンネルを紹介しつつ、創作活動にAIを取り入れる可能性について考えてみる。
奇譚師にんぎょ
まず、チャンネル登録者数30万人を超える奇譚師にんぎょさんのショート動画に衝撃を受けた。生成AIで作った画像を挿絵のように表示しながら、ナレーションでゾクッとくるフィクションを淡々と語っていくスタイルなのだが、虚実皮膜が見事に表現されている。
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奇譚師にんぎょさんのようにコンテンツの主体となるフィクション部分はオリジナルで、それを支える画像を生成AIで作り出すと、文章を書くことに特化したクリエイターも個人レベルで動画展開できるという利点がある。リーチできる人口を増やすという意味ではめちゃくちゃ有効な手段と言えるはず。
遷移圏見聞録
次に遷移圏見聞録さんの旅行Vlog風のフィクション。遷移圏という架空の異世界で生活している様子をいかにもYouTuberっぽく、テロップやBGMを入れてほのぼの記録している。この世界観の作り込みと出演者のテンションが徹底していて、本当にそういう場所があるんじゃないかと錯覚させられる没入感が魅力的。
こういう実写版の異世界ものは、従来、相当な予算が必要だった。にもかかわらず、生成AIと合成技術を用い、かつ、YouTubeに投稿される定番の動画スタイルを踏襲することで、映画並みのスペクタクルを作り出すことに成功している。
ファンタジーなどを書かれている方は舞台となる世界観を頭の中でかなり細かく作り込まれていると思うので、遷移圏見聞録さんのやり方を取り入れることで、コンテンツの価値を爆上げすることができるかもしれない。名作『ハリー・ポッター』も映画化されたことで裾野が一気に広がったわけで、想像を実写化したときの力は偉大である。もちろん、技術力は必要だけど、同じようなことが個人レベルでできるようになったというのは凄い話だ。
jugem
最後にjugemさんの音楽動画。これはどこまでがAIでどこまでが作者のオリジナルなのか、マジでわからない。平沢進みたいなサウンドと歌詞で、常人の頭ではどういう仕組みで作り出しているのかサッパリ。ということは予想不可能なコンテンツなわけで、むしろ生成AIじゃないのかもしれない。やたら耳に残り、繰り返し聞いてしまう。
なお、映像は明らかにAI。ウルトラマンや仮面ライダーの敵役みたいな化け物のCGがキモ可愛い。
あるときから動画の冒頭に「ここからの視聴は心身に重大な影響を及ぼす恐れがあります」という断り書きが加わるようになったのだけど、それがあながち嘘とも言えない仕上がりなのは素晴らしい。視聴するドラッグといった印象。
なんとなく歌詞はオリジナルだと思うので、音楽とMVを生成AIで作り出しているとしたら、詩を書く人たちにとって、自分の作品を歌にするハードルがぐっと下がったと言えるかもしれない。
以上、個人的にハマっている生成AIを巧みに使ったYouTubeチャンネルである。それらを通して、創作活動にAIを取り入れる可能性を考えてみたが、生成AIを用いれば、メディアミックスがかなり容易になると結論づけられるだろう。
現状は不気味なテイストの作品が多いけれど、それは生成AIが作り出す画像に未だ違和感が含まれているからと推定される。このあたりは技術の発展によって、おそらく、どんどん自然な仕上がりになっていくはず。そうなれば、多種多様なジャンルのクリエイターが使えるようになるのではなかろうか。
ただ、同時に、美男美女を作り出す生成AIも発展を遂げ、実際にCMで使われるなどしているのだけど、それらはなんとなく既視感があり、真偽はわからないまでもタレントの写真を学習データに使っているんじゃないかという疑問は残る。仮にそうだとしたら、あまり気持ちのいい話ではない。
そう考えると現実の人物では代替できない不気味なコンテンツの方が精神的に受容しやすいような気もする。このあたり、まだ法的なルールが整っていないけれど、少なくともフィクションとわかる形で架空の世界を作り出す使い方なら問題はないだろう。だとすると、やはりファンタジーとの親和性が高いと言える。
とにもかくにも生成AIの発展は止まらない。わたしたちはそれをただぼーっと眺めているのではなく、どう活用できるか、探っていかなくてはいけない。そのためには次から次へと登場してくる新しいコンテンツを楽しんでいくことが重要だ。
まあ、そんな大義名分を抜きにしたって、新しいコンテンツを見ていくことは普通に面白いんだけどね。
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