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長い時を経て読んだ本は…<クライマーズ・ハイ>

クライマーズ・ハイ 著者:横山秀夫さん

「文章の技巧というより、要はモノを見る眼の深度なのだと思う」

文庫本の解説で後藤正治さんはこのように述べている。
著者である横山秀夫さんへの最高の賛辞ではないだろうか。

私は2003年に刊行された時から本書を知っていたがなかなか手に取ることはなかった。
日航ジャンボ機墜落という大惨事を舞台にした作品は生々しい描写があるのではないかと思い、正直怖かった。
悲しみ、悔しさがまだ胸の中に広がっているのに読むことによって再び大きな渦となっていくのではないかと。

しかしながら、日航の全権デスクを任された悠木の自己と他者への闘いを読み進めると、次に悠木はどんな行動を取るのだろうと興味が湧き、身構えていた力が抜けていった。

社内間での派閥や部署間での対立、息子との距離を取った関係、そして同じ新聞社で働く友人が巻き込まれた真相に迫っていく。理不尽なこともたくさんある中で思いをぶつけ、記者魂を貫いていく姿勢に惹きつけられるのだ。

真実を、中立を、ギリギリまで模索して実行する男。

強さと弱さをすべてさらけ出して見せてくれた悠木の人生。
この人生を知ると、前に進むしかないだろう。

文春文庫


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