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今日のジャズ: 12月16&18日、1954年@ニューヨーク

Dec. 16 & 18, 1954 “Lullaby of Birdland”
by Sarah Vaughan, Clifford Brown, Jimmy Jones, Roy Haynes etc conducted by Ernie Wilkins at NYC for EmArcy (Sarah Vaughan)

ボーカルのサラボーンの印象的なスキャットから始まるこの歌は、マンハッタンにある老舗ジャズクラブ、「バードランド」に捧げられた、著名ジャズピアニストのジョージシアリングによる作曲。

モダンジャズ創始者、チャーリーパーカーのニックネームを冠した同クラブは、パーカー存命中の 1949年に設立され、引越しや倒産の紆余曲折を経ながら今でもマンハッタンで営業中。

オリジナル店舗は1965年に閉店
1986年に再開、1996年からシアター
ディストリクトにある現店舗

その間にパーカー、ベイシー、コルトレーン等の大物ミュージシャンが演奏、ライブ録音を遺している。この演奏がヒットしたことで同曲がジャズスタンダード化した。そんなことから知名度が高く、様々な曲でその名が引用されている。

先ず、U2の"Angel of Harlem”

Birdland on 53, the streets sounds like a symphony...

事実としては52

次は、Us3の代表曲"Cantaloop"。アートブレイキーの「バードランドの夜」のアナウンスメントからの引用。

Ladies and gentlemen, as you know, we have something special down here at Birdland this evening

Us3の二作目は"Broadway & 52nd"(1997)という名前

レイチャールズの名曲、"What'd I Say"

See the girl with the red dress on, She can do the Birdland all night long....

ご興味ある方は10月20日紹介曲をご覧ください

サラが特徴的なハスキーボイスを巧みに操るところが聴きどころで、2:14から巧みで豊かな表現力を持ったスキャットによる楽器との掛け合いが愉しい。その掛け合いの後半、2:36からは、ブレイキーと共に同クラブで名ライブ録音を遺している夭折した天才トランペッター、クリフォードブラウンが登場する。

楽器を自在に操り、滑らかな歌心あるメロディーを奏でる非の打ち所の無い天才、ブラウンには技巧的に敵わないため「同じ土俵で勝負せずに独自路線を開拓する」という、その後のマイルスの常に変化し続けるユニークな音楽的方向性を形作った、という説があることも頷ける。

曲の終焉に向けて3:32からのメロディーを追いかけるように間に入る粋な伴奏のアレンジも印象深い。

そして終始、スネアドラムのメリハリでグルーブを形作っているのは、ロイヘインズによるドラム。本演奏に良く耳を傾けて聴いた後、こちらの名演も聴いてみてください。共にブラシによる演奏で、ヘインズならではのスイングの共通項が見出せると思います。

さて、バードランド創設者の一人に関する、ジョンレノンを巻き込んだ興味深いストーリーは、こちらのサラによる別の紹介曲をご覧ください。

そのバードランドから徒歩約12分の距離にあった五番街のFine Sound Studio(旧WMGM、「クールの誕生」も収録)で本作が録音されているので、サラはバードランドに立ち寄って、その思いを胸にスタジオで歌っているのかもしれない。

スタジオのあった住所、711, 5th Avenueの
建物は、最近までコカコーラ所有だった

最後に、そのスタジオの後継、そのバードランドから徒歩10分の57丁目、現ルメリディアンホテルの場所にあったFine Recording Ballroomスタジオでの、ヘインズと同じ清音派ドラマー、シェリーマンによるキレの良い作品をお楽しみください。

若かりし頃、バードランドでタバコ売りとして働きながら、ジャズに耳を傾けていたという、先日天に召されたカーラブレイについても今後触れてみたいと思います。

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