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ジャズ記念日: 9月20&21日、1989年@パリ

Sep. 20 & 21, 1989 “Theme For Ernie”
by Steve Khun, Miroslav Vitous & Aldo Romano at Ferber Station Studio, Paris, France for Owl (Oceans in the Sky)

秋の夜長に通しで聴きたくなる、しっぽりと心に寄り添ってくれる名曲の名演揃いのアルバムシリーズの第二弾。第一弾はこちら。

Owlレーベルの本拠地、パリでのトリオ録音。欧州はジャズ低迷期の80年代でも根強い人気があるためか、電化の波に乗らない貴重なアコースティックジャズを欧州拠点のレーベルはコンスタントに送り出していく。

リーダーのピアノがアメリカ人のスティーブキューン、ベースがチェコ人のミロスラフビトウス、ドラムがイタリア人のアルドロマーノという欧州寄りの組み合わせ。

同じ欧州でもクリアな音質の第一弾のECMに対して、本作は落ち着いた雰囲気と重厚感があり、ベースの弦やボディ、シンバルの鳴りと響き方を比べるとその違いが良く分かる。独特のしっとりとした雰囲気は、パリ名門スタジオの九月の空気感ならでは、なのかも。

場所はパリ20区、1973年からの歴史がある

この曲は、41年前に録音されたコルトレーンの名盤『ソウルトレーン』での名演が際立っているが、これにオマージュする様に倣い心酔したように落ち着きのあるキューンの演奏も素晴らしい。

加えてベースのビトウスのさり気無い伴奏も、意を汲み取ったメロディー優先のソロも心に沁みる。コルトレーンが気張らずにリラックスした状態でのバラードは、とても上手いし、味わい深く、その最たる例がこの曲の元バージョン。それはコルトレーンと同年生まれながら、その録音の前年に31歳で亡くなったアルトサックス奏者、Ernie Henryに捧げる曲だからと察する。

そうした名演があり、何年経っても色褪せること無く、飽きられずにミュージシャンの心を惹きつけて、引き継がれるのがスタンダード化する重要な要因の一つ。

本アルバムは、80年代のアコースティックジャズ作品としては高音質盤で、個人的にレファレンス音源としても活用している。トリオのバランス、ベースのボディの鳴りの深さと、ドラムによるブラシを撫でるように叩く姿が目に浮かぶシンバルの響きとその振動を如何に長く再現出来るか、がオーディオの実力と特性を浮き彫りにしてくれる。

本アルバムのタイトル曲は、キューンの自作で、長年に亘って演奏し続けている名曲。ECMでのアメリカ人トリオによる北欧オスロでの演奏は、こちらをどうぞ。これもまた高音質盤となっている。

Owlレーベルの以下、通称「赤ペト」アルバムジャケット等のデザインを90枚近く手掛けているBernard Amiardは、ブルーノートのリードマイルスやECMのバーバラヴォユルシュと同じ位置付けのOwlを代表するデザイナーと言えそう。作風は何処となく昭和なノスタルジーが感じられる。

その、バーバラヴォユルシュの個性的なECMジャケットの作品に興味を持たれた方は、こちらからご覧ください。

名盤『ソウルトレーン』からの激しい子守唄は、こちらをどうぞ。

最後に、ビトウスのしびれるベースに惹かれた方は、こちらの名演もどうぞ。

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