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大アジア思想活劇ーー仏教が結んだ、もうひとつの近代史

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教談師・野口復堂、神智学協会・オルコット大佐、スリランカ人仏教徒ダルマパーラ、そして田中智学などなど、十九世紀から二十世紀の正史、秘史を彩る人物たちがアジアを股にかけ疾駆する近代…
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2023年9月の記事一覧

36 冷遇された最後の来日 汎アーリア主義の叫び|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

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ダルマパーラへの冷遇

大正二(一九一三)年四月、ダルマパーラは四回目の来日を果たした。彼にとって最後の日本滞在となったが、前三回とは大きくその様相を異にしていた。彼は日本の仏教界からほとんど無視された。

日本の仏教新聞における報道も一概に冷淡で、甚だしきは「この度の(ダルマパーラの)来朝に関しては、仏教徒中誰一人として歓迎する者な」い理由として、仏跡復興のための資金集めに関するダルマパーラの

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37 その後のダルマパーラ 1915年セイロン暴動、サールナートでの出家と死|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

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セイロン暴動

ダルマパーラの最後の来日から二年後の一九一五(大正四)年は、一八一五年にセイロン最後のキャンディ王朝がイギリスによって滅ぼされてから百周年にあたり、仏教雑誌である『大菩提雑誌』誌上にも獅子をあしらったランカーの国旗、民族意識の覚醒を呼びかける論説や詩が掲載された*68。この年のウェーサーカ祭の最中に起きたイスラム教徒とシンハラ仏教徒の衝突事件(後述)を発端として勃発した大暴動は、

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