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かわいいおじさんの生態(2)

前回 → かわいいおじさんの生態(1)


加えて、入戸屋先生は「かわいい」の日本的特徴にも言及している。

ある文化において、特定の生物学的反応が注目されるのは、それを許容したり重視したりする価値観があるからである。
日本において「かわいい」文化が発展・普及した原因として、ここでは「甘え」とよばれる愛されることへの期待と、「縮み志向」とよばれる小さいものを愛する価値観に注目したい。
「甘え」とは、周囲からの容認や愛を期待する行動や欲求である。「甘え」の視点からすると、海外(特に英語圏)におけるベビースキーマの研究は表面的である。
ベビースキーマは、保護・養育反応を触発される刺激なので、そこには「強い保護者→弱い幼児」という一方向性しか想定されない。しかし、「甘え」の概念になじんだ日本人は、保護の対象となる幼児の側にも感情移入することができる。そうすることで、観察者が対象者を保護するという表面的な関係性だけでなく、観察者自身も他の誰かに保護されている/されてきたという関係性が意識に上り、かわいいと思う自分とかわいいと思われる自分からなる重層的な構造が生まれる。


引用が長くなってしまった。「縮み方向」に関しては割愛させていただく。


この「甘え」という関係性は、「かわいい」と言われるおじさんたちと、彼らを「かわいい」と言う人たちの関係性にぴったりと当てはまるのではないか。おじさんを「かわいい〜」という人たちは、単純におじさんを「かわいい」と思ってるのではなく、その裏にも上にも横にも真正面にも色々なところで成り立つ「重層的な構造」によっての「かわいい」を生み出す。


「かわいい」おじさんブームはいつまで続くのだろうか。これからより盛り上がるのか、はたまた衰退するのか、新たな「かわいい」が生まれるのか。わたしには正直見当がつかない。しかし、新たな「かわいい」ブームを生み出せる人が、この社会の全てを俯瞰し掌握するのだろうな、と思う。


参考文献
入戸野宏(2009)「”かわいい”に対する行動学的アプローチ」,広島大学大学院総合科学研究科紀要,4(19-35)


ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回のnoteに関して、「それは違うだろ」とか「それはこうじゃない?」とか色々コメントしていただけたら嬉しいです!☺️

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