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クリエイティブマネジメントのススメ3

何故、TV広告が“当たるも八卦当たらぬも八卦”なのでしょうか?

広告は、まるで おみくじを引くかのような願掛け扱い した
タイトルですが、
これ!多くのメーカーの広告・宣伝担当者は一様に感じていること
ではないでしょうか?
広告会社にとっては、なんてこと言うのだ!
我々はクライアント(メーカー)の言うとおりの広告の企画を
ご提案し喜ばれている!と逆に、お叱りを受けそうですが、
でもメーカーはそう思っているのは間違いのないことなのです。

メーカーと広告会社の広告に対する捉え方の違い
メーカーは、いわゆる良い広告を作りたいと思っていますが、
それは単純に言葉上の良い広告ということで、
本当は販売に貢献する広告を意味して“良い広告”と言っています。
既にこの点で、広告会社とメーカーの広告に対する見方・考え方が
異なっています。
メーカーにとっての広告は、販売を促進する武器として位置づけられ、
メーカーにお勤めの方であれば、疑う余地の無い事だと思います。
しかし、広告会社にとっての広告は、お客様から依頼された仕事です。
だから冷静に広告の“広く告げる”と言う点に焦点が当てられます。
勿論、広告会社のクリエーターもメーカーが販売を向上させるために
広告を活用することは百も承知のことですが、
でも彼らは販売の数字を上げることを約束することが出来ませんから
あくまでも広告の機能を大前提に、その範囲内で追求するだけです。
でも結局は、メーカーの求める広告は広く告げた後に、
お客様の心が動き購買行動を促し、販売向上に繋げることを
望む現実は今でも変わりません。
これだけみても、メーカーと広告会社との間に、広告というものに対する
埋まらない深~い溝があるのです。

プレゼンテーションの場の葛藤

自分自身が若い頃は、広告会社から提案される広告の企画は、当然、
販売の支援としての機能が考慮されているものであると思っていましたが
新製品であれ、ロングラン商品であれ、外す広告が何度もありました。
しかし、選択しているのはメーカーなので、最終的には販売の結果を
広告会社に押しつけることは出来ません。
どうしたら外さない広告になるのかな~と答えの出ない
歯がゆい疑問・質問を企業内クリエーターとして抱え続けていました。

時を経て、自分が判断する立場になってから行っていることは、
広告のプレゼンテーションの場で、説明される企画案に対して、
凝視することなく、ぼーっと眺めるようにしています。
「お客様の頭の中に何が残るかな~」と・・・漠然と思考します。
決して、“これで売れるのか?”といった視点では見ていません。
可能な限り、お客様がTVCMを見るだろう状況・状態に近い感覚に
なろうと思い、しているということです。
また、企画案が面白いのか?とかは全く関係ありません。
企画で面白いのは、映像にすると絶対と言っていいほど、
面白くなくなるのです。
あくまでも、その時のプランナーの企画案の説明が面白いのです。
最終的に映像で面白くなるのは技が必要です。
と言う事で、広告のプレゼンテーションの場は、
滅茶苦茶、悩む瞬間でもあります。
もっと他の案を見たいと、わがままを言うことも出来ますが、
何度もプレゼンテーションを重ねることが出来ないので、
最終的には選択しなければなりません。
まさに清水の舞台から飛び降りる感覚であり、
おみくじで何が出るのか願を掛けて祈ることに似ていると思います。
そのメーカーの願いは、
大ヒットCMを望んでいるかのように思われますが
決して大ヒットCMを望んでいるわけではないということです。
(もしかしたら言葉でそう言うかもしれませんが・・・本気でもない)
勿論、販売が好調なことは、それはそれでいいのですが、
想定外なヒットCMにより当初予定より売れすぎるのも
次年度の計画を厳しいモノにしてしまうので、
計画どおりに着実に少しずつ販売が増加することを望んでいます。
着実に成長するということは、その商品ブランドも着実に地肩を
強めていることを意味し、
さらに未来の成長を予測することが出来るようになるからです。
販売の数字もマーケッターとしてはマネジメントしたいところでしょう。

確実な神頼みとは?

では、広告を“当たるも八卦当たらぬも八卦”にしないためには
何をすれば良いのでしょうか?
広告はオンエアしてみなければ答えが出ないのが今の現実・・・
それを変えるために、オンエア前に作ったTVCMを調査する会社も
あるようですが・・・私の経験からは、お客様が評論家目線になりやすく
なにが伝わっているのかの確認にはなりそうですが、充分にお客様の
行動の予測を映し出すまでに至っていないといった印象があります。
根本的には、
広告が、お客様に広く告げることが最終の目的になっていることから、
お客様の行動に変化を与えることに最終目的を変えればいいのですが、
おそらく、それまでコミットして、それで引き受けてくれる広告会社が
あるのでしょうか?
デジタル広告の世界では、ABテストなど行って販売の実績の良い
広告を選択したりしていますが、それとて一つの結果を基にしていて
地上波の広告は制作費コストも高額だし、出演タレントの意向も
絡んで思うようにならない側面があり、そう簡単に
出来ることではありません。
このことは、どの様に考えても、一長一短で出来ることではありません。
広告会社から積極的に提案があるとも考えにくい。
やはり、メーカーが腰据えて、じっくりと広告の企画の選択眼を
高めていくことで広告会社との相互の関係性を進化させていくしかない
のではないかと考えます。
「良い企画が出てこないんだよな~」と言っているようでは、
いつまでたっても出てこないでしょう。
広告は、なんだかんだいってもメーカーのモノです。
多くのTVCMはメーカーの商品名とエンドカットでは企業名も
発信されます。
広告会社と四つに組めるように、メーカーサイドに、
広告の企画・クリエイティブをマネジメントするスタンスが作られると
もっと深くまでクリエイティブとしての話をすることが出来ると思いますが
残念ながら現在の多くのメーカーはその様に考えていないし
その様な体制が出来ていないように感じてなりません。
もし、その関係性を築くことができれば、きっと売りを作れるTVCMの
確率が高まってくると考えられますが、いかがでしょうか?

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