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僕がパートナービザ(配偶者ビザ)申請を急いだ理由【ビザの話2】

オーストラリアでパートナービザを申請すると決めたのが数年前。それから少ししてパートナーとの同棲をスタートした僕は、申請条件の一つである「1年以上の同棲」が実現する時期を待ってビザを申請すればOK、と考えていた。

ところが、思いもよらない事情から、僕は予定より早くビザを申請することになった。数年前の話だが、今のビザ申請と変わらない点も多いので参考のために書いておこうと思う。

Photo by Alex wong on Unsplash

パートナービザ申請に至った経緯はこちら。

年々厳しくなるオーストラリアのビザ事情

オーストラリアでは法律改正がよく行われる。時代に合わせてフレキシブルという良い面もある一方、どの政党が政権を取るかで法律が大幅に変わって振り回されるという悪しき側面もある。

2021年現在、政権の中心的役割を担うオーストラリア自由党(Liberal party)は、リベラルとは名ばかりの中道右派、保守政党だ。保守政権は移民に厳しく、ざっくりというと、新たな移民を制限することで失業率の高さが改善できるというのがその主張だ(実際は人手不足で移民を必要としている産業分野も多い)。

そんな背景があり、最近オーストラリアのビザに関する法律は、移民目線で見ると「改悪」されることが多い。パートナービザもその対象だ。

毎年、「来年発給するパートナービザの数は◯◯件」と制限され、溢れた件数は翌年以降に持ち越しされているようだ。しかし冷静に考えると、パートナービザはカップルのためのビザ。数を制限したところで結婚や事実婚をする人が減るわけでもなし、オーストラリアで共に生活できなくなるカップルもいるしで、パートナービザ申請者にとってはなはだ迷惑な話だ。

それでも政府が移民の流入数、とりわけ永住につながる可能性のあるビザを制限する背景には、永住ビザ保持者もその対象となる社会保障費の増加を抑えたいという狙いに加え、移民反対の保守派の支持をキープする思惑もあるように見える。

パートナービザの新しいルール

そこへきて、パートナービザに今後、新しい申請ルールが加わることになった。2021年現在までに発表されているのは以下の二つだ。

1. パートナービザ申請の前に「スポンサーの審査」を行う。審査結果が出るまで、ビザ申請は不可。審査は1年ほどかかる。

2. パートナービザ申請の条件に「英語力」を加える。テストで必要点数を取った、あるいは所定の時間数を勉強した証明が必要で、それがないと申請不可。

この場合スポンサーとは、ビザ申請者のパートナー、つまり市民権か永住ビザを持っている人のこと。僕のケースでいえば、僕のパートナーのことだ。
僕がビザ申請を考え始めた時点(2018年)では、 1 の条件が「遠からず必須になる」ことが発表されていた。法改正は既に済み、問題はそれがいつ施行されるか。その時点で、日程は何も発表されていなかった。

しかし、施行日、つまり条件が有効になる日が来れば、それまで想定していたようにただビザ申請手続きをすることができなくなる。スポンサー審査を待つ1年の間に、僕の学生ビザは切れ、オーストラリアにいられなくなるのでパートナーと離れ離れで暮らすことになる。

明日にも変更が実施されるかもしれない状況で、ルール変更前にビザ申請が果たしてできるだろうか?絶望的な気持ちになった僕と対照的に、パートナーは「少しでも早く準備すれば、施行前に間に合うかも」と前向きだった。

申請条件のために予定を繰り上げた

パートナービザ申請ルールの変更前に申請ができるように、僕らはいくつかの予定を前倒しにすることを決めた。

一つは、同棲の開始時期。物件や2人のスケジュールの都合で決めていた日程より、3カ月繰り上げた。予定が変わって目が回る忙しさだったが、一緒に住み始めたことでビザ関連の手続きや相談も進めやすくなったので、結果的に良かったと思っている。

もう一つは、ディファクト(事実婚)の証明手続き。当初は、「同棲を始めて1年くらい経ったら、ビザ申請の直前にディファクトの手続きもすればいいだろう」と呑気に考えていた。しかしパートナービザ申請は用意する書類の量も多く、全てを同時期には揃えられない。何をいつ用意するか書き出してみたら、できるものは早く着手したほうが良いということになり、一緒に住み始めて1年経たないうちにディファクトの証明書を取った。

ビザ申請日までの予定を組んだ

日本の戸籍謄本の写し、警察証明など、必要な書類の一部は取り寄せを依頼してから数カ月を要する。さらに、同棲を始めた年の後半には前々から決めていた海外旅行の予定もあり、忙しくなることは間違いなかったので、事前にビザ申請までの予定を組んでおくことにした。

仮で申請日を定め、そこまでに全ての書類が揃うようにするには、◯カ月前にこれを依頼する、この書類は◯月半ばまでに欲しい、といったように逆算してリストにしていく。ついでに仕事や旅行の予定も加味して、「申請日の5カ月前には準備に着手しよう」ということになった。

番狂わせだけど役立った新たな情報

「いつか施行されるパートナービザ申請ルールの変更(スポンサー審査の導入)」が、2019年中に始まる可能性が高い、という情報をくれたのは、知り合いの法律家だった。それを聞いたのは2019年も既に折り返しに入った頃。

2019年内に、僕らの同棲期間はまだ1年に満たない。それでも、おかしなルール改正がなされることを考えたら、他の書類を万全に揃えて、年内に申請しよう、と2人の間で次第に意見が固まった。

申請日を決め直し、先に作っていた必要書類リストを見直すと、もう準備に着手しないと間に合わないことがわかった。一部の書類は、正直なところもう間に合わないことが確定。ただ、パートナービザ申請では後から追加書類のアップロードが可能なので、無理なものは後から、しかし可能な限り早く、という方針に切り替えた。

ビザは厳格な手続きであるため、万が一にも書類や手続き方法に不備・不足があって申請が却下されるということを避けたかった。そのため、早く、しかし慎重に、というのが僕らのやるべきタスクの条件だった。

申請まで残り数カ月、仕事や学校の合間を縫って、シドニーの日本領事館やNSW州政府のサービス窓口などを駆け回る日々が始まった。

結局、施行はいつ…?

2019年からは大規模なブッシュファイヤー(森林火災)、2020年からはパンデミックと、オーストラリアも災難続きだ。その影響もあるのかわからないが、上述の二つの「新しい申請ルール」は、2021年11月現在のところ、なんとまだ施行されていない。

なぜ、と思うかもしれないが、予定通りには運ばないのがオーストラリアという国なのだ。

一度は「1」の施行が実施されそうな気配があったが、政府から「システム改変が間に合っていないので延期」といったアナウンスがあった(それ以降、2021年現在は何のアップデートもないまま)。とにもかくにも、オーストラリアのビザ申請には最新情報の更新やニュースとのにらめっこが必須だ。さもないと、古い情報に基づいて誤った手続きをして失敗しかねない、と思っている。

僕のケースは自力でパートナービザ申請をしたが、プロのビザエージェント会社に依頼して、有料で手続きをサポートしてもらう方法もある。有資格のプロは移民法に詳しく、政府から最新情報のアップデートも得ているので、申請者は心配事を減らすことができる。

ビザ申請を急いでよかったもう一つの事情

オーストラリアは日本より物価の高い国だ。家賃は日本の3倍くらいで、賃金も2〜3倍といったところか。当然、ビザ申請の手数料も高いのだ。

僕がパートナービザを申請した2019年時点で、手数料は約7800豪ドル、日本円で約62万円。学生ビザやワーキングホリデービザはもっと安いのだが、それでも年々少しずつ値上がりしている。パートナービザに至っては「約10年前は2000豪ドルくらいだった」という話も聞いたことがあるし、年に数百ドル(数万円)ずつ上がるので、申請を待てば待つほどコストがかかる計算になる。

そんなわけで、可能な範囲で少しでも申請日を早くするというのは、金銭面でも優しい効果があった。とはいえ、7800豪ドルは決して安い買い物ではなかったが。

この投稿を含め、ビザについては全て僕個人の当時の経験や感想を書いているので、最新情報は必ず政府の公式サイトで確認を。


◆パートナービザの種類、申請にかかる費用や時間の話はこちら。


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