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男と女

君が掴んでくれたこの手を
振りほどいたのは、僕の方だ。

「大丈夫、頑張ろうよ。ね、一緒にさ。」

そう言って、君が僕の手を握った時。
とてつもなく、惨めな気持ちになったんだ。

大人気ない。男らしくもない。おチョコよりも小さい人の器だと、僕自身が思う。

八つ当たりだった。優しさに甘えた。

「人生、順風満帆なお前には分からないよ。」

そう言った時に、視界の隅で見えてしまった君の目を、僕は一生忘れないだろう。

どうすればよかったのかな。
もう頑張れない僕が、あの時なんて答えたら正解だったんだろうか。

ゆっくりと僕の手を離した君は、どんな顔をしていたんだろう。
臆病者の僕は、君のブラウスのボタンの数をただ数えていただけだったから。
君が涙をこらえていたことになんて、気づけるはずもなかったんだ。

「ごめんね…」

こんな理不尽さえ受け入れてしまう君は、そう言ってゆっくりと席を立ち、僕を残して去ってしまった。

明日になったら、いつもの様に君から電話をかけてきてくれるかな。
そうしたら、きっとまた2人で笑い合えるよね。

そんな期待をしてしまう。
男とは、どこまでも愚かな生き物だ。

この数分後には、女はとても清々しい気持ちで明日からの日々を思い、晴れた空を見上げていたというのに。

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