焼きそばATM【ショートショートnote_37/創作】
家内が私を追求するので、仕方なく、日曜日の夜に投稿するための、ショートショートの創作活動を、細々としている。
ショートショートノートカードゲームを使い、お題を家族に出してもらう。それをテーマに410字以内で、書く。
今回は、家内に、予めスマホのスロットアプリで選択していた以下の5枚から、お題を設定してもらった。
では、次女のお題から。
では、本編、「焼きそばATM」、410字以内を、どうぞ。
☆ ☆ ☆
優の実家は、焼きそばが売りの中華料理屋だった。子煩悩な父母と、多くの兄弟姉妹。賑やかだが、裕福ではなかった。
優には家族みんなで富裕にゆったり暮らすという夢があり。自ら弁護士を目指した。
文字通り刻苦勉励して司法試験にパスし、有名弁護士事務所に入所。憧れの一部上場企業の顧問弁護士となり、日夜、激務に勤しんだ。
45を過ぎた頃のある日、仕事帰りに銀行に立ち寄り、ATMでお金をおろした。
その時、ふと、焼きそばの臭いがしたのだ。何年も忘れていた、美味しかった父の焼きそばを思い出した。
脳裏に、様々なことが走馬灯のように巡り、ひとりでに涙が溢れて止まらなかった。
優は、幸せとは何かを、その日から自問し始め、半年後、数々の難題を整理し、周囲を説得し切った上で刑事事件専門の部署を事務所に立ち上げた。
そして、生涯現役を貫き、数々の冤罪事件の真相究明を果たし、逆転勝訴を手中に収めた。
今は、故郷のお墓で、家族と一緒に、静かに眠っている。
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