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クリスマスプレゼント

保育園のときの話だ。

私の通っていた保育園は、ミッション系の保育園だけあって、クリスマスの行事を盛大にやるところだった。クリスマスに限らず、そういう行事を、丁寧に、ひとつひとつ、盛大にやるのがその保育園の流儀だった。

だが、我が家は面白い家庭で。サンタクロースは親なんだから、手紙にあんまり無理な要求を書かないようにと、母は、最初から言っていた。

そして母は、こうも、言った。保育園のクリスマスプレゼントも、結局親が買うんだから、無理なことは手紙に書かないでね。サンタは、親なんだからね。

そして、念には念を入れて、保育園で先生に渡すサンタさんへの手紙の中身は、事前に母からの検閲があった。



心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

まるで、夢のない話だな。



うむ。



私には、5歳年上の兄がいる。この兄が、また、なかなか面白い兄で。私に、いろいろと知恵づけして遊ぶのが好きだった。

あるクリスマスが近くなった日、私に、こう言った。

「サンタさんのプレゼント、家とか、車って、書いて、先生に出したら?」


それをこっそり聞いていた母が、また、言う。

「あかん、あかん、親が買うねんから。」


その年は、結局は、控えめなプレゼントを書いた。

また、その翌年のこと。保育園のサンタさんへの手紙を母に検閲されて。それで、書く内容を決めて手紙を出した。書いたのは、こうだ。

船のプラモデルが欲しい。


だが。クリスマス会の当日。サンタさんは、戦車のプラモデルをくれた。そして、先生が私に、わざわざ告げてくれた。

サンタさん、船のプラモデルは、探せなかったみたい。


…………。


私は、その頃から、大人は平気で嘘をつくことを知っていた。嘘にも、罪な嘘と、そうでない嘘があり。そのどちらをつくかは、その大人の都合によって変わる。そういう事実を、あたりまえに受け入れていた。


結局プラモデルは、兄が作り。私は、その完成品を眺める。

そして兄は、言うのだ。

「これは、俺とコジの、ふたりのもんやで。」

さしずめ、兄が、やっぱり戦車のプラモデルにしようと、母に進言したのだろう。そして、手紙の中の船から、戦車に、すげ変わった。



夜、ソファーで、家内にこの話をしたら、こう、言われた。

良いじゃない。みかちゃん(注1)は、そういう教育をして。現実をコジくんに早めに教えたのよ。


私は、この歳になり。でもサンタさんは、実在するのだと思っている。それは、人の心の中に、確かにいる。優しさという名の、サンタさんだ。クリスマスの夜には、特別な格好をする。


マッサージをすると、家内は、上機嫌になる。

家内が上機嫌だと、我が家は、明るくて平和である。


だから。


これで、いいのだ。



(注1)みかちゃんとは、私の母の、あだ名である。我が家は、親も子も、祖父母も、みんな、呼び捨てかあだ名で呼ぶことになっている。



この記事は、西尾さんの、この企画に乗った記事である。

面白い記事になっているかどうかは、わからないが。


心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、つぶやいた。

それは、読んでくれた人が決めること。


うむ。

メリークリスマス。


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