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フードロス・ハンター

カバー画像を、もう少しきちんと撮っておくべきだったと、ちょっと後悔している。何の気なしに、アリバイとして撮った写真である。この、「しろもちたい焼き」で記事を書こうとは、思っていなかったのだ。当初は。

10月31日だった。長女の自宅に行ったのは。その時、家内が冷蔵庫の中身を、いつものように確認していた。そして、消費期限切れのものを取り出し、私に聞いてくる。

捨てようと思うけれど、あなたの鼻で、確認できる?

私は、麻薬犬ではない。だが、賞味期限切れのものの見極め、目利きは、恐らくかなりの精度で、できる。

私は、

オッケー!

と軽く返事をして、クンクンと鼻を利かせ、目視も駆使して、件の品を確認した。

すると即座に結論が出た。

十分に、食べられる。

私は、家内に、念のため、聞いてみた。

食べても、叱られない?

家内は、声を出さずに指で丸を作ってOKサインを出した。

私は、躊躇なく食べた。ただ、一抹の不安は、長女に、どうして食べたの?などと、詰問され、言われのない泥棒扱いをされることだった。

11月2日になり、家内が長女と、帰宅の定時連絡時に、LINEでやりとりを始めた。

たい焼きは、コジくんが食べたよ。

家内の長女との定時連絡LINEは、家内と長女と私の3人の複数LINEである。この複数ラインは、「愉快な仲間たち」という名前がついている。

しばらく経ち、長女が深夜に帰宅した時に、長女から返信があった。

捨てようと思っていたから、食べてくれてありがとう!

私の心配は、杞憂に終わった。だが、ちょっと釈然としなかった。このようなシチュエーション、かつて味わったことがある。デジャビュのような気がする。

そしてもうひとつ、みるみる記憶が蘇ってきた。兄との秘密の記憶である。

私は、こう見えても、口が堅い。兄に秘密だと言われてきたので、心の中に、ほぼ、しまっておいた記憶だ。

兄は、むかし、食が細かった。好き嫌いもある程度あって、小学校の低学年の時は、学校の給食を食べきることがなかなか難しかったようだった。対して私は、幼少から大食漢だった。

兄は、学校から帰宅すると、一番に手洗いをし、ランドセルを部屋に置くと、私を部屋に呼んだ。

2人で仲良く何をしていたかというと、給食の残飯処理だった。兄は、チーズやマーガリン、パンを私に渡して、限られた短時間で食べさせる。私は、ちょうど、おやつが必要な時間だったので、喜んで兄のいう通り、バクバク食べる。そして残飯処理が終わると、兄は、遊びに出かけていくのだった。

これは、兄と2人だけの秘密の、ウインウインの儀式だった。

私は、残飯処理をしても、晩ご飯が食べられなくなるなどの副作用は全くなかったので、一向にバレることはなかった。

昨今、食品ロスの問題がクローズアップされている。ある面、当然のことだと私は思う。なぜなら、まだ、十分に食べられる食品が捨てられてしまうのは、勿体ないし、不条理だ。

私は、幼い頃から今まで、食品ロスに対しては、なかなか意識が高く、貢献してきたと自負している。

だが、私のポンポンは強いが、ゴミ箱ではないし、過信は禁物だと思っている。これからも、慢心することなく、よくよく吟味した上で、フードロス・ハンターとして、実績を積み上げていきたい。

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