ショートショート_明日
金魚鉢の透き通る印象は夏の季節を思い起こさせる。とうとう台風1号が発生し、夏だとは思うのだが、もうひとつ、大切な季節を通り越さねば本物の夏はやって来ない。それは、梅雨という季節である。
梅雨というと、長雨、ジメジメ、憂鬱などという感じがするのだが、雑草を含めて植物性の花粉症の私にとっては、ようやくマスクがとれる季節を意味する。確かにうざったい感じもするが、ようやく夏を感じる季節でもある。
沖縄は既に梅雨入りをしている。こちらが梅雨入りというのも、もうすぐなのであろう。やがて梅雨に入り夏至を越して夏真っ盛りとなり、金魚鉢の季節となる。
外は曇ってきた。そんな日曜日の夕方に、またもや、荒技をやってしまった。
さて、小牧幸助さんの、シロクマ文芸部の最新お題は、木曜日に出る。
そして、今回のお題は、「金魚鉢」から始まる小説・詩歌・エッセイなどを自由に書いてみませんか?ということで。
そして、たらはかにさんからのお題は…表のお題が【祈願上手】で。裏のお題が【奇岩シューズ】ということだ。
また、山根あきらさんのお題は、ちょっは早めに出る。
「 #腐れ縁だから 」というお題で作品を投稿してみませんか?ということで、今週は、ちょっとゆるめていただき、お題は「#腐れ縁だから」ですが、「腐れ縁」という言葉がタイトルまたは本文中に使われていればOKです、とのことで。有り難い。
感覚的にはこれは来週のお題なのだが、私は、今日、書いてしまう。
お3人の企画、「シロクマ文芸部」、「毎週ショートショートnote」、「青ブラ文学部」はどれをとっても、膨大な数のファンの方、参加希望者を抱えていらっしゃって。お題を考え、出すだけでも、大変だと思うのである。
それでもお題を出してくれる。毎週。ほんとうに、ありがたい限りだ。毎週、励みになる。
また、今回の「シロクマ感想文」は、スズムラさんの、シロクマ文芸部作品を読んでみた。ちょっとその感想を述べてみる。
スズムラさんのシロクマ文芸部のエントリーは、毎週、複数のエントリーをされている。今回はその中でも、54文字小説になった一編を読んでみた。
小説は、余白があるのが良いところだと思っている。まして、54文字ならば、なおさらである。
この作品のコメント欄を見回しても、いろいろな解釈がある。ラブラブ派であったり、ホラー的に殺人派であったり、いろいろと。
私は、勝手ながら、こう解釈した。
ふたりだけの世界。
炎天下のボロアパート。
夜店で手に入れた金魚すくいの金魚を、ありもののガラスのお椀に入れたものの。クーラーもなく、暑さで揺れているように感じる。
買ってきたアイスも半分ずつで。それもだんだん融けてきて。
ゆらゆらと、夢見心地にふたり、壁にもたれて金魚を眺めつつ、うたた寝する。
明日は明日の風が吹く。
この作品を再び読んだときには、また違う解釈になるやも知れない。また、そういうところがいいのだと思うのである。
小説とは、実に、良いものだ。ほのかに居合の後味の残る、良い作品を読ませてもらった。
生きていることに感謝して。今宵も、月に祈ろう。
心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
せっかく出していただいたお題を、小牧幸助さんの始まりの言葉と、たらはかにさんの裏表のお題、さらには山根あきらさんのお題、4ついっぺんに書く荒技。まして、シロクマ感想文まで、5重の荒技。あまりにもやりすぎじゃないかな。
うむ。
これで何週間だろうか。まあ、続けられるだけ、続けるさ。
心の中の、リトルkojuroが、また、ボソリと、呟つぶやいた。
なんだか、悪ガキのまんまだな。
まあな。
そしてもう一度、心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟つぶやいた。
家族からのお題は、バックアップで書いたの?
うむ。少しずつね。でも、それを投稿する機会がなくなってしまったかも知れない。どうしようか。
私は、この荒技シリーズを、もっとかっこ良くハードボイルド風に書き上げたいと思っている。だが、毎回、なんだかテイストの靄った内容になってしまっているようで、実は、反省している。ほんの、少しばかり。
さて。それでは、本編にまいりましょう。今週の荒技、「明日」約410字を、どうぞ。
☆ ☆ ☆
金魚鉢をぼんやり眺めていた泉は、ふと思い立って立ち上がった。
そうだ、また高尾山に登ろう。
南大沢の家からは、京王線に乗り調布で乗り換えて高尾山口に出る。そこからは、ひたすら歩いて登る。
泉は秘密警察のエージェントである。あらゆるミッションの中で、ある時はバーテンダーとなり、またある時は教師に。またある時は弁護士に。
変幻自在と言えば聞こえは良いが、時にリセットせねば自らの存在を自身ですら認識不能に陥る。
決して信心深い方ではないのだが、薬王院には祈りに行く。そして、道中の蛙岩にも。
祈ることで自分を取り戻し、願を込める。
願いはただひとつ、父の無事の帰還である。
いつも岩の前で自撮りをする。履いているのはカーキ色の登山シューズだ。
登りながら思う。悪の枢軸の工作員達は、次から次へと新たなミッションを作ってくれる。否応なしに。
永遠に続く不条理。だが、ただ淡々とこなす。これも腐れ縁だからと既に達観している。
明日は明日の風が吹く。
☆ ☆ ☆