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A4

家内が言った。

ちょっと、A4、とって。

家内は、非常に無精である。一度座ったら、そこから動かない。血圧の高い家内に、血圧計を購入したのは、どれだけ前のことだっただろうか。

その血圧計は、一切、使わない。

そして、毎日計測するはずの血圧も、ほぼ絶対に測らない。

毎日、薬は、飲んでいる。

通院も、している。

だが、自分の血圧がどれくらいで推移しているのかを、本人は、全く感知していないのである。

会社の同僚で、秋の健康診断で高血圧の結果となり、健康管理室から呼び出しを受け、なかなか行かなかった人がいたが、先週、何とか説得して、行ってもらった。

今は、紹介状をもらい、本人は、通院し、薬も飲み始めている。

そんなこともあり、意を決して、家内にも、毎日計測するようにと、私の、コンパクトな血圧計を渡したのである。

ところが、たまたま、その瞬間、電池が切れていることが判明したのである。

そして、電池を取りに行くミッションが、私に科された。

心の中の、リトルkojuroが、呟いた。

間違いは、正してあげるのが、思いやりということも、ある。

私は、電池を持っていきながら、家内に、もう一度、声をかけた。

A4だよね。

そう、A4。

あ、ありがとう。

家内は、何食わぬ顔をして、血圧計に、電池を仕込んでいる。

心の中の、リトルkojuroが、また、小さく呟いた。

そろそろ、伝えてあげなよ。本当のこと。

私は、家内に、言った。

あなたが今入れたのは、単4、だけれども、ね。

すると、家内の手が、一瞬止まった。

そして、家内が、言った。

そうとも言う。

心の中の、リトルkojuroは、私の方を振り向いて、両掌を上に向け、少し肘を曲げて両腕を広げて、首を傾げて軽く顔を左右に振った。欧米人みたいに。

お手上げだ。家内の、負けず嫌いには。

家内のこだわりポイントは、ポイ活と、クーポンと、節約と、そして、私に屈服しない負けず嫌いである。

私は、家内の血圧が正常値であって、長生きしてくれれば、それで、いい。

万事、これで、いいのだ。

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