勘太郎
私のリュックの名前は、勘太郎という。先日、この記事で告白をした。すると、どうしてその名前かというご意見を、コメント欄で頂いたのだ。いくつか。
今日は、カラスの話を書くと、昨日、予告したはずなのに、いきなり、リュックとは。
その関係について、少し、書いてみようと思う。
私は、大切にしているものには、名前をつけてしまう。そして、その名前で呼び、ますます思い入れが強くなり、ついには擬人化して認識してしまい、別れ際が、辛くなる。
年端のいかない子供のような感じだ。もう、孫がいてもおかしくないほどの、中年を超えたオヤジなのだが。
心の中の、リトルkojuroが、首を振りながら、呟いた。
いい歳をして、ちょっと情けないぞ。
勘太郎というのは、実は、もともとは、私が会社の近くの交差点で出会うカラスにつけた名前なのだ。
勘太郎は、物怖じしない。他の人も、私のことも、怖がらない。時に、至近距離で、カァカァ言っている。
私は内心、かなりのイタズラ好きのカラスなんだろうと思っている。
最近は、少し意図的に遅く家を出るようにしているのだが、今年の初夏まで、始発電車で会社に出ていた。
初夏というと、かなり明るい。夏至が6月の20日くらいだから、もう、ゴールデンウイークくらいから、会社に着く頃には、勘太郎と毎朝のように、交差点で会う。カァカァと泣きながら、逃げるでもなく、怯えるでもなく、威嚇するでもなく、攻撃してくるでもなく。勘太郎は、時に、歩道を飛び跳ね、時に、ガードレールに乗っかりながら、カァカァと、まるで語りかけてくるように、鳴くのだ。
勘太郎との出会いは、2年ほど前に遡る。ちょうど、私がリュックを買い換えた頃だ。
カァカァと、私を感知しないカラスに、少し愛着も込めて、勝手に勘太郎と名付けた。カラスの名は、色々あるだろうが、勘三郎とか、勘九郎が、一般的なのかも知れない。だから、敢えて、少しマイナーな名前をつけたつもりだった。
勘太郎の朝は、早い。だが、秋から冬にかけては、日が昇るのが遅くなり、朝は、私のほうが早くなる。そして、しばらく会えなくなったりする。
そんな、勘太郎の姿を見なくなる頃、10月の終わり頃に、私は、リュックを買い換えた。
私のリュックは、真っ黒である。NorthFaceブランドなのだが、そのロゴが黒くてステルスになっている。真っ黒で、リュックにも、少しの愛着をもって勘太郎と名付けた。
心の中の、リトルkojuroが、少しガッカリして、呟いた。
確かに、記事にするほどの命名談でも無いな。
そんな、リトルkojuroにも、少し教えておきたいエピソードが、もう一つある。
それは、ネット上の、この記事である。
ちょっと心に残るお話である。もしもお時間が許すならば、1度、読んでみて欲しい。
勘太郎は、みんなに好かれて可愛がられていたが、イタズラが過ぎて疎まれてしまい、山に返される。何度も帰巣するのだが、とうとう、海を渡ったところで離されて、主人公の、また帰ってくるだろうという予想に反して、帰ってこなくなる。
なんだか切ない。だが、すごく愛のある話である。
私は、この話を、勘太郎に名前をつける前に知っていたのか、つけた後に知ったのか。肝心なことを忘れてしまった。何ともお粗末な記憶である。
私は、つまらないことは、何十年も前の話でも、細部まで明瞭に覚えていたりするのだが、肝心要のことは、抜けている。
いつまでも、不完全な、悪ガキのまんまなのである。
私のリュックは、勘太郎という名前である。もう、秋が深くなり、私の通勤時間には、カラスの勘太郎を、あまり見かけなくなってきた。
毎日、リュックの勘太郎と過ごし、また、カラスの勘太郎に、会いたいと思うのである。
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