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保護

このゴールデンウイーク、どうしても関西に帰らねばならない所要があった。ひとつは、記事にはできないのだが、実はもうひとつ、非常に重要なミッションがあったのだ。

実は、長男は、私や家内や妹たちにも内緒で、ある生き物を飼っていた。2月からというから、約3ヶ月飼っていたのだ。だが最近、仕事があまりにも忙しく、そして、住んでいるマンションの規約を改めて読んでみると、小動物も含めて飼育厳禁だということで、そのある生き物を引き取ってくれないかと、つい最近になって突然、SOSが、出されていたのである。

長男によると、規約は、黙っていれば、何とかなる。だが、最近の仕事の忙しさが尋常ではなく、ほとんど家に滞在できる時間が確保できないというのである。

毎週日曜日は定休日なので、何とかなるかと頑張ってはみたものの、平日の世話が、ままならなくなってきて、その小動物が病気にでもなったら、もう、命に関わってしまうというのである。

その点、我が家ならば、私と家内と、今はまだ、次女がいる。

それぞれに忙しいが、まだ、都合をつけて動ける可能性が高いのではないか、ということだった。


家内と相談し、車で移送するには、もう、ゴールデンウイークしかない。また、同時に、どうしても関西に帰らねばならない所要もあり、そもそも、1泊で、弾丸帰省を敢行するつもりだったから、少し帰宅を先延ばしにして、その予定を入れることにした。


その小動物とは、ハリネズミである。


私は、ゴールデンウイーク前半の、長男の自宅に到着したその晩に、初対面した。

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ハリネズミは、ネズミと言いながら、もぐらの仲間で、普通は、暗い穴蔵に入り、じっとしているらしい。かなり臆病で、人には、ほとんど慣れることはないという。

長男も、独学でいろいろ調べていたという。その受け売りで、私は、結局は、ごくごく僅かな知識を、断片的に身につけたというに過ぎない。

餌付けのときに乗じて、何とか初対面を実行したが、写真を見てもわかるように、針が立っていて、丸まってしまっていて、かなり警戒している。



夜、長男と、家内と、話をしていたとき、家内が、言った。

コジくんも、私も、素人だし。育てられるかな。


すると、長男が、言った。

自然に返してあげるのが、本当は、良いんだろうけれど。


すると、家内が、ボソッと呟いた。

明日、河原に、放してあげる?


長男が、返した。

そのほうが、幸せかもな。


その瞬間、心の中の、リトルkojuroが、憤りの声をあげた。

それは、犯罪です!!


そして間髪入れずに、私も、返した。

なんのために、ここまで来たんだ!!

保護するためだろう!!!

無理でも、育てるんだよ、俺たちが!!!!


家内と長男は、大笑いしながら、こたえた。

冗談だろっ!!


心の中の、リトルkojuroが、頭をかきながら、ボソッと呟いた。

なんだ....。本気かと思った....。



その後、長男から、餌や水の量ややり方、ハウスケージ、回転車、補助的なヒーターなどの用具の種類や使い方のレクチャーを受けつつ、長男宅でも過ごし、帰宅時の車の中でも、少しでも知識を得ようと長男と会話し、私なりに努力した。


長男は、子供の日までは休みだというので、一緒に自宅に帰り、数日のあいだ、ハリネズミの習性や活動時間帯、餌やりのタイミングや、やり方、慣らし方などを学ぶことにした。

関西から東京までの道のりは、そう短くは、ない。

おそらく、ハリネズミにとっては、相当なストレスになったに違いない。それでもなんとか、我が家に、帰ってきた。


移動は、紙製の砂が入った、カゴの中に入れて、移動させた。大きなケージは、なるべく小さくしてたたみ、トランクに乗せた。

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なかなか、かわいい寝顔だ。

帰宅して、長男が前に過ごしていた我が家の空き部屋に、ケージを置いた。

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ハリネズミは、すぐに、穴蔵の中に入り、縮こまって、眠っている。話によると、ずっと、寝ている。だいたい、そんなものだそうだ。

気温と湿度が、快適である必要があるらしく、長男は、こんな温度計兼湿度計を購入していた。

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部屋の中の気温が、まだ、低いので、家内に黙って、エアコンをつけた。

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だがこれは、すぐにバレて、家内に、こう、言われた。

電気代が、あまりかかるようならば、本気で里親を探すよ。


心の中の、リトルkojuroが、静かに囁いた。

それは、ちょっと、かわいそうだな.....。


長男からも、こう、言われた。

あんまり甘やかしていると、わがままな子になるよ。


心の中の、リトルkojuroが、呟いた。

それもそうだな。

バランスが、大切だ。


今は、全然私に慣れていなくて、餌で誘き出して、スキンシップを図るしかない。

だが、こういう、可愛い表情も、ときに、見せてくれる。

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次女は、事情を知らなかったので、びっくりしていたし、怖いからと言って、触ろうとはしない。そして、宣言した。

私は、面倒をみることができないからね。

怖いから。


私と、家内とで、交代で面倒をみるしかない。


ハリネズミは、平均で4〜5年、長ければ、7〜10年、生きるらしい。1月生まれらしいから、まだ、子供だ。だが、夏あたりには、もう、大人になってくる。


全く、私の意思とはちがうところで、ひょんなきっかけから、ハリネズミを飼うことに、突然、なってしまった。


まだ、全然、ハリネズミのことを知らない。だから、基礎から学ぶ必要がある。そしてそろそろ、今まで経験のない、動物病院の調査も、必要なようだ。


ハリネズミは、人に、普通は、なつかないという。

長男にも、それほど、なつかなかったらしい。


ハリネズミはオスで、名は、「リキ」という。命名は、長男だ。健康に、元気に力強く生きてほしいという思いをこめたという。

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小さな命が我が家に来て、私は、かなり緊張している。これまで、カブトムシやクワガタムシ以外の生き物を、飼ったことがない。だから、昆虫以外は、初体験だ。ちゃんと育てられるかどうか、本当に、ドキドキである。

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家内は、突然の、小さな命の来訪に、戸惑っている。

だが、こういうことは、言う。

あら、かわいい。


家内の顔が、少し、優しくなったように思う。

だから、今日も言おう。


これで、いいのだ。




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