呼び鈴
今日は、普通の出勤日だった。その家内が、平日に珍しく、お土産をたくさん、持って帰ってきた。
私は、無類の、アイス好きである。当然、家内は、それを知っている。そして、雪見だいふくは、好きなアイスの、かなり上位に位置する。当然、家内は、それも、知っている。
私のために、これを、買ってきてくれたのだ。なんと。感激。
早速、品定めをする。
これは、ノーマルな、普通の、雪見だいふくである。
チーズが好きなので、チーズケーキも好きだが、一番注目したのは、これだ。ところが、これは、お買い得品になっていたらしい。
他にも、お買い得品が、あったという。
これも。
抹茶も、なかなかに、美味しそうだが。
そして、これも。
ハート型で、しかも、イチゴだが。お買い得品に、なっていたらしい。
そもそもは、これを買いに行ったという。
朝、職場で、雪見だいふく、美味しいよね、という会話になったらしい。そのとき、北海道ミルクプリンが、隣のセブンイレブンで売っていて。それが、とてもおいしいという話を聞いたそうだ。
家内のこだわりポイントは、ポイ活と、クーポンと、節約である。したがって、コンビニには、あまり、行かない。特に、スーパーに立ち寄れるシチュエーションで、コンビニの選択肢は、皆無なのだ。
そういうことで、帰路、イトーヨーカドーに、立ち寄ったらしい。そのときの目標物は、この、北海道ミルクプリンだったのだそうだ。
そして、アイスクリームの冷凍庫の中に、多種多様な、雪見だいふくを販売ているのを、発見したらしい。そして、ありったけ、買って帰ってきたという。
コジくんのために、買って帰ってきたよ。
家内の、よそ行きの声色に、心の中の、リトルkojuroが、ブルっと震えながら呟いた。
これは、きっと、何かあるぞ。何か.....。
人間、穿った見方を、あまり、するものではない。
家内の秘密の扉には、冷凍機能は無いのだ。つまり、アイスクリームは、治外法権の領域には格納されない。誰の聖域でもない、安全地帯、冷凍庫に、この、アイスクリームたちは、静かに置かれている。
家内の発する、よく聞く、口癖がある。
わたし、アイスクリーム、嫌いなのよね。
実は、家内は、アイスクリームが、嫌いだ。我が家でアイスクリームが好きなのは、家内以外全員が好きだが、長男と、長女は、独立している。そして、次女は、ダイエット中だ。つまり、私の、独壇場なのである。
だが、うまい話には、裏がある。
家内が、その、アイスクリーム嫌いを克服する場所がある。
それは、お風呂の中だ。
これだけは、気を付けねば。
これだけは、避けよう。お風呂に入るときに、アイスクリームは、忘れてもらうようにしよう。
すると、心の中の、リトルkojuroが、ちょっと斜に構えて呟いた。
何事も、独り占めは、いけないよ。きっと、うまくいかないよ。
そうか。
では、逆をいこう。
私は、お風呂に入ろうとする家内に、後ろ手にこえをかけた。
今日は、あなたのお土産の、アイスがあるよ。
家内は、興味がなさそうに、言った。
うん。まあ、でもね。アイス、嫌いだから。
しばらくすると、給湯パネルが、呼び鈴が鳴った。
えっ? まさか....。
心の中の、リトルkojuroが、肩を震わせて、笑っていた。
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