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#あの恋

いつかの、(流転)

いつかの、(流転)

 そうして、凪を迎えた。雨はまばらになり、風は止み、温度も、わたしの中にあったはずの熱も、すべては静けさの中へ。尾根の上にはわたし一人。死にたがりの、馬鹿が一人。
 
 この山で命を落とした祖母は、死に際に何を思ったのだろう。

 死にたいときに死ねない不自由さ。

 他人のミスで自身が命を落とす理不尽さ。

 後に残す家族への不甲斐なさ。

 呪詛を唱えながら、彼女は意識を手放したのだろうか。わ

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