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人はあっけなく死ぬ

初めて転職を意識した話の続きです。


そう言えば、「つづく」と書いておいて
続きを書いていない気がしたので、
続きを書きます。

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看護師6年目。

私は27才になる年に、3次の救命センターに就職しました。
所属はICU。

手術室が結構好きで、
一生手術室でも良いんじゃないかと思うくらい
自分の性に合っていたので

一生続けるにしても
その分野を極めるためにはやっぱり近い領域の知見が必ず必要になると
そんな事を考えながら、いざ救命センターへ。

そこで待っていたのは、
なにひとつ、
本当に何一つとして、
まともに仕事ができない自分でした。

とにかく注射ができなかった

3月末まで新人指導もしながらリーダー業務もこなしていたのに
4月1日からは新卒も混じってピヨピヨし始める日々

初めての転職だった私は
新しい病院でまた新たに学ぶのも初めてで
新卒に混じって研修を受けながら
本当に色んな事に面食らってしまう

それこそ
自分よりも年下の、3年目くらいのナースに
ガッツリフォローについてもらう
そして時に怒られる(笑)

患者さんのおむつ交換すら、まともにできない
シートおむつと尿取りパットの違いが分からない
採血やルートキープもあたふた
とにかく注射ができなさすぎる
経管栄養なんて触ったこともない
ときにこぼす

加えてPCPS・IABP・CHDFという意味不明アルファベット機械たち

はじめまして。

「え?手術室って、人工呼吸器使いますよね?」
「術中ってPEEP設定ってどのくらいなんですか?」
「へー!オペ室ってガンマ計算しないんスか!」

半分くらいが外国語で、6年目の私は
もうきっちりと自信を失って

「あぁ・・・私は今なんでここにいるんだ・・・」

と半泣きになりながら食らいついた

CPA蘇生後
多発外傷
頭部外傷
重症肺炎
重症膵炎
熱傷
オーバードーズ

とにかく色んな患者と出会って
手術室にいたらおよそ観られない景色や光景を
毎日浴びるように見た

一番強く感じたことは

なんだ。
人はこんなに簡単に死ぬのか。


ということだった。

手術室に入ってきて出ていく患者は
まぁ死なない。
というか、死なせない。

明らかに助かっていなくても、手術室で死亡確認をすることは殆ど無い。

だから手術室では、可能な限りの外科的な治療をして
循環が維持できなければ体外循環に乗せてICUへ送る

私が新卒で働いていた手術室では、
その後どのタイミングでどんな風に患者が死亡退院するのか
詳細には把握していなかった

救命センターICUで働いていて
いとも簡単に人は死んでいくことを知った

どんなに若い人でも
基礎疾患なんてない人でも
万全で最先端の治療計画で何人のチームで集中治療をしても
人が死ぬ時は、本当にあっけない

あくまで医療は
その人の生命力と治癒力、そして運

このプロセスに少し手を加えている程度のものなんだ
と思い知った

だからこそ、回復して一般病棟に移っていくことは奇跡で
退院して社会復帰することも奇跡で
今こうして自分が生きていることも
目の前の人が笑っていることも奇跡だと
綺麗事ではなく肌で感じるようになった

手術室で5年働いて
「患者の療養生活」とは一番遠いところに居た私は
最初は全然使い物にならなかったし
「患者の死」というものから一番遠いところに居た私は
最初その「人の命」のあっけなさに絶句したけど

「明日があることは運がいい」

と思いながら今も生きている。

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