Naoki Ito(LayerX/㈱銭湯ぐらし)
IDFAの取れない時代においてアプリ事業者がやるべき新規ユーザー獲得・休眠復帰(リエンゲージメント)施策について考える
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IDFAの取れない時代においてアプリ事業者がやるべき新規ユーザー獲得・休眠復帰(リエンゲージメント)施策について考える

Naoki Ito(LayerX/㈱銭湯ぐらし)

■ これは何
・iOS14からIDFAの取得がオプトインになることを受けて、広告まわりの動向は引き続き注視するとして、アプリ事業者はこんなことに注力したらいいんじゃないかということを書いたメモです
・自分の観測範囲ではわりとアプリ事業者よりもアドテクベンダーや代理店の方々のほうがこの話題に言及しているのと、アプリ事業者視点(B2Cでアプリ運用をしている立場)に立ったときに「騒がれてはいるけど、結局いまからなにをやっておけばいいの?」という情報がまだ乏しいかなと思ったので自身の備忘録も兼ねて書いています
・間違いもあると思うので批判も感想もバシバシお待ちしてます

■ どんなことが書いてあるか
いつもより長くはないですが(7,000字くらい?)、お忙しい方は下記に記事のエッセンスをまとめたのでこちらだけでも読んでみてください📝

TL;DR
・新規ユーザー獲得面ではIDFAの影響を受けないASO(オーガニック流入の対策)とSearch Ads(ストア検索広告)が相対的に重要になってきそうなので手つけてない人はやりましょう
・3rd partyの計測ツール(AdjustとかAppsFlyerとか)も全く使えなくなるということはないだろうしSKAdNetworkなるものも出てきますが、アプリの流入を知る手段としてプラットフォームのApple側が提供している「App Analytics」を使ってみるのもいいと思います
・リエンゲージメント施策としてプッシュの重要性が上がるのでオンボーディング時にプッシュの許諾率高める施策は絶対にやりましょう
・完全に寝てしまったユーザーはプッシュでも呼び戻すのが難しくなるので、「休眠予備軍」を定義しそこに対して寝かせない施策を打つこと。そしてそれを行うためのイベント設計とkpiモニタリングを見直すこと

いまでこそWebやメールも含めたマルチチャネルのコミュニケーションプラットフォームになっていますが、「アプリマーケといえばRepro」のイメージがいまだに強く、実際ぼく自身もアプリマーケのほうがキャリアが長いので、その経験などをもとに書いていければと思っています。

■ 前提
自分も自分の所属するReproもアドテク界隈ではないですしそのあたりの知見は乏しいので、本稿では「IDFAの仕様」や「オプトイン化による広告周りの技術的な影響」については触れておりません。

そのあたりの記事は専門家の方々から素晴らしいコンテンツがいくつも出ているので、そちらでキャッチアップしていただければと思います🙇

なかでも下記コンテンツは本当におすすめです。というか下記を押さえておけばだいたいokだと思います。

iOS14の衝撃。モバイルマーケターはこの激変を今すぐキャッチアップせよ  | ブシロード森下さん (Twi: @akiramarketing )
IDFAのオプトイン化が与える影響を解説します | α 正田さん (Twi: @syouda  )
広告業界どうなる?どうする?IDFA!!! | すがけんさん × α正田さんの対談(Twi: @xxkenai )

この記事もこれらの方々の発信している内容を受けて書こうと思った次第です。本当にありがとうございます!

■ IDFAオプトイン化のおさらい

↑のおすすめ記事に詳しく書いてありますが、iOS14からIDFAがオプトイン化されることによる、アプリ事業者目線での主な影響は次の通りです。

広告配信の選択肢が減る
・リタゲやリエンゲージメント系の媒体が使えなくなるので、広告配信の選択肢が減る。特に既存ユーザーの呼び戻し(休眠復帰施策)はできなくなる(ログインIDベース、メールベースでのリタゲはできる)

インストールの効果測定基準が変わる
・MMP(Mobile Measurement Partner。AdjustとかAppsFlyerとか)はIDFAベースでの計測が主流なので、IDFA取得できないとなるとフィンガープリントやAppleが新たに提供するSKAdNetworkなど別の計測手法を使わざるを得ない。
・結果、いままでMMPで取ってきた流入後のKPIで取得できないものが出てくるかもしれないし、取れても以前の数字と大きく乖離してしまっている可能性がある

日本だと使ってる事業者は聞かないですが、Singularとかは早速SKAdNetwork対応するみたいですね。早い👀


広告収益モデルのアプリ(カジュアルゲームとかメディア系とか)は収益が減る
・ターゲティングされていない広告は価値が下がるので、eCPM(≒広告収益)は下がる。今使っているSSP/DSPも機能しなくなる

"Facebookの研究によると、ターゲティングされない広告はされた広告に比べ収益が50%以上下がるようです。実際にどれほどeCPMが下がるのかはメディアの特徴や保持しているユーザーデータ等によりますが、広告収益に頼っているアプリはダメージが免れないです"
IDFAのオプトイン化が与える影響を解説します 」より抜粋

…改めて書いてみるとめっちゃ変わりますね。大変だ🤔

■ この影響を踏まえてやるべきこと

ということで、アプリマーケの地殻変動が起きてしまいました…🌋

ただ、iOS14が提供され始める9月までまだ猶予はありますので、それまでに何をやっておけばいいかというのを考えていきたいと思います。

下記にざっくりアプリマーケの全体図を書いてみたのですが、各フェーズでこんなことに取り組んでみてはどうでしょう💡

■ 新規ユーザー獲得施策について

(いままでと同じ計測方法がでは無くなるし使えなくなる媒体もあるのでそもそもの予算アロケーションや獲得KPI設計など全体戦略を見直す必要がある、というのは前提として、) 新規ユーザー獲得ではASO(App Store Optimization)とASA(Apple Search Ads)のチャネルを強化するべきかなと思っております。

理由はシンプルで、これらのチャネルはIDFAの影響を受けないからです。

<ASOについて>
ASOはざっくり「キーワード対策(SEO)」「ストアCVR向上(CRO)」「レビュー対策」に分けられますが、キーワードのPDCAを回していなかったりスクショのA/Bテストをやったことが無い方はこの機会にぜひやりましょう。

「アプリのメジャーアップデート以降ストアのメタデータ何もいじってない」「ストアのアップデートはエンジニアに任せていて、自分は権限を持っていない」というアプリ事業者は要注意です。後述もしますがApp Store Connectはただアプリをリリースするためだけのツールではありません。

きちんとPDCAを回せばキーワードの改善もストアページの改善も広告と同等か、それ以上の成果がでます。

特にスクリーンショットのテストは広告が主な獲得チャネルになっている事業者にとっても大事です。なぜならユーザーはどんな流入経路から来ようと、必ずアプリストアからインストールするからです。

下記はDLまでをめちゃめちゃ単純化した図ですが、仮にストアアクセス数で広告とオーガニックの割合が8:2、CVR(DL率)が20%だった時に、ストアCVRが1%上がればDL数は100増え、その分CPIは下がります。

自分が支援させていただいた事例だと、「キャンディークラッシュ」シリーズで有名なkingさんは広告経由での流入がほとんどだったのですが、ストアCVR改善のためにスクリーンショットのテストを短期間で何度も行い、最終的にCPIを2割ほど下げることができました。

昨年のセミナーの講演スライド「Repro流ASO攻略と最新トレンド(Google I/Oの最速レポ付き) 」より。ASOについてざっと知りたい方はこのスライドを見てください。

そもそもアプリマーケ業界的に、広告はガンガン予算を投じてPDCAを回すのにストア情報は全く手を付けてなかったりするので、これを機に「キーワードやストアクリエイティブも運用して改善するもの」という認識が浸透すればいいなと思ってます。

ASO周りを中心に、WWDC20での最新の変更点を同僚がまとめておりますのでそちらもご覧ください。

ちなみに稲田さんは僕の2万倍ASOに詳しいです。もはやオタクの域。

<ASAについて>
すでに何人かの方が「AppleはLATの影響受けねえ!ずるい!」とぼやいていますが、Apple Search Ads、略してASAはIDFAの取得の有無によらず広告配信ができます。

ただし条件はあって、ASAであってもデモグラなどでターゲティング配信をする場合はLATをオンにしているユーザーには配信されないです。

2018年の時点で世界で3番目にアプリマーケターに使われている媒体になっていましたが、この流れを受けてよりASAに予算シフトする企業は多そうですね🍎 

ASAが日本で提供開始された2年前から(競合入札から守るために)自社の指名キーワードにもお金を払わなければいけない世界線になってしまいましたが、今回のIDFAショックで更にAppleにお金が流れますね。くうう。

「そもそもSearch Adsって何ぞや」という方は、1年ほど前と少し古いですが講演資料があるのでそちらをご覧ください。本稿では詳しい使い方は割愛します。

<App Analyticsについて>
獲得チャネルではなく計測の観点ですが、3rd partyの計測ツールがしばらくはバタバタしそうなので、ツールの利用自体は継続しても良いと思いますが、3rd partyの計測の不備や明らかにおかしいところを見つけるための保険として、Appleが提供するストア管理ツール「App Store Connect」内の「App Analytics」を利用するのがおすすめです。

細かくキャンペーン別の分析まではできませんが(やればできるのかも)、無料で使えるのと、

・インプレッション
・ストアPV
・インストール数
・App内課金数

といったストア周りの最低限の指標は取れます。安心安全のApple純正のためAd fraudも無し(なはず。間違ってたら教えてくださいm(__)m)

流入の内訳は「App Store閲覧」(ランキングやおすすめなど検索以外でのストア流入)、「App Store検索」(いわゆる検索)、「参照元App」(どのアプリ経由でインストールしたか。FB,TwitterなどのSNS広告やアドネットワーク経由のDLはここに入る)、「参照元Web」(どのサイト経由でインストールしたか)をデフォルトで見ることができ、参照元App/Webはブレイクダウンすると個別アプリ単位やwebサイト単位でDLの内訳が見れます。

CSVもわかりやすいのでサクッと集計できます。

App Analyticsはアプリ事業者であればすべからく誰でも無料で使えるツールにもかかわらず存在を知らなかったり使ったことがない事業者が結構いるので、これを機に流行って使い方の知見がたまればいいなと思ってます!

■ オンボーディング施策について

新規ユーザー獲得だけでだいぶ長くなってしまいましたが、実はいちばん伝えたいパートはここ。

そう、オンボーディングにおけるプッシュ通知許諾の重要性です。

前述のとおり、リエンゲージメント施策ができなくなる(厳密には全くできなくなるわけではないですが)と、ユーザーの呼び戻しにおけるプッシュ通知の重要性が上がります。

ただ、プッシュ通知はIDFAのはるか前からオプトインが義務付けられており、オプトインしていないユーザーにはプッシュ通知が届きません。

「休眠復帰に広告使えなくなっちゃう!プッシュ通知やろう!」と思ってもそもそもの許諾ユーザーが少ないと施策を最大化できないので、プッシュの許諾について対策を講じていないアプリ事業者は今すぐやったほうがいいです。

今こうしている間にも、あなたの新規ユーザーはプッシュの許諾をしないままにアプリを使い始めているかもしれません。そのユーザーがアプリを使わなくなったとき、プッシュ通知なしで呼び戻すのは至難の業です。

<プッシュ通知の許諾率のハック>
まず前提として、現状の許諾率を見ること。そもそも許諾率を取ってない事業者さんは取りましょう。

ちなみに当社は4年以上前からプッシュ通知の許諾率の重要性を説いており、許諾率は管理画面から簡単に見ることができます。

Reproドキュメント「プッシュ通知」より

許諾率向上に必要なのは大きく「タイミング」「訴求内容」の2点です。

「適切なタイミングで」「ユーザーにメリットを感じてもらえれば」許諾率は上げられます。言うは易く行うは難しですが…

タイミング変更で改善の例: ゲーマグ🎮
「もともとは初回起動時に承諾ダイアログを表示していたのですが、これは不自然だよねと思った。さまざまなタイミングで承諾を出して一番自然だったのは、1回以上記事を読んだタイミングで許諾ダイアログを出すことでした。その結果、タイミングを変更しただけで20%改善しました」

タイミングは「ユーザーがアプリの価値を感じた(いわゆるAHA moment)直後が鉄則。それかチュートリアルに自然に紛れ込ませる。

プッシュ通知許諾メリットの訴求で改善の例: モバオク🎁
モバオクの場合、もともとはダイアログのみ表示していたのだが、直前でアプリ内メッセージを表示したところ、前回より10%改善したという。ここで大事なのは、イラストや訴求文言のほかに、「承認ボタンの文言」を入れること。ここで意思表示をさせることが許諾率を上げるポイントだと平田氏は語った。

許諾の許可を取るための訴求文言やクリエイティブのテストも大事です。

これらの事例は以下記事からの抜粋になります。

3年以上前のイベントではあるのですが、許諾率に限らずプッシュ通知の設計についてノウハウを話しているので興味のある方は読んでみてください。

他に通知オンを工夫している事例も雑に貼ってみます。「あなただけに」というのはポイントですね📣

■ 休眠復帰(リエンゲージメント)施策について

やっと最後のパートまで来ました。休眠復帰です。

許諾率も向上してきて、プッシュ通知が届くユーザーの母数も増えてきたあなた。

ここで設定するべきプッシュ通知施策は何でしょうか?

「アプリを7日間以上起動していないユーザーにプッシュ通知を送って呼び戻す!その条件をトリガーにしてデイリーで定期配信。できれば男女別で文言も変える」

うーん、あり。ありですが、そもそも休眠復帰施策を「アプリをX日以上起動していないユーザー」くらいのざっくりした分け方で行っても成果はあまり出ません(._.)

ここまでのパートでプッシュ通知の重要性について主張しておきながら申し訳ないのですが、そもそも完全に休眠してしまったユーザーを起こすのはプッシュ通知が届くとしてもめちゃめちゃ難易度が高いです。アプリにもう興味がなくなっているので

ゲームアプリでよくある大型IPとのコラボのようなよっぽどヒキのあるコンテンツや大型の機能アップデート、バラマキ系のお得なリワード施策などあれば別ですが、普通にアプリのコンテンツ更新や利用メリットを送っても戻ってくるユーザーはわずかです。

なので、より優先的にやるべきは「休眠予備軍のユーザー」を定義し、そのユーザーが完全にアプリを離れてしまう前にプッシュ通知やアプリ内メッセージの施策を打って"寝かせない"ことです。

ざっくりの図にするとこんな感じ。

「休眠復帰施策」というとつい一番下の完全休眠群に対するアプローチを考えてしまいますが、アプリ内行動をしっかりトラッキングして休眠の予兆を捉え、休眠予備軍をアクティブに再び押し上げることこそやった方が良いかと思います。というかそのほうが効果も高い。

 「何をしていないユーザーを休眠予備軍とするか」の定義はアプリによって違いますが、自分の考え方としては「DAUやWAUには計上されているけどアプリのコアバリューであるアクションを行っていない、ないし実行回数を満たしていないユーザー」が休眠予備軍になるのかなと思います。

例えばキャッシュレスアプリであれば、「決済はしたことあるけど残高が500円以下になってもチャージを行っていない」ユーザーは、これまでに何度か使ってみたけど残高が切れてしまったらアプリを止めてしまうユーザーの可能性が高いです。

マンガアプリであれば「週に何度か起動はしているけど特定の2~3作品しか読んでいない」ユーザーは、その作品が終わったらアプリを止めてしまうでしょう。

なので、いまxAUとしては計上されているユーザーを更にコアアクションの実行濃度で分け、消極的アクティブユーザー = 休眠予備軍として施策を行うことが重要です。

例えば自分が担当していたマッチングアプリでは、課金ユーザーで毎日起動しているとしても「いいねを1日3回以上は押しているか」「マッチングしたけどメッセージを送っていない相手が2人以上溜まっていないか」などをトラッキングし、課金休眠予備軍と定義として寝かせないための施策を行っていました。

あと当社の紹介できる事例で言うと、ヘルスケアアプリの『あすけん』さんの事例とかめちゃめちゃ素敵です。「朝食を記録したが昼食と夕食を記録していないユーザー」などは「食事記録」というコアアクションを更に朝昼晩で分けてトラッキングしているしているからこそできる施策なので、イベント設計の妙がありますねー。

そこで、「過去数日間食事記録をしていたが金曜日に記録していないユーザー」や「朝食を記録したが昼食と夕食を記録していないユーザー」に対してプッシュ通知を配信しました。
その結果として、「初回食事記録率は8ポイント」「新規ユーザ7日後リテンション率は4ポイント」「食事記録ユーザの7日後リテンション率は1ポイント強」とかなり改善できています。

かなり当たり前のことを言っている/やっているように聞こえるかもしれませんが、無料→有料転換までのファネルではかなり細かくプッシュ通知(やそれ以外の)施策を行っている事業者が多いにもかかわらず、

有料→無料のダウンセル転換防止やアクティブ→休眠の転換防止に関しては前述のようなざっくりのアプリ起動の有無などでしか施策を行っていないところが多い印象だからです

ブシロード森下さんの記事のお言葉を借りるとまさに「思考停止」。リエンゲージメントが使えなくなるこれからの時代、ユーザーにより向き合うときがきたのではないかなと思います。

安易に「課金ステータス×アプリ起動の有無」とかで顧客ピラミッドを作らずに、アプリ内イベントを取って休眠の兆候をトラッキングしましょう✋

■ おわりに

やや、というか結構ポジショントークになってしまったなあとは思いつつ、アプリマーケティングにおいてプッシュ通知は本当に重要なので、皆さんぜひ「オンボーディング時のプッシュ許諾率アップ施策」「休眠予備軍の定義と寝かせないための施策」は考えてみてください!

本稿でお話したASO/ASA、アプリ内のイベント設計などについてご相談がありましたらTwitterFBでご連絡ください📧

アプリマーケ業界の更なる発展を願っております!

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Naoki Ito(LayerX/㈱銭湯ぐらし)

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