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一票の格差是正は必要なのか?


はじめに

今住んでいる世界は平等だと思いますか?おそらく。ほとんどの人は不平等が多いと思われるはずです。なんで、国会議員は特別扱いされて、一般市民は冷遇されるのかと思われたり、外国人留学生に10万円を給付するのに、日本人学生には援助をしないのかと思われたり様々あるはずです。小さなところで言えば、なんであいつは上司に気に入られているのかであったり、顔が良いばかりいい思いをしやがってであったり、至る所に不平等は散らばっています。しかし、日本国憲法では法の下の平等が定められています。これらの不平等がすべて憲法違反になると思われた方、残念です。そんなことはありません。今回は法の下の平等でよく取り上げられる一票の格差問題がいかにおかしいのかについて書いていきます。


一票の格差とは?

一票の格差とは同じ一票であっても地域によって、一票の重さ(当落ライン)が異なることです。有権者人口1000人のA地区と有権者人口100人のB地区でそれぞれ一人ずつ当選する場合、A地区では一票の重さが0.001であるのに対して、B地区では一票の重さが0.01となります。同じ一票であるにも関わらず、A地区とB地区で10倍の格差が生まれていることになります。有権者人口で一票の重さを単純に割っていることになります。一票の重さが各選挙区でばらつきが出ないようにしようと各選挙区の有権者人口に合わせた区割りをしています。その根拠となっているのが、憲法第14条第1項の法の下の平等です。

一票の格差問題は国政選挙が行われた後に必ずと言っていいほど提起されています。もはや風物詩とも言えます。一票の格差について裁判所は違憲であるが、選挙自体は有効とする事情判決か、違憲状態であるが合憲であるという判決を下しています。判例では一票の格差の是正を放置せずに取り組んでいない場合には違憲となりうるが、一票の格差が発生しているという事実だけで、直ちに違憲として選挙自体を無効とすべきでないとしています。つまり、裁判所も一票の格差についてはある程度、認めているとも言えます。一票の格差是正の方法が定数削減や地方選挙区の合区化です。一票の格差を是正しようとすればするほど、地方を衰退させる結果となってしまいます。そのことについて、次の章で触れていきます。


一票の格差是正は東京志向

一票の重さは有権者人口から導き出されます。つまり、人口の多い地域ほど一票の重さは軽くなります。逆に人口の少ない地域ほど一票の重さは重たくなります。一票の格差問題は憲法問題ではありますが、都市と地方の政治の問題でもあります。一票の格差が是正されると人口の多い都市部の意見が反映されやすくなります。以前から取り上げている都市の理論で国政が動く異なります。

人口の多さで言えば、都市部が圧倒的ですが、面積で言えば地方の方が大きいですし、国境付近の離島を抱えているのは地方が多いです。それらの地域は安全保障上、非常に重要な地域で、人口の多寡だけで一票の格差を違憲として、是正を求めるのは少し違和感を覚えます。それについては産経ニュースでも取り上げられて、元衆議院議長の伊吹さんがそのことに触れています。

都市部の声が多くなれば、効率化が求められるようになり、非効率な地方は切り捨てられていきます。都市部に資源が集中し、地方から都市部に人が来るようになり、また都市部に資源が集中し、人が来てを繰り返すことになります。そうなってしまうと、日本という国の国土は今と同じであっても、人の住める地域が今より少なくなり、一極集中がより加速することになってしまいます。

東京や大阪のような都市部ではロシアや中国の危機を直接、肌で感じることはなく、それらの危機を直接感じているのは沖縄や北海道の方です。都市部の声が大きくなれば、地方が切り捨てられるだけでなく、日本の国土を守ることも遠いことのようなってしまいます。今のウクライナは明日の日本と言われていますが、残念ながら、日本にその緊張感はそこまでありません。島根と鳥取の選挙区は合区となりましたが、島根県には韓国に不法占拠されている竹島があります。領土問題を抱えている土地の代表を、有権者人口を理由に隣の県と一緒にしてしまっては、領土問題解決に声が遠のいてしまう恐れがあります。陰謀論者ではありませんが、こういった政治制度から日本が切り崩される恐れがあります。

確かに裁判所は一票の格差についてある程度許容していますが、法の下の平等を理由に看過できないような場合は、違憲としています。人口だけを考慮して、そのような結論を導いているのであれば、違和感を覚えずにはいられません。人口という要素だけで、違憲や合憲を判断すべきでないと思います。違憲とされた選挙であっても有効となっていますが、いずれ無効と判事される日が来るかもしれません。

一票の格差は憲法問題ですが、回りまわって安全保障問題にもつながる大きな問題でもあります。そんな大きな問題を人口だけで判断するのは非常に軽いと思わざるを得ません。国が地方創生を求めるというのであれば、一票の格差是正の定数削減や合区化はそれと逆行することになることを踏まえる必要があると思います。一票の格差について裁判所がもう少し考え方を変え、それに伴う法改正も人口だけを考慮せずに行うか憲法自体を改正して、一票の格差問題自体を憲法問題としないようにすべきです。本当に資源が必要なのは都市部ではなく地方です。都市部を軽んじているわけではありませんが、都市部より地方の方が数も圧倒的に多いですし、日本を守るという意味でも地方の声が大きくなるようにする必要があります。



最後に

一票の格差問題は憲法の授業で絶対出てくる話題ですが、政治的な観点から教えられることはあまりありません。そして、この問題はいつもどこか腑に落ちませんでした。都市と地方の票の是正をしろというのはどう考えてもおかしな話だと思いますし、地域の特性を人口だけで判断するのは難しいと思います。確かに、人口だけで単純に計算すれば、一票の価値は導き出すことができ、都市部が不利で地方が有利となってしまうのはおかしいと思うのはわかります。しかし、経済を回すうえで重要なのは都市部ですが、日本の国土を守る上で重要なのは地方です。法律的な議論はし尽されて、その結果、定数を削減したり合区化したりする結果になってしまい、ますます地方が切り捨てられてしまいます。一票の格差を法律的に考えることはもちろん重要ですが、それ以上に政治的側面、ひいては安全保障の観点から考える必要があります。国政は国を守ることを第一に考えるべきであり、そこには人口以外の要素もあります。人口という要素を排除しろと言っているのではなく、人口も一要素としてこの問題を考えるべきだと思っています。一票の格差を憲法問題としてだけでなく、重要な政治の問題として取り組む必要があります。都市部が日本を支えているかもしれませんが、日本を守っているのは地方です。その地方を切り捨てようとするのは国土を放棄し、今の安全な生活も放棄するに等しいです。

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