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4.ママの成長記録

前回までの記事はこちら
プロローグ
1.男の役目
2.ドキドキとそわそわ
3.初めての産婦人科

4月16日(5週5日)

この日から週に一度、妻のお腹の様子を写真に収める事にした。
しばらく使っていなかった一眼レフ。作品ではないが記録写真としての用途だ。

リビングの壁を背に立ってもらい、斜めを向いた状態でお腹を出してもらった。嬉しいような、なんとも気恥ずかしいような気分になる。
週を増すごとに妻と、子どもの成長がうかがえることを考えるとワクワクした。今は全然出ていないお腹が冬になる頃には見違えるほど大きくなるとはまだ想像できない。


今日は僕の両親に報告することにした。兄夫婦に子どもがいるから僕の両親からしたら5番目の孫となる。それもあってか両親は落ち着いた様子でおめでとうと言ってくれた。
両親からの普段聞き慣れない言葉に僕はとても恥ずかしくなった。自分が親になるというのがまだしっくりこない。父親の実感とは徐々に湧くものだろうか。
友人に打ち明けたくなったが、まだ周りに言うタイミングじゃないので自分の中に秘めておくことにした。


そして、妻のススメで「ままのて」というアプリを活用し始めることにした。その名の通り、妊娠したママに向けてのアプリである。
このアプリは予定日を設定すると逆算して現在何週目でどういう状況かを教えてくれる。妻の体型ではまだ生命が宿っていることを実感できないなか、現在の赤ちゃんはどういう状況かを毎日教えてくれるのはありがたい。

またこの「ままのて」ではパパ用として設定することができる。僕はその「ままのて」をインストールして「パパのて」として活用することにした。
パパのてでは現在の赤ちゃんとママがどういう状況であるかを説明してくれて、パパはどういうフォローをすることができるかを教えてくれる。

もちろん全ては一般論の話で妻の心境と全く同じというわけではないと思うが、それでも妻の心境を汲む大きな材料となる。そして今自分はパパとして、夫としてどういう行動をとるべきかという自覚を持つことができた。体験談や記事も豊富で、このアプリを開くことが日課となった。



4月17日(5週6日)

この頃から、毎朝家を出る前に仏壇に手を合わせるようになった。
僕の家はある宗教を信仰している。実家では僕を除いて祖父母、両親、兄弟と熱心に信仰している。

しかし僕はそこにずっと違和感を感じていた。思想や哲学を信仰という形で受け入れることができなかった。
日々の生活の中で考えることはいくらでもあった。人間関係にしろ生き方にしろ、それは曲がりながらでもいいから自分なりの解釈をしたかった。それを「教え」という言葉で迎合できなかった。

そして何よりもの違和感は祈りというところにあった。
手を合わせて「~をさせてください--、~ができるように力を発揮させてください--」を他力本願であると思っていた。目的を見据えるのならば、手を合わせる時間があれば行動を起こすべきだと。
毎日健康で生きていくことを願うならば、手を合わせるより食に気をつけて運動を心がけるべきだ。そちらの方が理にかなっている。

また祈りという力を科学的に論拠するならば、何か一つのことに集中することで左脳を刺激して脳のメカニズムによって不安を解消しているということだ。
これは瞑想やマインドフルネスといったことと同じでスピリチュアルという観点から不安が和らぐのではなく、科学的根拠によって作用している。



そんなロジカルな立場をとっていた僕だったが仏壇に手を合わせるようになった。


その一番の理由は、自分が手の届かないところに対する祈りだった。
今までは自分が「~をさせてください--、~ができるように力を発揮させてください--」といったことだった。
しかし、妻が妊娠してから「妻が健康で怪我をしないように。お腹の赤ちゃんが無事産まれ、怪我もなく健康で育ってください」という祈りへと変わった。


そこにたどり着くまでにできるだけ妻の負担にならないように家事をできるだけ手伝って、いたわることは大前提だ。その上で自分の手の届かないところにある祈りを捧げている。

予期しない事故に合わないようにといったことは自分の努力ではどうしようもない。その不安を解消するための祈りなのだ。この祈りが脳のメカニズムにより不安を解消しているということは分かっている。しかしそれを分かった上で祈りを行なった。



祖母がいつも遠く離れた僕のことを想って仏壇に手を合わせていると母がよく言っている。祖母の気持ちが少し分かった気がする。きっと自分の手の届かないものに対して宗教の救いというものが存在する。




次回は「夫の役割」

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