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ラーメンについて ~あの食べ物を食べる時のあの感じに近い~

学生時代、バイト先の先輩によくラーメンに誘われた。

その時間は大抵午後の11時過ぎだった。パチンコで一儲けした先輩から「飯に行こう」と連絡が入る。午後11時まで空いている店、近所の店、その条件を満たしているのはラーメン店だった。近所には居酒屋もあったのだがいつも決まってラーメンだったのは先輩が無類のラーメン好きだったからだ。

僕はと言えば実のところ、ラーメンはあまり好きではなかった。地元にはラーメンの美味しいところなどなかった。それが地元を離れ先輩と遊ぶようになってからラーメンに行く機会が増え、好きになったのだ。


気を遣いラーメンだけを頼む僕を不憫に思ったのか、先輩は「たまきち」という丼のメニューも一緒にご馳走してくれた。この「たまきち」というやつがやたら美味いのだ。「たまきち」とはマヨネーズを敷いた丼に米を乗せ、その上に炒り卵、キムチ、あとなんだったか忘れたが、いくつかの具材を乗せた丼飯である。
これとラーメンを一緒に食べたらなんとも幸せな気持ちになるのだ。


僕の学生時代のソウルフードは間違いなくこのラーメンたまきちセットだろう。


あれから何年も過ぎたが、僕のラーメン好きはその時から始まったのだ。

以来、僕はラーメンを食べるようになった。

このラーメンという食べ物。

関西には美味しい店がたくさんあるというせいか、僕の周りにはラーメン好きが多い。

こってりやあっさり、魚介や豚骨など趣味嗜好は様々だが総括してみんなラーメンが好きなのだ。

そしてバンドマンはやたらにラーメン好きが多い。バンドをしている時分はそれこそライブの度にラーメンを食べていた。ライブの共演者も本番前にラーメンを食べる人が必ずいた。
ラーメンの魅力はなんだろうか。美味しいというのはもちろんあるがそんなに高くないということも大きいだろう。美味しかろうが不味かろうが千円もあれば一杯は食べれるのだ。そんなリーズナブルな点からバンドマンはよくラーメンを食べる。

「こってり、麺細め、バリカタ、ニンニク入りのネギ多め!」

なんていうまるで呪文のような注文をオーダーし、より自分にあった好みの味を求める。
そんなところもラーメンの醍醐味である。

僕はと言えば「こってりで後は全部普通で」と注文する。

「なんだ、君野さん、あなたにはこだわりがないのかい?」

あなたはそう思うだろうか。
勘違いしないでいただきたい。「麺も普通で茹で加減も普通が美味しい」というこだわりがあるのだ。普通へのこだわり。無理して変化球を投げる必要はないのだ。自分が美味しいと思うものを食べるのだ。

そして、注文が届き黙々と食べる。ラーメンが届くまではなんやかんやと話していたのにも関わらず、いざ食すとなると決まって無言になる。
なぜ無言になるのだろう。麺が伸びるからか。
いや、そんな理屈ではないのではないか。立ち込める湯気に誘われて黙々と麺を口に注ぎ込む。その瞬間、僕たちはラーメンに夢中になっているのだ。
食す時に余りにも夢中になり過ぎて無言になる食べ物。これは何かに似ているなと思った。


そう、それは蟹だ。


蟹を食べる時のあの辛気臭さほどではないが夢中の度合いと言えば同じではないか。
いや、待てよ。蟹は食べるときではなく、身を取る時に夢中になるのであって、食べる時に夢中になるのではない。そう考えると、やはりラーメンの方が格が上なのではないか。もちろんこれは僕の独断と偏見である。


夢中の話をしていたらついでにこんな話を思い出した。


中学の時、美術の授業の時である。

その日はなんらかのテーマがあり、教室で絵を描いていた。

わいわいガヤガヤ。

誰もが好き勝手に喋りだすものだから、先生が突然に大きな声で独り言を言い出したのだ。


「集中すると口数が減るんだよなぁ」





「みつを」とでも言いたのだろうか。


僕はそんな突っ込みを今ここに書き留めたい。




次回は「カメラについて ~インスタントカメラ~」

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