見出し画像

「入院生活」12 検査結果

12月23日

 今5時30分。寒いのでブルゾンをはおり、モーニングページを書き出す。首を後ろ向きに反ると、痛みを感じる。髄膜炎の症状の可能性があるから、朝の看護師さんに言おう。頭痛は左こめかみに微かに残っている程度。

 昨日もう脊髄穿刺の検査結果が出て、病室に来た主治医に言われた。
「細胞が思ったほど減っていなかった。また今までの点滴治療を続けて、その結果を見て、月曜退院するか決めましょう」

 ショックだった。苛々した。頭痛がまたぶり返して、布団に横になって、苛々し続ける。
 月曜退院なら予定通りで、特に治療が遅れているわけでもないが、ここ数日体調のいい日が続いていたから、これは今週末にも退院できるかも、と期待していただけにショックだった。

 晩ごはんの後、夜の点滴の前に送信しなきゃ、と今日の午前中に描きあがったイヤー・タペストリーを、ライター部のメンバーに送る。
 そして検査結果がよくなかったのも送った。「これで迷惑かける人が増える。家は片付かない。正月の準備もできない」愚痴った。

 ライター部の面々から返事が返ってくる。イヤー・タペストリーについては思ったより高評価。お世辞で書いてくれているんじゃないか、と思うほどだ。そして検査結果が悪くて退院が伸びたことについては、慰めてくれて、焦らないで、と応援してくれている。よき友人たちよ。

 しかし苛々はおさまらない。どうして、こんなに腹が立つの。
 それは、勝手に高まった期待が裏切られた怒り。退院後のことまで段取りしたのに無駄になった怒りだ。月曜退院という元々の予定に戻っただけなのに、退院したらあれもしたい、これもしなくちゃ、と考えていたのが裏目に出た。

 腹を立てたまま寝て(昨晩は点滴がないから眠れた)、今朝、寒い中モニペを書きながら、スマホをチェックすると、ライター部部長から返信が入っていた。アプリに更新サインがつかず、見落としていたそうだ。
「イヤー・タペストリー、カッコいいじゃないですか? N2さんて、やっぱりロックですねー」
 この褒め言葉は、すっと私の中に入った。皆いいと言ってくれたのは、そういう意味だったのか。
 部長は、こうも書いていた。
「人に迷惑かけるのっていいですよ」

 その言葉に救われるようだった。
 何、仕事ができる気でいたんだ。正月明けまで入院生活が続いても仕方がないと覚悟してたんじゃないのか。
 私はもう何もできない。病院で、ベッドで、横になって治療に専念する以外何もできない。
 無能だ。無能の人だ。それで会社がクビにするというなら、それも仕方のない運命の流れだ。そう考えれば、会社の仕事も、村の仕事も、それぞれ向こうの人に丸投げするしかない。

 会社の方は、月曜に退院して火曜に振込の承認する、それができる、を前提にしていたプランAを諦め、プランB、もし月曜火曜に退院できなかった時に誰に何を任せるかを決めて、それで進めてもらう。仕事の時間になったら、上司にそう報告しよう。
 村の方は、正月の祭の買い物は会計にお願いしよう。身祝い厄払いの読み上げ用名簿はだれか作ってくれているだろうか。グループLINEで送って確認をお願いしよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?