初心者が「かってに自主調査」をする方法
私はフリーランスのマーケターをしています。
マーケティングの中でも、生活者の意識の変化やそれに基づく購買行動の変化を数値化する調査の設計や分析を得意としています。
私が初めて調査したのは、新卒採用のための就職活動中です。
どうしても入りたい化粧品商社があり、役員面接の際に自分の熱意をアピールする素材が必要だと感じた私は、当時の新宿ルミネ ソニープラザ(現PLAZA)に行き、出てきたお客さんに何を買いましたか?と勝手に聞き取り調査。その内容をまとめて、面接の際に提出しました。
つたない資料を見た当時の専務から「勝手にこんなことしたら、店の人に怒られるよ、きみ」と言われましたが、結果内定を頂き、その後19年働かせてもらうことになりました。
その間大手の調査会社や広告代理店で数回ブランド調査をする機会がありましたが、作り込まれた調査とその報告書は結果としての意味しか持たず、ネクストアクションを考えるために有効に活用することはできなかったように思います。(もちろん活用側スキルの問題だと思いますが、、、)
一方、スマホ登場前の携帯電話向けサイト構築ツールを活用して、自前で行った顧客調査は、接点のある顧客の声しか聴けないものの、ともすると社員よりもブランドに対して熱い想いを持っている顧客の生の声を聴くことが出来、商品企画や販促企画にとても役立ちました。
そのような経験から、調査についても他の経済活動や学術活動と同様、誰かに任せて結果だけを教えてもらえばいいのではなく、何が知りたいかを調査主体が明確にし、どうやったら知ることができるかについての方法論は知っている人と一緒に行いやり方をおぼえ、必要になった時はいつでも自分たちでできるようすることがとても大事だと思っています。
それが事業目的に掲げる「アンケートの民主化」です。
では、具体的にはどんな手順で進めて行けばいいのでしょうか。
簡単にできる方法をまとめてみました。
1)デスクリサーチ
■外部環境のデスクリサーチ
フィリップ・コトラー氏は自身が提唱したPEST分析の中で、外部環境は政治・経済・社会・技術と規定しています。簡単に言えば、世の中の変化の方向性を知るということでしょうか。
たとえば少子高齢化とか、シンギュラリティ(技術的特異点)などがこれにあたります。
この数値は、総務省統計局を始め、厚生労働省・経済産業省・国土交通省などの、関係省庁のサイトを検索することで、把握することができます。
■市場のデスクリサーチ
ある程度分野が絞り込まれているようであれば、「〇〇(分野名)× 市場」などで検索すると、色々な情報を探すことができます。
ただこのところ企業のマーケットにおけるシェア(占有)を知りたくて、「〇〇(分野名)× シェア」と検索すると、シェア(共有)に関する情報が多く表示されるようになりました。
(私のブラウザで「ベビーカー シェア」と入力した場合のGoogle表示結果)
これも社会でサブスクリプションが一般化しているというあらわれでしょうか。
■商材のデスクリサーチ
特定の商材について聞く場合は、下記2つのサイトで調べてみてもいいと思います。
「検索キーワードまたはトピックを入力」というところに、知りたいことを入れます。
試しに「コロナ禍」と入れてみました。人気度の動向・小区域別のインタレストはうまく表示されませんでしたが、関連キーワードのところに「コロナ 禍 読み方」や「禍 読み方」が入っていました。
みんな困っているから、禍(カ)とフリガナを入れるといいかもしれませんね。勉強になりました。
ちなみに「禍 読み方」というところをクリックするとさらにいつごろからどこで検索されているのかも知ることができます。みなさんGW中の5月3日くらいから困っていたようです。
(「禍 読み方」をクリックし、表示されたGoogle Trendsの結果画面)
SEOというGoogleなどで検索されたときに上位に表示させるための手法の戦略を立てるために活用するサイトですが、入力したキーワードがどのくらい検索されているか、検索した場合どのようなサイトが上位表示されるかがわかりやすく表示されるので、デスクリサーチにも役立ちます。
2)アンケート
デスクリサーチで知りたいことの情報がそろい、なんとなくこんなことなのかな?という仮説が立ったら、その割合を数値化するためにアンケートを実施してみましょう。
思った通りかもしれませんし、まったく違う割合かもしれません。これが一番楽しいところです。
数値化したいことが漏れないように、質問文と選択肢を決めます。
このとき、クロス集計と呼ばれるAと回答した人とBと回答した人の割合の違いを見る集計ができるように、実際聴きたいこと以外に回答者自身を振り分けられるような質問を用意しましょう。
年齢・性別・居住地などの属性情報は必ず入れたいところで、それ以外に終業状況とか職種とか、商材によっては住宅事情や車所有の有無なども聴いておくと差異が見られるかもしれません。
アンケートの質問と選択肢を作る時点で、アンケートの回答が集まったらどう集計するかを決めておくことが重要です。
■Webアンケート
Googleが提供しているアンケートフォームです。Googleのアカウントを持っていれば誰でも簡単に利用できます。
操作も簡単で、アンケートの共有も結果の共有も簡易です。
ただ回答者数の多いアンケート・分岐の多いアンケート・複数回答の多いアンケートは、自分で集計するのはなかなか骨が折れます。
- ミルトーク
ミルトークとは、調査会社のマクロミルが運営しているコメント募集をする掲示板です。法人の会員登録は無料で出来、登録完了後「きいてミル」という掲示板に聴いてみたいことの「お題(50文字まで)」「カテゴリ(ある中から適したものを選ぶ)」「補足説明(200文字まで)」を入力すると、すぐに実査が開始されます。
1問1答形式で、回答は自由記述形式で記入され、100コメント集まると回答が締め切られます。無料版だと30回答までしかみることができませんが、30回答ですと数時間で収集できます。
収集できるデータはあくまで自由記述形式ですので、その後の分析にはテキストマイニングツールを利用するといいと思います。
~やってみた!~
実際にミルトークを利用してコロナ禍での意識や行動の変化を問う自主アンケートを5問実施してみました。
そのうちの1問『Q1.コロナ禍であなたが『増したと思う力』を教えてください。』についての回答を、分析してみましょう。
- 概要
開始:2020/05/01 15:14
終了:2020/05/08 15:14
お題:コロナ禍であなたが『増したと思う力』を教えてください。
有効回答数:100 (うち分析は無料分30のみ)
今回の調査をしたのは、全国緊急事態宣言が発令され、1ヶ月弱経ったころ。GWの真ん中あたりです。
コロナによって社会が大きく変わってしまい、先行きの見えない中で、私自身も在宅ワークwithキッズの状況に行き詰っていたので、コロナで失ったものだけではなく、得たものがあるとみなさんどれだけ感じていらっしゃるのかを可視化したいという思いで調査を行いました。
そして寄せられた30コメントをユーザーローカル社テキストマイニングツールを利用して可視化したのが下の図です。
※ワードクラウド
一般的な文書ではあまり出現しないが、調査対象の文書だけによ
く出現する単語に重みづけをし、大きく表示する。
衛生管理関係の言葉がほとんどになるのかと思いましたが、結果はみなさん感情を自制するような力を多く身につけたようです。
私自身も以前はそばで子供が騒いでいると仕事ができないと思っていましたが、見えない結界を張っていると自分に暗示をかければ乗り越えられるとっ学びました。まさに忍耐。忍びの力です。
それまでの買いたいものは頼んだらすぐ届くとか、行きたいところになるべく早くいく方法を探すみたいな生活はマストではないのかもしれない、、、と気づくことができたのかもしれませんね。それに気づいた後、どんな社会になるのでしょう。
追加のコロナ禍による意識や行動の変化をきく『かってに自主調査』も行っているので、また結果をお知らせいたします。
※記事「【かってに自主調査】コロナ禍でなにがどうかわったか~その1~」でQ2、Q3について分析していますので、よろしければご覧ください。
Q2.緊急事態宣言が解除されたら、一番初めにしたいことはなんですか?
Q3.コロナ前に戻りたいことと、戻りたくないことを教えてください!
以上が初心者でも簡単に調査が行える方法です。
※実際は調査した内容を報告書にまとめるという、また壮大な仕事が待っているわけですが、それについても事前準備でかなり時間短縮ができますので、そのことについてもまた書いてみたいと思います。