ケアマネは教えてくれない超高齢社会の実態
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今回は介護事業者ならではの視点で超高齢社会の実態をご紹介します。
数字で知る高齢社会の実態
8日に1件
皆様はご存知でしょうか?
介護問題にまつわる数字です。
これは、警察庁が発表した犯罪統計から、全国で「介護・看病疲れ」が犯行の動機や原因となった殺人事件の件数です。
未遂を含む殺人事件は、全国で8日に1件のペースで発生しています。
また、同じ理由の自殺や無理心中は、3日に2人以上のペースで亡くなっています。
1日に47件
この数字は、厚生労働省による高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(令和2年度)で公表された家族や同居人などによる虐待件数です。
殺人事件に至らなくとも、家族や同居人などの養護者による虐待は、認定された件数で毎日47件発生しています。
最新の調査結果では、前年度より増加の傾向です。
虐待の発生要因を見ると、「介護疲れやストレス」と、「認知症の症状」が大きな要因となっています。
また、まだ介護サービスを利用していない段階と、中度以上の認知症がある場合は、深刻な虐待を受ける割合が高い結果でした。
家族虐待のうち、約9割が同居していました。
先の虐待要因で大きな原因となっていた介護疲れやストレスが、同居によって生ずるのは想像できるかと思います。
ところで何が原因で介護が必要になるのかご存知でしょうか?
直近は1位が認知症で、全体の約4分の1を占めています。
参考に、2位以下は次のとおりです。
2位:脳血管疾患(19.2%)
3位:高齢による衰弱(11.2%)
4位:骨折・転倒(12.0%)
5位:関節疾患(6.9%)
6位:心疾患(3.3%)
しかし、時系列で見ていくと順位に大きな変動があります。
長年1位だった脳血管疾患(脳卒中など)が比率を下げ、認知症が増えた理由は大きく3つあると考えられます。
1つ目は、日本人の寿命が延びたからだと考えられます。
この19年間で女性は約2.5年、男性は約3.5年も平均寿命が延びました。
2つ目は、99年以降の抗認知症薬の発売です。
最近もエーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の承認が大きなニュースとなりました。
一般的に治療薬が発売されると、その薬を使う病気の診断数が増える傾向があります。
薬事法で薬の宣伝を禁止されている製薬会社は、90年代に「うつは心の風邪」という病気啓発キャンペーンによって、「薬を宣伝する」代わりに「病気を宣伝する」という手法を編み出した結果、日本社会でも1999年の新薬発売後の6年間でうつ病患者が2倍に増加(社会的医原病の増加)したという報告があります。
認知症もまた、薬の存在が診断数を増やしていると考えられます。
3つ目は、介護保険制度そのものです。
制度の構想段階では「寝たきり対応型」でしたが、制度がスタートすると実情は認知症の方が多いことがわかり、「認知症対応型」に大きく舵を切りました。
介護認定時の質問項目に認知症を加え、新しく「認知症対応型」サービスをつくるなど、積極的に認知症を拾い上げました。
今は寝たきりになっても意思の疎通が円滑であれば、「要介護5」は認定されないというのは、一般の方はあまりご存知ないかもしれません。
要介護原因に占める認知症の比率はこれからも上がると予想しますが、認知症という病気が増えたというより、認知症が高齢者によくある病気として市民権を得た結果と考えたほうがいいかもしれません。
2025年問題
2025年問題というキーワードはご存知でしょうか?
これは第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる年です。
この年には、高齢者の5人に1人が認知症と推計されています。
皆様が認知症を目にする機会は少ないかもしれませんが、現実として認知症の問題は日常的に起こっています。
全国で延べ1万8700人余り
毎年、警察庁が発表している行方不明者の統計によると、2022年の認知症行方不明捜索届は延べ1万8709人と、10年連続で増加しています。
ファミリーマートより多くの認知症患者が毎年行方不明になっています。
2025年にはもっと増加しているかもしれません。
介護をする側の話
ここまで介護を受ける側の話が中心でしたが、立場を変えて介護をする側、息子や娘の話をします。
介護離職は年間約10万人
総務省の調査(平成29年就業構造基本調査結果)によると、介護をしている人は約628万人にのぼります。
このうち、6割近い人が働きながら介護を行っています。
また、1年間に「介護・看護のため」に離職した人は約9.9万人にのぼります。
5年ごとに調査が実施されており、前回も同様の結果でした。
なぜ介護を理由に離職するのでしょうか?
一言でいえば、「仕事と介護の両立が難しい」からです。
離職理由の6割以上を占めています。
「親の介護」を担うのは年齢的に企業の中堅以上です。
中堅社員の介護離職は、企業にとって大きな人材ロスに繋がってます。
介護離職した後も厳しい現実があります。
介護離職した40~50代が1年以内に正社員で再就職できる確率は半分以下です。非正規雇用になってしまった場合、経済的な問題が更に大きくなります。
介護離職後の年収は半減します。夫婦どちらかの離職で収入が減ると、使える介護サービスを絞らざるをえなくなり、更に悪循環となります。
さらに、注意すべきは、月収だけではありません。
定年時の退職金も減りますし、年金の支給額も減少します。
つまり、生涯収入全体が減るため、早まって介護離職するのはおすすめできません。
まとめ
介護は家族関係に大きなストレスを与えます。
特に都市部では大半が核家族化した日本において、お互いに健常で盆と正月に顔を見せれば安心だった頃の距離を保つために、無理な家族介護で消耗せず老人ホームの積極活用をおすすめします。
また、介護問題に直面すると、思い詰めて早まった行動を取ってしまいがちです。医療、介護それぞれの分野で気兼ねなく相談できる専門家と繋がりを持ち、積極的に活用してください。
専門家を通して”正しい福祉の知識”を得ることで、介護問題に直面した時に「時間とお金」の両方を大いに節約できます。
投げ銭大歓迎です!